私は結婚もしているし、仕事もしている。本職はグラフィ

ックデザイナーだ。主な仕事は、健康食品や化粧品など

のパッケージやパンフレットのデザイン、それとWebデ

ザインなどだ。忙しい時は真夜中まで仕事をする。旦那

は私がすることに一切文句を言わないし、好きにさせて

くれる。理解あるいい人だ。だから家事は手抜きするこ

とができない。手抜きをすると心が痛んでしまう。忙し

いからといって外食に行ったり、冷凍食品やお惣菜を

買ったりはしない。食事はきちんとつくるし、掃除もま

めにするようにしている。だから毎日十分な練習時間を

確保するのが難しかった。でも練習しないと上達しない。

ある程度の練習時間を確保するため、今年1月に独立して

フリーになった。フリーになれば、拘束されないので時

間の調整を自分で好きなようにできると思った。確かに

仕事があまりないときは時間がたっぷりあって、練習が

たくさんできた。東京に1週間くらい行っても問題はな

い。しかし、この業界は仕事の量に波があって、一度依

頼を受けると後からどっと仕事が入ってくる。依頼され

た仕事はどんなにハードでも責任持って仕上げないと、

次につながらない。代りにやってくれる人はいないから、

徹夜してでも仕事をしないといけない。そういう時は、

悲しいかな練習どころではなくなってしまった。

デザインの仕事は好きだ。でもフラメンコを踊る方が

もっと好き。フラメンコ舞踊家兼グラフィックデザイ

ナーが一番の理想だけど、今の状況から考えるとどちら

も中途半端になってしまう恐れがある。いずれはどちら

かに比重を傾けないといけないと思う。

そんな私の姿を見て、普段何も言わない旦那がぼそっと

「フラメンコは趣味で割り切って、デザインの仕事を

もっとしたらええのに。」とつぶやいた。 その一言がぐ

さっときた。そんなこと分かってるよ。私も大分悩んで

いるんだから。デザインの仕事は頑張れば評価してもら

えるし、それが報酬としてそれなりの収入になって返っ

てくる。それに比べて舞踊家の仕事は需要も少なければ

報酬もそんなによくないと聞く。1曲15分踊るのに何十

時間、いや何百時間も練習しないと満足なものに上がら

ない。練習の為のスタジオ代、ギターやカンテに払う

ギャラを考えると舞踊家に入ってくる収入なんて雀の涙

だ。そうだと分かっていても、私は一人前の舞踊家とし

て踊りたいと思う。

自分が丸6年フラメンコを習っていてはっきり感じるの

は、私はリズム感がそんなに優れていないということ。

そして身体能力もそんなに優れていないということだ。

私にあるのは、踊りたいという情熱と根性だけだ。こん

な私が舞踊家を目指していいのか、一時期真剣に悩んだ。

そんな私をいつも心から励まして応援してくれているの

は東京の美香先生だ。「下手な才能より、努力して稽古

を続ける根性の方が大切」らしい。こういう先生に巡り

会えただけでも、私は幸運だと思っている。

さて、悩んでいる暇があったら練習だぁ。

2000.10.31.

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