さて、中学生になった和郎。いきなり、2回目の挫折がやってきます。
こんどは、手を脱臼してしまったのです。

和郎は泣きながら近所のお医者さんに見せに行きます。しかし、
現実は残酷なものでした。

医師は和郎に言いました。
「遺伝性の骨の変型による習慣性の脱臼だね。ピアノは1年間は弾いてはいけないよ。」

ピアノという大切な友人を奪われてしまった和郎。
その足で習っていた益田先生のもとへ報告しに行きます。
そこで和郎はある発見をしました。

先生のところに、当時はやっていた「エレクトーン」が
あるじゃないですか!
和郎は軽いタッチで弾ける「エレクトーン」で練習することを決めました。
そうとなっては先生を探さなければいけません。

和郎は近所の人がYAMAHAに勤めていることを思いだし、
エレクトーン教室を紹介してもらいます。
そこで「ひろ子先生」と出会います。

 

 

 

和郎はエレクトーンの練習に精を出します。
教材の楽曲も流行りの洋楽ばかり、
楽しくてしかたありませんでした。

しかしピアノの勉強と大きく違っていたのは、
「両足も使う」ということでした。これは慣れるのに時間を要しました。
演奏する身体の軸がおしりなのですから。

或る時、ひろこ先生から、
「ジュニアオリジナルコンクールに出てみない?」と
誘われました。

さて、練習の甲斐あって、中学2年になって、和郎はジュニアオリジナル
コンクールに参加、準優勝を果たします。
このころの和郎は、すっかりエレクトーンに夢中になってしまったのでした。

脱臼も直ってピアノも弾けるようになったある日。
ひろこ先生に突然こう言われました。
「あなたは、エレクトーンより、ピアノをやる人だわ。」
和郎は悩みます。ピアノをやるべきか、エレクトーンをやるべきなのか・・・?
しかし、和郎にとって、あのピアノの深い音は、
小さいころから染み付いた美しい音だと気づき、
和郎はピアノに戻ろうと決意するのです。