ジュニア版 神社仏閣ミニ辞典           P10
                   ー入門篇・仏教の部ー                 
                                              参考文献:仏教入門(藤井正治)・目で見る仏像(東京美術)
                                                     仏像の見方(石井亜矢子)     ほか

   

・・仏像についてU(仏像各部の名称・見分け方のヒント・・・


  頭  部












(*1)清涼寺式
 清涼寺は京都にある浄土宗のお寺ですが、本尊の釈迦如来は11世紀のはじめ宋から渡来したものとされ独特な形をしていることから清涼寺式と言われ、宗派をこえて信仰され各地に摸像がつくられました。

(*2)五劫思惟(ごこうしゆい)
 阿弥陀如来がまだ修行中の菩薩であったとき、五劫(劫とはきわめて長い時間の単位)もの長い間考えたことを言います。             


 鏡餅のような頭の形をしているのは如来(@AB)、髪をゆっているのは菩薩CDE)、その他は明王・天部FGH)と仏像はだいたい頭の形で分けられます。

@典型的な如来像
 
大日如来を除く如来に共通する形で頭頂部に肉髻という隆起した部分があり、表面には螺髪という小さな渦巻き状の巻毛の粒が見られます。

A清涼寺式(*1)迦如来に特有な髪形
 肉髻はありますが、螺髪ではなく髪は縄目のようになっています。

B五劫思惟(*2)の阿弥陀如来に特有の髪形
 長い間修行を重ね髪が伸び放題になった様子を表わしています。

C双は古い時代の観音像に見られるスタイルで髪を2つの束に結びます。

D五山は髪を1つに束ねそれを5条に分けるもので菩薩のほか、四天王などの天部も結っています。何条に分けているかで三山髻、七山髻などとよびます。

E垂髻
 
髪を一つに束ね、2ヶ所で結んで毛先を垂らすもので、結び方・垂らし方に多くの種類があり菩薩のほかに阿修羅などの天部に見られます。

F焔髪
 焔が風にあおられたような髪形で怒髪ともいいます。不動・孔雀を除く明王や十二神将、蔵王権現、菩薩では馬頭観音に見られます。

G総髪
 髪の毛を左の耳の前に集めて結ぶもの、その垂らし方を弁髪といい蓮の花を頭に載せています。不動明王独特の髪型です。

H吉祥天の髪型
 髪を左右に分け、両耳を隠すように肩まで垂らしています。




印 相
(いんぞう)

 
                                        ●主な印相

 印相とは左右の手の指で種々の形をつくり仏の意志や教えの内容を示すもので、その形を「印相(いんぞう)」といい、その形を作ることを「印を結ぶ」といいます。

@施無畏印+A与願印
 施無畏とはさまざまな恐怖を取り除くことで手を上げて指を伸ばして掌を外にめける印相、与願とは仏が人々の願いをかなえてくれることをあらわし手を前に差し出し掌を外の向ける印相で施無畏印と与願印は対になっています。
 釈迦如来像に多くみられます。

B智拳印
 智拳とは煩悩を滅しさとりに入ることで胸の前で左の人差し指を立て、その指を右手で握ります。
 金剛界大日如来だけが結んでいます。

C来迎印
 来迎とは人々を救うために阿弥陀如来が迎えにくることで、右手は掌を外に向けて胸の前に上げ左手は掌を外に向けて前に出すか垂れ下げ、両手とも親指と人差し指をつける印相で手が逆の場合を逆手来迎印といいます。
 阿弥陀如来像が結びます。

D禅定印(定印、法界定印)
 
瞑想にはいる時の形で掌を上に向けて両手を臍の前で重ね、親指をつける形で座禅などで見られます。密教では法界定印といいます。
 釈迦如来、胎蔵界大日如来、千手観音像が結びます。

E阿弥陀定印
 
阿弥陀如来が瞑想している時の印相で両手の掌を上に向け臍の前で重ね、両方の人差し指を合わせて立て、その指先に親指を載せます。

F降魔印
 
降魔とは修行をさまたげる悪魔を降すことで右手を膝の前で掌を内側に向けて垂れ下げ指を伸ばします。
 釈迦如来像が結びます。

G説法印
 
両手を胸の前に構え親指と小指以外の指で輪の形にするものが多いようです。
 釈迦如来像と阿弥陀如来像が結びます。

 
 鎌倉大仏と与謝野晶子

”鎌倉や みほとけなれど
  釈迦牟尼は 美男におはす
             夏木立かな”

 と詠んだのは与謝野晶子ですが印相は阿弥陀如来の阿弥陀定印で釈迦如来ではありません。
 仏教文学の研究家で歌人の山上々泉が昌子に問い合わせたところ昌子はその誤りを認めながら、実感を重んじる建前と既成の作品のゆえに訂正することはしない旨を申し送ったという逸話があります。      

 

持物
(じもつ
 

 持物(じもつ)とは仏像が手に持つものですが仏の本誓(ほんぜい、人々を救おうとすろ誓い)を表わしています。

@薬 壷(やっこ)
 薬師如来が持つ薬の入った壷。

A宝 珠(ほうじゅ)
 財宝を降らしたり不幸な災いを除くとされる珠で地蔵菩薩や吉祥天などが持ちます。

B水 瓶(すいびょう)
 汚れを払う霊水が入っている仏具で菩薩が持ち水瓶に蓮華を挿したものもあります。

C宝 剣(ほうけん)
 煩悩を断ち切る智慧の刀で明王、天部などが持ちます。

D蓮 華(れんげ)
 煩悩に汚れていない清らかさを示すもので、開いた蓮華(開蓮華)と蕾の蓮華(未敷蓮華)の2種類があり、観音菩薩の象徴です。

E羂 索(けんさく)
 投げ縄の意味を持つ武器の一種で、これを投げて人々をもれなく救うものとされ、不空羂索観音像や不動明王像、千手観音像が持ちます。

F羯 磨(かつま)
 三鈷杵を十字に組み合わせた手裏剣のような武器で仏の智慧の働きを表わしています。明王などが持っています。

G宝 塔(ほうとう)
 仏舎利(釈尊の遺骨)を納めた塔で四天王のうち多聞天や毘沙門天が持ちます。

H錫 杖(しゃくじょう)
 僧侶が山を歩く時に持つ道具で地蔵菩薩が六道を巡る象徴として持ちます。

I金剛杵(独鈷杵)(こんごうしょ・とっこしょ)
 密教で使われる煩悩を破る武器。把手の両端に先の尖った鈷(こ、切っ先)のついた杵形のもので明王や金剛力士などの天部の諸像が持ち、鈷の数で名前が変わります。

J金剛杵(三鈷杵)(こんごうしょ・さんこしょ)
 鈷先が3つに分かれるもの。

 

 坐り方と台座
 仏像の坐り方にもいろいろありますが、台座(仏像を安置する台)との組み合わせになっていることが多いようです。

@結跏趺坐(けっかふざ)+裳懸座(もかけざ)
 結跏趺坐とは如来の坐り方で左足を右腿の上の載せて、右足を左腿に載せて坐ります。
 この左右を逆にしたものを降魔坐といいます。
 裳懸座は坐像の裳裾が広がってその先が台座に垂れ下がっている装飾的な台座のことです。

A半跏趺坐(はんかふざ)+蓮華座
 
半跏趺坐は菩薩の坐り方で結跏趺坐を簡単にし左右どちらかの足を反対の腿の載せるものです。
 蓮華座は蓮華の花をかたどった如来や菩薩が多く用いる台座です。

B半跏踏下(はんかふみさげ)+榻坐(とうざ)
 弥勒菩薩や如意輪観音半跏像とよばれるのがこの坐り方です。
 倚坐(いざ、足をたらして坐る)の一種で腰かけて左足を下げて右足を組んだ形です。
 榻坐とは背のない丸い椅子に布がかかり、下には反花(かえりばな、下向きの蓮華のこと)がついてものです。

C輪王坐(りんのうざ)+蓮華座
 
両方の足裏を重ね片膝を立て、体を支えるように片手をついて坐ります。
 如意輪観音、馬頭観音にみられます。
 輪王坐の台座は蓮華座が多いようです。

D跪坐(きざ)+雲坐(くもざ)
  跪坐とはいわゆる正座のことで、阿弥陀如来の脇侍に見られます。
 雲座は雲に乗って飛来する情景を表わしたもので、浄土系の仏像に使われ、また立像にも見られます。

   
   
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