7月22日 曇り一時雨
お待ちかねの入浴日。サブザックに必要な荷物だけを詰めて、雲ノ平を基点に日帰りで高天原温泉に入りに行くのだ。帰りはゆっくり歩いて5時間くらいかかるだろうか。すると遅くとも12時には高天原を出立したいところだ。6:10 出発

地図で見ると、小さな丘をふたつ越えて、そこからずーっと下るようだ。
7:10 奥スイス庭園

ふたつの丘との鞍部は奥スイス庭園である。晴れていれば水晶岳の眺めがすばらしいようだが、今日は厚い雲に覆われている。時期的なものか、花もあまりなかった。
ふたつめの丘のてっぺんに無人のコロナ観測所があり、中年男性が小屋のものらしい弁当を食べていた。聞けば、この方は朝4時に高天原の小屋を出て、だいたい3時間でここに到着したということだ。道の状況などを教えてもらってから礼を言って別れ、下りにかかる。
下り


と思っていると、いよいよ樹林帯に入る。とたんに斜度は急になり(そのかわり水溜りもなくなり)、木の根の張り出しが大きくなってきた。難所には右のような手製ハシゴがかけられているが、個人的には、手製のハシゴだったらロープの方がラクだと思っているので、このハシゴ自体が自分には「難所」に思えた。(ハシゴ作った方ごめんなさい)
8:42 高天原峠

峠を過ぎると道は再びゆるやかになり、快調に歩いていく。目の前に忽然と水晶岳が姿を現すと、そこはもう岩苔小谷の沢である。一本丸太の橋を、張ってあるロープでバランスをとりながら渡り、なおもしばらくぬかるんだ道を行く。
9:35 高天原

ワタスゲの穂と、ニッコウキスゲの咲き乱れた湿原の端に出た。ここが高天原だ。どうやら花のちょうど盛りの時期に合ったようである。ワタスゲとニッコウキスゲの比率もいい感じだ。本来ならバックを飾るはずの薬師岳が雲に隠れているのがちょっと残念だが、それでも充分に美しい、夢のような風景であった。
温泉へ
道中急いで食べ物をロクに口にしなかったので腹ペコだ。上の写真の林の中に高天原山荘があり、山荘前のベンチで軽く腹ごしらえをする。そしていよいよ本日のメインイベント、温泉へレッツゴー! 温泉へは道をずいぶん下っていく。これはつまり帰りは汗かいて登らないといけないということだな。・・・しかしなんと風呂は掃除中であった。10時頃は入る人が一番少ない時間なのかもしれない。「今湯を抜いたばかりだから夢の平(龍晶池)でも行ってきたら帰ってくるころはちょうどいいよ」ということで勧めにしたがい龍晶池に。龍晶池はガイドブックで写真を見て、ぜひ行ってみたいところだと思っていたが、今日はバックに姿を見せるはずの薬師岳がすっかり雲の中なので、カットするつもりでいた。その分、ゆっくり湯につかっていようと思ったのに・・・龍晶池へは女性用内湯の脇のハシゴをあがっていく。
10:32 龍晶池

・・・と思ってデジカメのシャッターを押した瞬間、なんと今度は雨が降ってきた・・・
頼む、降るならせめて小降りのままでいてくれーと願いながら早々に温泉に引き返す。
10:55 高天原温泉

で、湯からあがったと同時に雨は止んだのだった。
12:12 高天原山荘発

岩苔小谷は源流部が開けた草原になっていて花もきれいだという話を山荘のスタッフに聞き、帰りはそちらの道を選択した。愛用の「山と高原地図」によれば、岩苔乗越までのコースタイムは登りは2時間10分だ・・・イヤに短いな、と思いながら歩いていると、分岐点に出た。そこには手書きの看板があり『←岩苔乗越 3h30』。ぜんっぜん違うじゃん! 偶然下りの人が来たのでタイムを聞くと、下りで2時間30分かかったという。朝下りてきた道に変更しようかとも考えたが、帰りは違う道がいいだろうということで、そのまま岩苔乗越を目指すことにした。こりゃあ、今日もまたテント場に着くのは遅い時間だな・・・
13:15 水晶池

実に美しい。水晶岳を正面に控え池が左右に細長く広がっており、向かいの岸にはコバイケイソウが一面に、いや、一列に群れ咲いている。それになんといっても静かだ。たどり着いたとき思わず歓声を上げてしまったのだが、それがこだまして返ってきた。それくらい静かだった。
源流部の開けた草原

不意に感動がこみあげてきた。どうしてこんなところで、と思った。山だって見えないし、そんなに珍しい花が咲いているわけでもない。立ち止まって考えてみた。花に囲まれた長い道をゆるやかに登っていく。どうやら自分はそんなゆったりとした山歩きが心底好きらしい。美しい長い道があればピークなんていらない。・・・ん? ここではたと気付いた。北アルプス入山3日にして未だピークらしいピークに立っていないことに。
15:31 岩苔乗越着

道は長かったが、途中には水晶池もあり、最後の1時間くらいはずっと花畑の中を歩けるので、なかなか楽しい道であった。ぬかるみもキツい登りも無茶な段差もなく、比較的歩きやすい道であったといえるだろう。沢もあり、暑ければ冷たい雪解け水で顔を洗うこともできる。すれ違いも2パーティだけで静かだった。
15:42 岩苔乗越発

祖父岳の直下にはロープが垂らしてある難所が一ヶ所だけあった。通過するにはストックがちょっと邪魔だったが、今日は荷物は小さいので難なくクリアできた。
16:34 祖父岳登頂

17:20 雲ノ平キャンプ場帰着
またしても到着が遅くなってしまった。祖父岳からの下りは、石に頻繁にペンキマークがあるので道には迷わずに済みそうだが、日本庭園分岐までは急な、ザレて歩きにくい道であった。大きな荷物を背負って登りたくないなあと思った。キャンプ場に着いて周囲を見ると濡れている石などはなく、昼間の雨の影響もなかったようだ。しかしフライシートの内側についた小さな虫を追い払うのが一苦労であった。
今日の夕食はマーボ春雨とシウマイ。今日はもうテントは10張前後と少なくなっていた。そのうち半分くらいは昨日と同じテント、つまり連泊者であった。