Top浮世絵文献資料館浮世絵師総覧
 
☆ せいとく 井特浮世絵師名一覧
〔宝暦5年(1755) ~ 文化12年(1815)以降没〕
 ☆ 享和三年(1803)    ◯『摂陽奇観』巻四十三 浜松歌国編(『浪速叢書』第五 所収)   〝新町東口虎屋の看板に婦女の半身、洛祇園町井特画にて生るがごとし、其頃市中の噂に、右の画眼の玉    働(ママ)くといふ、其後所々に半身のおやま画流行す〟  ☆ 嘉永三年(1850)    ◯『古画備考』三十一「浮世絵師伝」中p1416(朝岡興禎編・嘉永三年四月十七日起筆)   〝(補)井特、字伯立、風俗画ヲ能クス、京都人    [署名]「東山画奴井特寫」[印章]「(一字未詳)日伯立」(白文方印)「せいどく」(朱文)〟  ☆ 明治以降(1868~)    ◯『近古浮世絵師小伝便覧』(谷口正太郎著・明治二十二年(1889)刊)   〝平安美人画師 上龍 真龍 せいとく 大空 其鳳 春貞〟    〈「せいとく」は祇園井徳〉  ◯『時代品展覧会出品目録』第一~六 京都版(大沢敬之編 村上勘兵衛 明治二十八年(1895)六~九月)   (国立国会図書館デジタルコレクション)〈「時代品展覧会」3月25日~7月17日 御苑内博覧会館〉   〝「第六」浮世画(305/310コマ)    一 天保年間風俗京美人図 一幅 井徳(ママ) 同上〟〈井特〉  ◯『浮世絵画集』第一~三輯(田中増蔵編 聚精堂 明治44年(1911)~大正2年(1913)刊)   「徳川時代婦人風俗及服飾器具展覧会」目録〔4月3日~4月30日 東京帝室博物館〕   (国立国会図書館デジタルコレクション)   ◇『浮世絵画集』第二輯(明治四十五年(1912)五月刊)    (絵師)井特(画題)「芸妓」(制作年代)文化文政頃(所蔵者)東京帝室博物館〟   ◇『浮世絵画集』第三輯(大正二年(1913)五月刊)    〝井特   「矢」    文化文政頃   男爵 都筑馨六〟  ◯『罹災美術品目録』(大正十二年九月一日の関東大地震に滅亡したる美術品の記録)   (国華倶楽部遍 吉川忠志 昭和八年八月刊)    祇園井特画(◇は所蔵者)   ◇小菅孝次郎「五美人花見図」二曲屏風 一隻 絹本極彩色    (尺八の画を一扇に貼し、一扇には紙本清水浜臣が「うつらふは花のならへとしりながら色にはそまぬ人そまれなる」     の歌書を張りたり)  ◯『浮世絵師伝』p109(井上和雄著・昭和六年(1931)刊)   〝井特(セイトク)    【生】  【歿】  【画系】  【作画期】文政    京都祇園町南側に住し、淫薬、淫具類を鬻ぎて渡世したりき。一説に俗称を井筒屋特右衛門といひ、青    楼の主人なりしと、されど未だ確証あるには非ず、たゞ字を伯立と云ひし事は、印文によりて明かなり。    肉筆美人画及び秘戯図を能くし、画風円山派より出でしが如けれども、亦彼れ独特の筆致を有す、落款    には「皇都祇山井特写」、「東山画奴井特写」、「鴨川祇山井特写」などゝしたる例あり、こゝを以て    世人鴨川井特とも呼び做せり。文政十年版『墨絵草紙』に口絵を画きたれば、其の頃までは生存せしも    の歟〟    △『増訂浮世絵』p194(藤懸静也著・雄山閣・昭和二十一年(1946)刊)   〝祇園井特    京都の女を写して、特色のある表現をなし、頗る深刻味のあるものである。一種の写実描写で、半身に    相貌の写実をしたものもある。もとは円山派の画風から出たのであるが、それを自己の一流となしたも    のである。版画は極めて稀であるが、肉筆画の作例は相当に多く遺存してゐる。肉筆画家として立つた    ものである。伝ふる所によると、祇園の妓楼井筒屋の主人で、特右衛門といふたので、井特といふたの    で、井特と署名したのであるといふ。字を伯立と称したことは、印文によつてわかる。    なほ好んで用ひた印に、不規則な楕円形の内に、平仮名で「せいとく」と書したものがある。落款には    「皇都祇山井特写」「鴨川東祇山井特写」「東山画奴井特写」などゝ記してゐる。この故に人呼んで、    祇園井特、鴨川井特などゝ称したといふことである。その製作期は寛政から文政年間に亘つてゐる。井    特は全く独特の画風を以てしたので、その画の後継者はいないやうである〟