ACT.78 上京物語 (2000.03.13)

 それにしても、ものすごい車の量だ。
 以前からテレビなどのメディアで散々見てきてはいたが、実際に自分の目で見るとやはりその量には驚かされる。前も後も右も左も上も下も車だらけだ。3分の1ほど嘘だ。
 首都高速に入っておよそ10分。動いたり、止まったりを繰り返している。距離では何メートルほど走ったのかは分からない。ちなみにガソリン警告灯は煌々と輝いている。かつて味わったことのあるエンストの恐怖を味わうのは二度とごめんだ。

 エンストをしたのは2年ほど前のことだ。
 ガソリン警告灯が最初に点灯したのはその2日前のことだったが、警告灯はついたり消えたりしていたため、それほど深刻な状態ではないのだろうと考えていた。そりゃそうでしょう?本当にヤバイ状態なら警告灯はつきっぱなしであるはずなのだから。と、勝手に考えていたため、エンストなんぞを引き起こしたのだが…。
 そして、悲劇は突然訪れる。それは仕事帰りの深夜のことだった。まずスピードが出なくなる。アクセルをいくら踏んでもスピードメーターの矢印は0へと近づいていく。慌てて、小さな十字路を曲がり、車の通りの少ない道へと入る。そして、エンジンストップ。停車した後、エンジンをかけようとしてもエンジンに鼓動が戻ることはなかった。最初はエンジントラブルとだと思った。なにせ、速度が落ちているときもガソリン警告灯は消えたままだったからだ。ちなみに私はJASの会員ではない。おまけに機械系のことはさっぱり分からない。つまり、本当にエンジントラブルであるならばお手上げなのである。近くにガソリンスタンドもない。ここで私は完全に途方に暮れてしまったのであった。あの時の辛さ、寂しさといったものは今思い出してもやりきれなくなる。その後が気になって眠れない方のために言うと、その時は友人に電話をして助けてもらった。面白くもなんともないオチだ、スマン。

 というわけで、二度とゴメンなのである。
 こんな回想シーンを挟んでも車はほとんど進んでいない。いや、多少は進んでいるのだが、回りの車のせいでそういう気分になれないのだ。いくら走っても風景が変わらないのだから。
 な〜んて、話を引っ張ったって仕方がないのである。だって、特別大きなトラブルも起こることなく新宿に着き、不動産屋との契約も終わり、引越し先にも迷うことなく着いてしまったのだから。引越しもいくつかの家具に傷がついたぐらいで済んだ。いや、ぐらいじゃないだろ。まあ、それは引越し屋に修理をしてもらうことでケリがついた。後は目の前に積み上げられたダンボール箱さえ片付ければ全て終了だ。この辺りの話もとりたてて文に起こすほどのトラブルも面白いこともな〜んにも起きずやがて終了。
 そして、今日まで大して面白いこともなく日々は流れ……
 どうも、引越しに慣れてしまっているようだ、私は。本当ならもっと新鮮な出来事なんかもあるはずなのだろう。しかし、私は今回の引越しで物心ついていないときから合わせて16回目になる。って、数えてみるとけっこうしてるな、オイ。そんなわけで大して新しい出来事もあるようには感じないのだ。そして、毎日だらだらと日々は流れていく。
 以上が今回の上京物語の全てだ。なにも語ってないじゃん。

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