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私は東京に通う前に、プロとして通用できるような振り
付けを何も持っていなかった。だから加藤美香さんに何
か1曲振り付けて欲しいとお願いした。 最初の個人レッ
スンで、まず私のレベルがどれくらいか試された。私は
過去に友達の結婚式で一度、ドイツで知り合いが主催し
ていたファッションショーで一度、伴奏がテープでは
あったものの、ソロを踊った経験があったので、それな
りの自信はあった。しかし、そんな自信もみごとに打ち
砕かれた。
先生曰く、私の踊りは
・踊りが硬い
・身体が使えていない
・タコンと左ゴルペが弱い
etc... 他にもたくさん注意されたが、特にタコンの音が
浮いているので、これを中心に基礎レッスンが進んだ。
最初の東京通いで個人レッスンを5時間も受けたのに、
結局振り付けまでいかず、基礎レッスンと私が持ってい
たTango(タンゴ)のリンピアールだけで終わってし
まった。ぜんぜん出来ていない自分に腹が立ったし、自
惚れていた自分が情けなくなった。とにかく1ヶ月後の
レッスンまで、タコンと左ゴルペをなんとか強化しよう
と必死で練習した。
基礎レッスンをするのは、正直にいってつまらない。与
えられた振り付けを練習していると、今までできなかっ
た難しいパソができるようになったり、身体がスムーズ
に動くようになったり、何かしら上達する過程がみえて
くるのでやりがいがある。それに対して基礎レッスンは
こうした上達する過程がはっきりみえないので面白くな
い。表面的には地味でつまらない練習だけど、身体に鞭
を打ちながらただひたすら練習した。
そんな努力の成果が実って、1ヶ月後の個人レッスンで
先生から「あっ、タコンの音が変わった。ちゃんと練習
してきたね。」という嬉しいお言葉を頂くことができた。
やったぁ〜第一関門突破である。
ある時、先生に
「12月に行なわれる発表会でソロを踊ってみる?もちろ
ん、振りが上がればの話だけどね。」と言われた。私は
それを聞いて身体が震えた。まだ習い始めたばかりの私
が、東京の発表会でソロを踊るチャンスをもらって本当
にいいのか、不安になって何度も聞いた。そんな私の不
安を尻目に先生は「私が決めたことに誰にも文句は言わ
せないから心配しなくていいよ。それより、がんばって
振りをあげようね。」と励ましてくれた。こんなに早く
チャンスが訪れた喜びとちゃんと踊れるかの不安で足が
ガクガクしてきた。
2000.09.24.
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