△『増訂浮世絵』p58(藤懸静也著・雄山閣・昭和二十一年(1946)刊)
〝有賀常近
長野県別所の北向観音で名高い常楽寺に、有賀常近筆の吉原三浦屋の店頭に於ける遊女を写して奉納し
た絵額がある。常近は上田の人であらう。画風から見ると、初代清信の門人に違ひない。然かもこの絵
額には享保十五年三月の年記があるので、清信の没した翌年のものである。この絵は画技に優れたもの
で、筆致や賦彩に見るべきものがある。絵額の裏面には、奉納者の氏名が列記されてゐる。それ等のも
のは、上田の方々である。恐らく上田出身の常近に委嘱して、この絵額を作つたものであらうと思はれ
る。常近の版画を見ない。版画を作らなかつたことが、画技に優れておりながら、その名の伝らなかつ
た所以であらう〟