95. 振りが取れない!

フラメンコを習い初めの頃は、なかなか振りが取れ

ず苦労した。

クラスの友達はすぐ踊れてしまうのに、何をしている

のかさっぱり分からない自分に腹がたったりした。

そこで、その日稽古したことを忘れないように、クラ

スが終わった後に必ずおさらいをし、自宅の近くの駐

車場で何度も練習し、その日に習ったことはその日に

モノに出来るように努めた。それから、その振りの

分析を必ずするように心がけた。コンパスの最初は

どこでどこにアセントがきて、何連符のパソなのか、

全体の構成はどうなっているのか、ひたすら研究した。

それを続けていると、ある日突然、振りが取りやすく

なってきた。

あれれ?

自分でもこれには驚いた。

あんなに取れなかった振りが、気付くとすぐに取れる

ようになっている。

スペインに初めて行った時も、テクニックがなくて

ついていけなかったけど、何連符のパソをしている

のか何をしているのかは頭で理解することが出来た

のだ。

振りを覚える時、カウントで覚える方法と、口三味線

(タキト タキト タンといった風に)でリズムを

ノリで覚える方法と、大きく二通りあると思う。その

どちらで覚えても私は間違っていないと思うが、どち

らにもメリット、デメリットがあると感じている。

カウントで覚える場合、私は振りを長く覚えていられ

るし、分析もすぐできるので、深く踊り込みがしやす

い。しかし、カウントの感覚で踊っている内は、ただ

振りを追っているだけの踊りなので、フラメンコらし

いノリはでてこない。深く掘り下げた後、頭を真っ白

にし、カンテやギターのメロディーに身をゆだね、自

分のリズム、コンパスにかえていかないと、いつまで

たっても単純な踊りから脱皮することが出来ない。

口三味線で覚える場合、ノリがつかみやすく、さらり

と振りをとれてしまうことがある。しかし、コンパス

感がない内はどこにアセントがあるのか、またリズム

の切り替えが明確に分からないので、忘れるのは早い

し、振りを深く掘り下げるのが難しい。また、振りを

掘り下げないでほっておくと、時間がたつにつれてリ

ズムがあやふやになってしまい、知らない間にノリが

微妙に変っていた!なんて経験があった。ギタリスト

と一緒に練習をしていると、そういうところをよく指

摘された。

「もっと振りの意味を考えて、掘り下げないと!」

最近分かったことだけど、振りを早く取れるようにな

るには、まず基礎でコンパス感を養い、振りの意味を

知り、構成を知ることです。それと、1曲でいいから、

振りをふかぁーーーーく掘り下げてみること。これに

ついては、また今度。

フラメンコを習い初めの最初の数年って、振付けを

早くとれるかそうでないか、周囲の目がかなり気になっ

たけど、何年もたって仕事で踊るようになり、バック

アーティストからいろいろ求められるようになってく

ると、そういうことはどうでもよくなってくる。振付

けを早く取れても、人前で踊った時に観客に何も感じ

てもらえなければ意味がないと私は感じているし、何

度もお金を払って観たいと観客に感じてもらえなけれ

ば、自分はプロの踊り手だとは思わない。

振りはあくまで自分を表現する手段で、重要なことは、

その先にたくさんあるということに、やっと気付いた。

先は長いなぁ〜。

2003.01.09.

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