EHNニュース 2008年10月
”カリフォルニア大学労働環境健康センター”の論説記事紹介
カリフォルニアの新たな化学物質法
よいスタート、作業は必要


情報源:Environmental Health News, October 2008
Op Ed: California's new chemical laws: Good start, need work.
By Megan R. Schwarzman and Michael P. Wilson,
Center for Occupational and Environmental Health, University of California, Berkeley

http://www.environmentalhealthnews.org/ehs/editorial/california-takes-bold-new-steps-in-addressing-weak-chemical-policies

訳:安間 武 (化学物質問題市民研究会)
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/
掲載日:2006年10月12日
このページへのリンク:
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/eu/usa/ehn/ehn_Cal_new_chem_laws_COEH.html


 カリフォルニアの新たな法は、化学物質政策の複雑さと取り組むという同州の意思へ向けての調和の取れた前進と意思を示すものである。他のどの州もまだこのようなステップをとっていない。連邦政府の30年間の政策は人の健康を適切に守ること、又はより安全な代替物質に投資する動機付けに失敗してきた。法案 AB 1879 と SB 509 (訳注1)により、カリフォルニアは今、現代的な化学物質政策を初めて構築する舞台に出てきた。一方、これらの法はまた、よく知られた化学物質の有害性(ハザード)に対処する措置をとることを避けるために利用されるリスクもある。

メガン R. シュバルツマン及びミカエル P. ウィルソン
労働環境健康センター(COEH)、カリフォルニア大学バークレー校
対照論評記事:カリフォルニアの新たな化学物質:我々を守れない
Op Ed: California's new chemical laws: They fail to protect us.


 カリフォルニアの新たな法は、化学物質政策の複雑さと取り組むという同州の意思へ向けての調和の取れた前進と意思を示すものである。他のどの州もまだこのようなステップをとっていない。連邦政府の30年間の政策は人の健康を適切に守ること、又はより安全な代替物質に投資する動機付けに失敗してきた。法案 AB 1879 と SB 509 (訳注1)により、カリフォルニアは今、現代的な化学物質政策を初めて構築する舞台に出てきた。一方、これらの法はまた、よく知られた化学物質の有害性(ハザード)に対処する措置をとることを避けるために利用されるリスクもある。

 新たな法の制定を含んで、さらなる措置がこの法案の目標を達成するするために求められるが、これらの法案は、いくつかのやっかいな問題に対する熟慮された対応を提供している。たとえば、
  • 実際に公衆健康にとって重要な、化学物質規制の目標となる物質を確保するために、AB 1879は州当局にプロセスと製品に用いられる化学物質の全範囲を検討することを求めている。
  • ひとつの有害物質から他の物質に残念な代替をすることを避けるために、AB 1879 は当該化学物質のライフサイクル分析を求めている。
  • 歴史的に規制によって見過ごされてきた脆弱なグループを目標としつつ、AB 1879 はカリフォルニア州の有害物質規制局が労働者や子どものような感受性の高い集団の化学物質暴露の影響を考慮するべきことを規定している。
  • SB 509 は化学物質成分に関する情報を公衆に向けるよう変化し始めている。この一見単純な法律は、製品の潜在的な健康と環境への影響を再評価する動機を手続きに与える可能性を持つ。
 これら及びその他の理由で、これらの法案は画期的である。しかし、それらは、データ不足によりほとんど目隠し状態であり、化学物質政策の障害コースに入り込みつつある。措置の遅れの結果が一方にあり、早まった措置の落とし穴が他方にある。この二つの法案は、州法と連邦法の比較的弱いパッチワークになってしまった化学物質製造システムの複雑さを反映する全政策展望に目を向けていない。

 カリフォルニアの課題は、今、過去の誤りを繰り返すことを避けることである。我々は、これらの法案で明瞭に表現されているように、もっと包括的な枠組みを構築する一方で、既知の有害性(ハザード)を除去することに有効に働く能力を築き上げることが必要である。この枠組みは、1)有害物質と、より安全な代替物質をいかに定義するか、2)もっと情報に基づいた決定をするために十分なデータをいかに生成するか、3)厳密で効率的なライフサイクル・アセスメントをいかに実施するか、4)科学的不確実性に直面した時に、因果関係の決定的な証拠を待つよりも、証拠のバランスの上に立ちながら、いかに意思決定を行うか、というような新たな科学的、技術的疑問に我々が目を向けることを求めている。これらの問題のあるものは実施している間に目を向けられるであろうし、あるものはさらなる立法を必要とするであろう。

 我々は下記のことを提案する。

既知の有害性への取組み

 カリフォルニアは、鉛、産業排出物、職場で使用される有害化学物質、及びハロゲン系難燃剤や過フッ素化合物、ビスフェノールAのような製品中で使用される有害化学物質への暴露によって及ぼされるような既知のリスクに目を向ける必要がある。これらの当面の懸念を無視して、長期的枠組のみに焦点を合わせることは、特定集団の心臓血管系疾患のリスク削減に関する専門委員会を構成する救急サービスを放棄するようなものである。ヘルス・ケアにおける化学物質政策においては、当面の戦略及び予防的(preventive)な戦略の両方が必要である。これはさらなる立法と特化した措置を必要とする。

国際的なデータソ-スへのアクセス

 両方の法案は、他の政府から入手可能な情報を利用する権限を州当局に与えている。そうすることで、 既存のデータギャップの範囲を埋めて、AB 1879 の実施に求められる作業のスピード化を図ることができる。国際的なデータはカリフォルニアで使用されている化学物質を特定することはできないが、ヨーロッパとカナダにおけるデータベースの多くの重なりが、我々の知識ベースをかなり改善するであろう。

意思決定の麻痺の防止

 AB 1879 によって規定されるライフサイクル・アセスメントは、厳密さと効率のバランスが取れていなくてはならない。同法案に記載されているとおり、公共機関は不十分な情報で広範なライフサイクル・アセスメントを実施する責任を負っている。このことは法によって与えられる潜在的な利益を妨げる。 必要な特定情報の特定

 州当局は、新たな法を実施するための能力に限界がある場合には、それらのギャップを埋めるための仮定に依存するよりむしろ、その事例を文書化すべきである。

企業機密に目を向ける

 カリフォルニアは取引情報がなにもせずに(デフォルトで)保護されることを禁止すべきである。そうではなくて化学物質製造者に企業機密情報であると主張する要求書を提出することを求めるべきである。連邦政府の有害物質規正法の下における30年の歴史は、産業による企業機密であるとの主張の濫用が効果的な監視を損なうということを示している。ひとつの判断として環境保護局は、化学物質の特定は同局への新規情報書類の90%においてで機密であるとの主張がなされているということを発見した。

利害の抵触(Conflict of Interest)を避けること

 産業利害関係者の役割は注意深く制限されるべきである。革新的な製造者は、意思決定者に本質的な技術知識を提供することができるが、既存の化学物質又は技術の既得商業権益は州当局にアドバイスする時には、その役割は厳しく制限されるべきである。カリフォルニアは障害コースを乗り切る意思を示してきた。我々がこの新たな法津を実施するときに、我々は既知の有害性を緩和するために今、行動する能力を増大する一方で、データリッチな環境を構築する必要がある。


訳注1
 二つの法案とは下記のものである。
 ・AB 1879: 懸念ある化学物質の特定と規制(Identify and Regulate Chemicals of Concern)
 ・SB 509 : オンライン有害物質データベースの構築(Create an Online Hazard Database)
 California Safe Consumer Products Bills (AB 1879 and SB 509) / Breast Cancer Fund

訳注2:関連情報


化学物質問題市民研究会
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