10.タンゴ

タンゴは2拍子系の陽気な曲種のことで、3拍子系とは違って粘りのある踊りが要求される。

1コンパスを4拍でカウントする人と、8拍でカウントする人がいて、どちらが正しいとは断言できないが、私は1コンパス8拍でカウントするようにしている。その方が振付けを覚えやすいからだ。ただ、歌によってメディオコンパス(半コンパスつまり4拍)で切り替えることがあるので、ブレリア同様臨機応変にカウントを対応するようにしている。

タンゴの歌は(スペインの)地方によって特色があり、メロディーや歌詞が全く違う。また即興でメロディーや歌詞がつくられることもあり、それに合わせて即興で踊るのは大変難しい。
カディスのタンゴは有名でタンギージョと呼ばれているが、その区別は他のタンゴと左程ないと聞く。
日本で良く聞かれる歌は、タンゴ・デ・トゥリアーナやタンゴ・デ・グラナダだろう。これらは歌の長さが決まっているので、大変踊りやすい。
最近の流行りなのか、 新宿と大阪のEl Flamencoでは、タンゴ・デ・エストレメーニョスの歌をよく耳にする。この歌は歌い手の気分で長く歌われたり短くなったりするので、この歌に合わせて踊るのは難しいと私は感じている。

このタンゴ系の曲種はタンゴ・デ・マラガ、ティエント、ガロティン、ファルーカなど数多く存在する。タンゴはフラメンコの2拍子系の基本であり、これが踊れなければ、これらに属する全ての曲種を踊ることは出来ないと私は思う。

タンゴは踊れば踊る程、奥が深い。私が習い始めた当初、このタンゴは3拍子系より踊りやすく感じたが、今では3拍子系より難しく感じている。

タンゴは、ブレリア同様ヒターノ(ジプシー)が歌を聞きながら即興で踊るものだったから振付けをするものではない、と言われたことがあるが、最近スペインではタンゴを1曲のヌメロとしてテアトロ(劇場)で踊られるようになってきた。

タンゴを1曲のヌメロとして踊る場合、アレグリアスのように決った構成はないが、よく観られるパターンを紹介すると

1. サリーダ(出だしの歌、その後にパソとジャマ−ダ)
2. 歌振り(歌に合わせた振付け)
3. エスコビージャ(足によるリズム表現のパート)
4. 歌振り(歌に合わせた振付け)
5. エスコビージャ(足によるリズム表現のパート)と最後の締め

これ以外には、歌振りの後にファルセ−タと呼ばれるギターのメロディー変奏に合わせて踊られるパートが入ったり、踊り手の好みで変わる。
なお、このタンゴは複数の歌が歌われるのが普通だから複数形でTangos タンゴスと書くが、最後のsは発音しないのでタンゴと呼ばれる。

フィエスタ(お祭り、祝宴)で即興で踊る場合は、歌を聴きながら自由に踊ればいいとスペイン人の友人は言っていたが、この即興で自由に踊ることがマニュアル日本人にはどんなに難しいことか!
それぞれの歌に、ここだぁというつぼみたいなものがあって、その時にこういうリズムをいれる、みたいな暗黙のルールがあることは知っているのだが、それを即興で踊れるかと言うとまだ未熟者の私には未知な世界です。

back next