◯『狂歌当載集』前編〔江戸狂歌・第七巻〕千秋庵三陀羅法師編・文化六年(1809)刊
〝早蕨 柳々居辰斎
日の岡や雪解の水のぬるしとて風に野風呂をたゝく早蕨〟
〝五月雨 柳々居辰斎
花形のわたしは跡にみつまして松の上こく五月雨のふね〟
〝鵜川 柳々居辰斎
いろくずの来べき宵とてさゝかにのいとよくさばく鵜飼等が業〟
〝暮秋 柳々居辰斎
爪木こる杣がかきほのなた豆もさびついてゆく秋の暮かた〟
〝老人 柳々居辰斎
馬ぞとて乗しむかしの竹を今老ての杖とたのむくやしさ〟
◯『狂歌当載集』後編〔江戸狂歌・第七巻〕千秋庵三陀羅法師編・文化七年(1810)刊
〝秋歌 秋々居辰斎
うすくこく染るもみぢを秋霧につゝみてすかす後雛菓子〟
◯『狂歌関東百題集』〔江戸狂歌・第八巻〕鈍々亭和樽編・文化十年(1813)序
挿絵署名「辰斎老人画」「辰斎画」
〝鶯 柳々居辰斎
経よみし親につけ子の鶯の声もとくきよと鳴かとぞ聞〟
〝五月五日 柳々居辰斎
くすりそときけは幟の猿まてか軒のあやめをひく風情なる〟
〝紅葉
紅葉に出湯わきしをあつしとやたゝいてつたふ沢の水音 柳々居辰斎〟
〝時雨
山賤が曲土(ママ)もけぶりに曇らせて膝へ時雨をこぼすなら柴 柳々居辰斎〟