93. タンスの肥

フラメンコを習い始めれば、誰だって華やかな衣装を

着て踊ってみたいと思うだろう。

私が最初にいた教室は、お祭りなどのイベントで踊る

機会が多く、しかし衣装を買うお金がなかった(とい

うか買う気がしなかった)私は、自分で衣装をつくる

ようになった。 学生時代、裁縫が得意だったので、衣

装をつくる専門知識がないにも関わらず、先生からお借

りした衣装で型を起こし、生地を買ってきて仮縫いをし、

何とか完成することに成功した。白のブラウスと、ブ

ルーのファルダが、最初の衣装だった。

最初は、この手作り衣装で満足して踊っていたが、何

度も着ていると、だんだん新しい別のデザインの衣装

が欲しくなってきた。 そこで、スペイン旅行の時に買っ

てきた薄地でハリのある花柄生地を使って、オーダー

メードの衣装をつくることにした。最初の発表会に着

るために。

当時の私にとって衣装をオーダーするのは大出費だっ

たのに、発表会の後で気付いたことは、このスペイン

で買った生地は、舞台衣装にあまり向いていないとい

うことだった。何故かというと、ファルダを振った時、

ラインがきれいにでないのだ。だから、この衣装は数

えるくらいしか着ていないし、今はただのタンスの肥

になっている。

それから次にスペインに行った時に、今度こそは長く

着れる衣装を!と生地選びを慎重にして、衣装をフル

オーダーすることにした。デザインは自分で考えた。

長そでで、ファルダのフリルは何となく3段に・・・。

その後、きちんと仮縫いもしてもらい、衣装自体はと

てもきれいに仕上がったが、それを着て舞台で踊って

あることに気付いた。

「この3段フリルって、背の低い私が着ると、さらに

小さく見えてしまうかも・・・。」

腰からすぐ下に3段フリルがあれば、そう問題なかった

のだが、中途半端な位置からの3段フリルは、背の低い

私にとってはマイナスでしかなかった。

こうしてタンスの肥がまた増えることになった。やれやれ。

高いお金をだして衣装をつくって失敗することに懲り

た私は、また自分で衣装をつくることにした。生地選び

も慎重にしたし、デザインをする時、フリルにも気を

使った。気が遠くなるほどの時間を注ぎ込んで、何度

も仮縫いをしたのに、仕上がってみると、バストライ

ンが合っていなかったり、ファルダの長さが少し短め

で、これも納得のいく仕上がりにはならなかった。

こうして私は、たくさんの失敗から衣装選びのコツ

みたいなものを学ぶことになる。 衣装は自分の短所を

カバーすることが出来、踊りをさらに映えさせること

ができるということを知ったのだ。衣装も踊りの一部

だから、自分の体格を十分考慮しながら、曲種のイメー

ジに合った衣装を選びたい。

衣装選びのポイントを簡単に言うと、自分の体格をよく

知ることだ。 自分の体格の長所を生かし、短所を隠す

デザインを選ぶ。

タンスの肥を増やさないために、衣装選びは慎重に!

2002.10.28.

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