美凪さーん。
7/21。リサイクルショップの日雇いの仕事などしてみている間に立ち寄った駅でしゃぼん玉を飛ばすみちると、一緒にいる少女美凪。観鈴の同級生らしい。喋るのがワンテンポ遅いお嬢さんである…。観鈴によれば学年トップの秀才らしい。
か、会話が続かない…。
そこに体当たりかまして来るみちる。だから俺は変態誘拐魔じゃないっつのに…。
長ーくかかりましたが何とか自己紹介。美凪、遠野と呼んで欲しいと指定して来た。下の名前は嫌いなんだろうか。
何だかさっきからじーっと見つめられているっぽいんだが何なんだ。みちるには睨まれてるけどこっちの理由は判ってる(苦笑)。
観鈴マップに駅はなかったので訊いてみると、廃線になって使われていないことを教えてくれた。でも動き回るのに目印にはなるので地図には書き足して貰うことに。
7/22。観鈴を学校に送った後に商店街に来てみた。診療所の前でみちるとポテトがぴこぴこ二重奏しているのに出くわす(苦笑)。何なんだこいつは…。
逃げ出したみちるが落としたお米券ゲット。
7/23。午後、観鈴の家を出る決意をして駅にやって来た。これからどうしようか考えながら昼寝をしていた所で、みちるに殴られる…。
バケツに鉄パイプって、そんなモン何処から調達して来たのか訊いてみたら、廃駅の元待合室らしき場所だった。ゴミ溜めになってるなあ。
ところで何か用か? と訊ねると、いつまでこの街にいるのかと聞かれた。早く出てけー! と喚かれてまた喧嘩になる。
みちるの最後の捨て台詞は「美凪は渡さない」だった。
…はあ?
さて寝る場所をどうしよう。ふとみちるが残したバケツが目に入り、廃駅を宿にすることを思いついた。観鈴の家の納屋に忍び込んで飯盒を探そうとする。晴子に見つかるが、往人が出て行こうとしていることを知って、飯盒を譲ってくれた。
7/24。観鈴に出て行くことを話しながら学校へ。堤防にいたら、美凪さんがやって来た。駅に寝泊りしようと思っていることを言うと、駅には人がいた方がいいと言ってくれた。そんなもんか?
そして、食事はどうするのかと。弁当を作ってくれると言う。そ、それは嬉しい。
んで診療所の前で大道芸開始。ポテトしか客いないけどな…。
聖さんにお茶に誘われ、そしてソーメン食べて行くかとも言われるけどそれは断る。美凪さんと約束あるからね。
堤防に戻って来たけど。美凪さん…何故か大量のお米券を所持している…で往人に更に2枚ほど進呈してくれました。ははは。
お昼、みちるも一緒に食べるらしい。うーん歓迎されないと思うけどなあ。
美凪さんは、みちるは自分の半身だと言った。そして、みちるは往人のことばかり話しているからきっと好きなんだと言った。…話の内容にもよると思うが…。
ずっと付いて行って、辿り着いたのは駅。みちるいるねえ。シャボン玉作れたとはしゃぐみちるに、美凪は星の砂の小瓶をプレゼントしていた。
で、隣にいる往人が気に入らないみちるにまた喧嘩を吹っかけられて、ひとしきりツッコミし合った(?)後にようやくゴハン。
食べ終わったみちるは満足げにお昼寝。まったり過ごすうちに夕方になってしまった。
夕飯はどうするのかと美凪に訊かれて、お米券あるから平気だと言うと、もし店は閉まっていると返事が。がく。でも、こんなこともあろうかと、と言いながら美凪はもう1つの弁当箱を出して来た。ううありがたいー!
7/25。観鈴を学校まで送った後に米屋へ。出て来た中年女性がお米を運ぶのを手伝う。娘が米好きで、食べて喜ぶ顔を見るのが嬉しいと話していた。後にそれが美凪の母親であることを聖から聞く。
娘のために米を買いだめするいい母親だと言ったら、少し聖は言葉を濁らせた。体の病気ではないんだがな、とだけ。
米を無事に手に入れての帰り際、みちるに人形を奪われて米を担いだまま追いかけるハメに…。死ぬー。
駅まで来てしまった。美凪さんも来てた。人形を助けてあげたと主張するみちる。そして人形を見た美凪さん、綺麗にしてあげるとピンクのふりふり衣装を着せてくれた…それはちょっと…と思うのだが、みちるが「かわいくなった」と言うので、子供たちに芸を見せる分にはこっちの方がいいのかなあと思い直してみた。
大切なものなんですね、と美凪に言われる。そうかもね。
そういえば、今朝お母様に会った話をする。そして、何処か具合悪いのかと訊いてみた。
美凪が言うには、母は夢を見ているそうだ。母にとって夢は現。夢の向こうには何もない…。
少し悲しげなその言葉をみちるが遮った。そしてこっちに「美凪が悲しむような話するなー!」
みちるに引っ張られて美凪たちは去って行く。
夜、米をご飯にしようとして火がないことに気付いたり、やっぱり人形のひらひらが嫌で元に戻そうとしたり悪戦苦闘してしまったりして。
7/26。金を稼ぎに商店街へ。でも稼げはしないのは相変わらず。聖の使い走りを断って駅に戻って来るが、空腹でどうしようもないのでお昼寝タイム。
起きたらそこに美凪さん。早速なので、人形が実は男の子だったんだと口から出任せを言い、男物の服にしてくれと頼んでみた。
男物の服は慣れてないので一晩預けてくれと美凪さんに言われて、大人しく人形を渡した。明日の昼過ぎにここで待ち合わせる約束をする。
美凪から、みちるが来たら自分はもう帰ったと伝えて欲しいと頼まれる。
それから、往人が汗くさいので、駅舎の中のシャワー室を使うといいと鍵を貸してくれた。彼女の父親が元駅長なのだそうだ。
ここは大切な思い出の場所で、寂れて行くのは寂しいから人がいた方がいいのだと言ってくれる。
それから、星の砂の小瓶もくれた。3人お揃い、だそうで。
駅舎の鍵をありがたく使ってシャワーを浴び、飯盒でお米を炊いていると、みちるが来た。珍しくさみしそう。
ずっと見ていたと言った。そして、美凪が楽しそうだったとも。「ありがとう」と言われる。そして…「少し悲しいけど、やっぱりこれでいいんだってそう思ったの」。
…何がだろう?
7/27。昼まで寝てたらしい。起きて頭から水をかぶっていた所に2人がやって来た。
人形は無事に帰って来ました。オーバーオール着たちゃんとした男の子です。
で、突然、美凪さんはままごとは好きかと訊いて来た。どうやら、人形を持ち歩いているせいでそう思われたらしい。
人形芸を2人に披露する。仕掛けはなく、法術を持つんだという話もする。
いつの間にか美凪と話し込んで、旅の目的の話になった。翼を持つ女の子を探していると言っても、美凪は笑ったりはしなかった。しないと思ったからこそ、話してみたのかも知れないけど。
傍らで眠ってしまったみちるの頭を撫でながら、今度は美凪が話し出す。みちるが昨日来ていたか、と訊いて、少し悲しい顔になった。
みちると一緒の時を過ごすのはとても幸せだと美凪は言った。それから、往人は誰かと一緒にいる幸せを感じた時がありますか? と尋ねて来る。
遠い昔にはあったかも知れない。母親と旅をしていた頃。
そして今の旅も、もしかしたらその延長線に過ぎないのではないかと、そんなことをふと思っていた。
7/28。朝、武田商店の前でゴミを漁っているみちるがいる。…何でゴミ漁りなんてしてるんだ、この子は。辞書らしいものを発見して持ち帰ることにしたらしい。
そして商店街。またカートをよろよろ引いている女性。美凪の母親だ。運ぶのを手伝うついでに、こないだのは全部食べちゃったのかと訊いてみたら、まだたくさんあるそうです。…なのに買うの??
ふらふら歩いて校門前。美凪が出て来た。これから帰るのか? と何気なく訊いてみると、まだ帰らない、みちるに会いに行くと。心なしか何かを取り繕ったような感じに見えた。
駅まで一緒に来ると、みちるが寝ていた。集めたゴミに囲まれてご満悦な雰囲気。美凪によれば、それがエコロジーなみちるの趣味であるらしい。
美凪、これから天文部の部活ために学校に戻るそうだ。その間少しだけでもみちると遊びたかったらしいけど、寝ているのを見て諦めて立ち去る。
その夜。星を見ながら、美凪に貰った星の砂を見ていると、ようやくみちるが目を覚ました。2人で星を見上げながら、みちるは言った。美凪からのプレゼントである星の砂をずっと大切にして欲しいと。
美凪には幸せになって欲しい。みちるは、いつもの口調でさらっとそう言い残して去って行った。
7/29。朝ご飯を終えてから商店街で人形芸。仲の良い姉妹が見物に来てくれた。珍しい。
2人が立ち去った後、駅に戻る。美凪が読書中。横でみちるがランチ中。そしてその後は相変わらずのシャボン玉遊び。うまく作れないみちるに手本を見せる美凪。
夜になって、隣町の花火大会が始まった。ちょっと遠いけど辛うじて見える。見た目と音はもちろんズレズレだけど。みちると美凪は見入っている。
花火が終わると、美凪は明日は来られないと言った。みちる曰く「でーと」なんだそうで。何か言うことないのかって…えーと。嫉妬してみる?
みちるに指摘されて真っ赤になってる往人を、ちょっと嬉しそうに頬染めて見ている美凪。…実は何だかいい感じ?
7/30。みちるだけがやって来た。美凪はデートなんだからもっと落胆しろ、落ち込んで街を出て行けーと無茶を言うみちるに「金がない」と言うと、金が手に入る方法を教えてやると言う。
大人しくついて行ってみたら、自動販売機の周辺で小銭を探すハメに。おいおい。
見つからないので腹立ち紛れに自販機ぶっ叩いてしまい、店長に追いかけられた。
逃げて着いた先は神社。お社を知らないと言うみちるに「神様の家」と説明するが、神様は空にいるはずとみちるは納得出来ない様子だった。
境内にいた親子ネコに目を留める。みちるが「お母さんってあったかいのかな」と少し寂しそうに言う。母親がいないのだろうか、と言いかけると、「ちゃんといるよ」と返して来るが、何処かその笑顔が空々しい。何か隠してるな、この子。
商店街に戻って来る。美凪が母親と2人で歩いているのを見かけた。みちるに、あの人(美凪母)知ってるか、と訊いてみるが、それには答えず。みちるの2人を見る目は何だか寂しそう。
やがて美凪の母親は美凪と別れて商店街を出た。1人取り残された美凪は寂しそうだとみちるが言う。「美凪を呼んであげて」と。
みちるの妙に切実な言葉に応えて彼女を呼ぶ。近づいて来ていつものように挨拶。だけど、ふと気付くとみちるはいなくなっていた。
美凪、去り際にでーとは嘘だと言って来る。母親と出かけていただけだと。
楽しかったとは言うものの、何となく笑顔が遠い感じ…。
7/31。みちるが来ている。でも元気がない。話しても仕方ないことだと言いながら悩んでいるみちるに無理に吐かせてみたら、今夜天気が悪くて星が見えないということを真剣に悩んでいたらしい…。
でもその根拠にしていたのは拾った新聞…3週間前のでした。やって来た美凪に、今夜は晴れるからと言われて安心するみちる。
そしてランチ。大好物のハンバーグの登場にはしゃぐみちる。往人の分もあると勧めて来た美凪の言葉に甘えて箸をつけようとするが、みちるが邪魔する邪魔する…わざと怒らせようとしてないかなあ、こいつは。
夕方までシャボン玉で遊ぶ。その後、美凪は部活動のため学校に行くと言う。往人も誘って来た。部外者が行っていいのかと訊いてみたが、部長さんだからいいらしい。承諾する。
ただ、みちるは2人きりには猛反対らしい。テゴメにされるって…そんな言葉何処で知ったんだか。
それならみちるも来ればと美凪。でも、みちるは星を見に行くこと自体に迷いがあるらしい…どうしてだろう。
いつまでも悩んでいるので、とりあえず学校まで一緒に来てから考えたらと引きずって行く。
美凪は、ずっと3人で歩いてみたかったんだと言っている。そして往人も、こういう安らぎも悪くないと思い始めていた。1人でも2人でもない、3人の安らぎ。
学校の入り口まで来て、みちるは一緒に行くことを決めたようだ。屋上へと。
他の部員もいると思っていたのに、そこには誰もいなかった。天文部、美凪1人だけのようだ。
空にいると言う翼を持った少女のことを思い出しつつ星空観察。
終わって、商店街でみちると別れる。美凪は夜も遅いので家に送ることに。
美凪の家の前で、母親に「いつぞやはお世話に」と挨拶された後、夕飯に呼ばれるが遠慮する。母親に対する美凪の態度が妙に悲しげなのを不思議に思っていたら、その母親が、自分の娘のことを----目の前の美凪のことを「みちる」と呼んだ。
そして美凪もそれに「うん」と答えて家に入った……とても寂しそうに。
8/1。みちるだけが来る駅前。美凪は姿を見せない。
8/2。美凪はやはり姿を見せない。みちるは泣き出しかけている。
夏風邪でも引いているんじゃないかなと話す。星の砂に願いをかけてみるのはどうかと提案したら、みちるは真剣に願をかけていた。
そしてシャボン玉の練習。泣きそうなみちるを見ているのが辛くて、一緒に練習付き合うことにする。
8/3。まだ来ない。こりゃ本格的に風邪を引いているんじゃないだろうか。
来ないなら行けばいいとみちるに言うが、みちるは美凪の家には行きたくないと。理由は自分でもよく判らないまま。ただ、美凪はみちるに自分の家の場所を教えてくれたことがないので、きっと美凪は教えたくない理由があるんだろうと思っているらしい。
みちるは、往人に行って欲しいと頼んで来た。宝物だという青の小瓶を託される。風邪を引いて苦しんでいたら、渡して欲しいと添えて。
美凪の家に向かう。呼び鈴を鳴らして出て来た母親に娘を呼んで欲しいと頼むが、家に娘などいないと不思議そうに返された。
……え。
商店街へやって来る。聖に呼び止められて、茶に呼ばれる。時間がないと言うのだが、強引に診療室に連れ込まれた。
でも、お茶うけに出た話が美凪関連だった。相談しについさっきまでここに来ていたと言う。往人が美凪と仲がいいのを知っている聖は、その内容を話してくれた。
美凪の母親の病気が完治したのだそうだ。2日前に突然。心の病だったので、何故急に治ったのかは聖には判らないそうだ。でもその割に浮かない顔だと指摘すると。
母親は、完治したことで娘の存在を忘れてしまったのだそうだ。
かかっていた精神科の医師によれば、それは「夢から覚めた」ということらしい。
…どーいう意味だろう…。
聖は、美凪は部活動があるから学校にいるはずと教えてくれる。
そして学校。校門でしばらく待ってみるが美凪は出て来ない。だとすればあそこしかない。屋上へ行く。
いた。
約束通り、みちるからの小瓶を手渡す。
しばらく空を見た後、美凪の方から「話した方がいいでしょうか」と言ってくれる。個人的な問題に巻き込むのは迷惑と思っているっぽい美凪を説得すると、ようやく話し出してくれた。
美凪には、生まれて来ることが出来なかった妹がいた。みちるという名前をつけるはずだった命。美凪の母親は、みちるを流産した時から心を病んでしまった。
美凪はお父さんっ子で、いつも父にくっついていた。それを見た母はいつも寂しそうな表情をしていた。母親のことももちろん好きだったが、そんなことは伝えなくても理解してくれていると思っていた。
だが、母にとってはそれは疎外感で。だから生まれて来るはずのみちるは母にとっては希望だった。その希望は、始まる前に潰えてしまったのだ。
母は夢の住人になった。そして、その中には美凪という娘はいなかった。彼女の希望だった「みちる」がいるだけ。美凪は、みちるとして振舞わなければ母親に受け入れてもらえなくなっていた。
母親は、精神科の治療のお蔭で少しずつ良くなっていた。そして、往人が家まで美凪を送った日、母は眠りながら見る方の夢を見、その中で、みちるがこの世には生まれなかった命であることを理解したのだそうだ。
そして「目覚める」。目覚めることで、夢が終わり、現実を意識する。
母は、起きて家にいる美凪に「あなた誰?」と言った。
娘のみちるは、成長しないまま亡くなった命だと理解し、目の前にいた『みちる』は本物ではないと理解したら、それが誰なのか判らなくなってしまったのだ。
空にも大地にも居場所を失う。飛べない翼に、意味はあるんでしょうか。
居場所がないなんて言うな、と往人は美凪を責める。美凪を待っている人がいる限り、そこに彼女の居場所はあるのだから。
学校を出る時、美凪は大きなスポーツバックを抱えていた。家出して来ているのだそうで…。そしていきなり、自分も駅舎に住むと言い出した。
時間がないんだそうです。美凪の夢はまだ覚めていない。その夢が終わるまであと少ししかないのだと。
何のことなのかはよく判らない。美凪も、今はこれ以上は話せないと言った。
そして彼女は駅舎の待合室に、往人は外のベンチに分かれて眠ることに。
----美凪の過去の記憶。母の妊娠。家族会議で決めたみちるという名前。ちなみに美凪の名は「あなたたちの未来が、いつまでも美しい凪に満ちていますように」というのが由来。
家には背に羽を持つ女の子の絵があって、父はそれを神様の絵だと言っていた。神様がみちるを連れて来てくれると母に言われて、美凪は幼心にとても楽しみにしていた。
みちるは妹になってくれる。女の子の神様は友達になってくれる。そう思っていた。
8/4。美凪は飯盒で米を炊き、麩と炒ったネギの入ったみそ汁も作っていた。腐らなそうな材料を家から持って来ていたらしい。
そして午後からはみちるも加わるいつもの日常。
往人は「仕事」をしに行き、夜は学校の屋上で天体観測。
3人でいる時間に安らぎを感じた往人は、この町にいたいと願うようになる。
帰り道、みちるは学校の前で別れて走って行った。あの子なりに気を遣ったつもりらしい。でもどうして気を遣われているのか理解してない往人…。
8/5。午前中美凪は夏期講習だそうで。
1人で散歩してると、先日人形芸を熱心に見てくれた姉妹にまた会った。姉妹に芸を見せると、カラスの羽をくれた。カラスは友情に篤い鳥なので、持っているとたくさん友達が出来るらしい。
駅に戻ると、扇風機が回っている…風を浴びているみちると、傍らで読書する美凪。
ランチを広げて食事した後、みちるはお昼寝タイム。
美凪は、いつかこの町を出るのかと訊いて来る。そして、寂しいと思ってしまうのはいけないことだろうかと…。
いつか別れなければならない、いつか終わってしまう穏やかな日常。それはもしかしたら美凪の母の見ていた夢と同じなのかも知れない。だとしたら、この『夢』の先には何があるんだろう。
そんなことを考えていた往人の脳裏に流れて来た声。「そんなの知らない方がいい」。それは確かにみちるの声だったが、本人は昼寝からその時に目覚めた。
なんだったんだろう…。
8/6。ランチはみちるのリクエストでハンバーグ。午後はシャボン玉遊び。夜は、2人で星空を見上げる。美凪の記憶。
小さい頃、仕事をしていた父を駅まで迎えに行き、星空を眺めながら帰って来るのが美凪の習慣だった。父は星座に詳しく、色んな星の話をしてくれた。星は、人の心を綺麗にしてくれるとも。
みちるの流産が切っ掛けで、美凪の父と母は夫婦仲が悪くなり、父は家を出て行くことに。美凪に付いて来るよう言ったが、母が精神的に参っているのを知っていた美凪は母を置いては行けなかった。
父は星の砂をプレゼントしてくれる。これを持っていれば幸せになれると。
美凪は父の帰りを待った。帰って来てくれないのは自分の心が汚れているせいと思い、夜空に自分の心を清めてくれるよう何度も祈った。
やがて父は別の女性と再婚したとかなり後になってから知った。
8/7。目が覚めたら美凪がいた。往人の寝顔を見たかったと朝からがっくりしている。じゃ代わりにおはようのキスでもいかがですか(笑)。
マトモに受けて照れないで下さい美凪さん(笑)。
みちるが来てシャボン玉で遊ぶ。手本を見せてくれている美凪を見ながら、みちるに話しかけてみた。同じこと考えてたのか。
何となく、美凪はいつもと違う。彼女の言う「夢の終わり」までの間に、色んなことを詰め込もうとして、無理にはしゃいでいるように見えることがあるのだ。
みちるが呟く。「やっぱり無理なのかな」と。
8/8。美凪の夏期講習の間、みちると散歩。海辺のカモメと会話するみちる。もうすぐ風が吹くとカモメは言っていたそうだ。
商店街に来る。人形芸をみちるに披露してやる。
その時、診療所のドアから美凪の母親が出て来た。みちるが「かあさ…」と、そして「探してる…」と言いかけるが、それ以上は何も答えてくれない。
大切な人に忘れ去られるのは悲しいことだが、忘れられているなら思い出せばいいとみちる。
その後、美凪は家出しているでしょ、と言って来た。美凪は寂しそうだと。そして。
「あんな美凪を見るためにみちるは『いた』んじゃない」と、過去形で。
多分みちるがしてあげられることは何もないから、往人が出来ることをしてあげて欲しいと。
みちるは先に帰ってると言って駆けて行く。1人残された往人は聖にとっ捕まった。相変わらず診療室へと強制連行。
母親がここから出て来るのが見えたので、何か判るかも知れないと美凪の家出のことを相談してみた。
聖は、みちるの流産の時に父親が往診して以来、美凪から母親について相談を受けることがちょくちょくあったのだそうだ。だから、彼女の身に起きていることは知っているつもりだと。
それならと往人は聖に突っかかる。娘を忘れてしまうなんて、そんな簡単に出来ることなのかと。
聖は教えてくれた。さっき来ていた母親の話とは、何か大切なものを失くしたということだった。とても、とても必死だったのだそうだ。
夕方の屋上。みちるは、美凪に対してついに言いたいことを吐き出した。無理している。寂しそう。そして、ここが美凪の居場所ではない、と。
美凪はみちるを抱きしめる。
帰り道、みちるは、「あとは往人に任せる」と言ってくれた。
夜。駅舎で往人は美凪に言った。この町を出て行くと。そして----美凪も一緒に、ついて来て欲しいと。
美凪の返事は「はい」だった。
8/9。出発の前に「忘れ物」を取りに行くと言って美凪を連れ出す。辿り着いたのは、美凪の家。縁側で誰かを待ちわびるように空を見上げて、寂しそうに座っている母親を示す。
最後は美凪自身が決めろと促した。
でも往人は心の何処かで期待してる。彼女が自分の居場所に帰ることを。夢から覚めることを。みちるから託されたのはそういうことだと思ったから。
なのに。彼女は……。
(うわあ。いいのかそんな展開で…。)
夜。駅に戻って来た美凪と往人。みちるがその2人の間にいないことは「わかっている」と泣きながら美凪。そして「膝枕をしていただけませんか」と。
何て言うか、あの。
みちるが消えてしまった穴に引きずり込まれてるっぽいというか何というか。
8/10。夏期講習に向かった美凪に「迎えに行くから待っていてくれ」と告げて、往人はただ待ち続けた。夢はまだ終わっていないと信じて。
夕方、みちるは現れた。折角託された想いを叶えてやれなかったと謝る往人に、誰が悪い訳でもないと悲しく笑うみちる。
そしてもう1度言った。夢を覚ましてあげて欲しいと。彼女が悲しむ顔は見たくないから早く行って欲しいと。
そして再びいなくなるみちる。星の砂の小瓶を残して。
振り出した小雨の中を学校へ。屋上で待っていた美凪に小瓶を渡した。みちるに会っていたと告げた。
結局美凪は、自分のいた場所に戻れなかった。そして、みちるを見送ることも出来なかった。彼女がいなくなるのを見るのが嫌だったから。怖かったと美凪は言った。母親と向き合うことも、みちると別れてしまうことも怖かったのだと。
泣き崩れる美凪。その目が往人に向けられている。
…何を期待してる、んだろう。
自分で自分の居場所を決められない人間とは一緒には行けない。往人にそう言われて、美凪は、立ち上がりながら往人を見ていた。そして。
「私を…飛ばせて下さい」と。
言ってしまったらもう戻れない。そう何度も前置きした後で往人は再び彼女に聞いた。一緒に行こうと。美凪は行かせて欲しいと答えた。
そしてまた「膝枕をして下さい」。
往人の答えは。
…うわあ。18禁シーンぶった切るのはいいが、もうちょっと余韻残してあげてよ(笑)。
そしてバス停。2人しかいなくて殆ど貸切状態。
車内で往人は星の砂を取り出した。3人分を一緒に混ぜようかと提案したが、美凪は「もうみちるはいないから」と、みちるの瓶をそっと引っ込めた。
2人分一緒になった小瓶は往人の手の中に。
あいつはこれで良かったかだろうか。と往人が悩んでいるということは、ひょっとして…。
□■□
やっぱりTrueじゃないんだ、
……。
出直して来ます。
分岐点が判り易いのが救いと言えば救いだ。彼女を『居場所』に帰してあげること、ですね。
デートだと言う美凪に嫉妬しないし、寝顔を見たかったとがっくりしている彼女におはようのキスを求めたりもしない。
…で、いいのかな。
あれか。こっちに依存されるような要素=恋愛に持って行ってはいけないということなのね。ああ既に恋愛AVGじゃなくなってるこのゲーム…。
8/9。彼女は、家に戻ることを選んでくれた。母親は、彼女を見てはっきりと「美凪」と呼んだ。彼女の名前を。
夜。みちるがやって来て、美凪のことを頼んでもいいかと訊いて来た。みちるは、もう帰らなければならないのだそうだ。
空にはさみしそうな女の子がいて。みちるは、その子の思い出の詰まった羽を分けてもらったのだ、と。会いたい人に会うために。仲良くなるには思い出が必要だったから。
そして、楽しい思い出をたくさんもらって、みちるは女の子に羽を返しに行くのだと。夢はいつかは覚めなければらないのだから。
みちるは、「この世に生まれて来ることを許してもらえなかった」という言葉を最後に泣き出してしまった。
ただ抱きしめることしか出来ない。泣き止むまで、そこで、ずっと。
8/10。みちるが最後に望んだのは「思い出」。
美凪とみちると3人で、あちこちを歩き回る。川遊び。神社でかくれんぼ。
そして夜は、3人で川の字になって駅で眠った。美凪はちゃんと母にことわりを入れて来たそうだ。
8/11。朝食は往人と美凪の2人で作った。人形芸を見せてあげたりする。
夕方から部活動。一番星を見るために夕日の時間から屋上へ。
星空となった空を見上げながら、美凪は心を清めてくれるようにと星に願いをかけようと言った。でも往人の答えはNoだった。
清めるということは消してしまうことではないのか。みちると過ごした日々さえも。
美凪は呟く。全ては私の罪から始まったことだから。それさえなければ誰も夢など見なくて済んだはずだから。そうすれば…みちるもずっとここにいられた筈だから。
1人屋上を出て行く美凪。残されたみちるに話しかける。美凪は気付いているのかと。みちるは答える。ずっと一緒にいたからと…。
そして、みちるが美凪を苦しめているのかな? とも。
そんなことはないと思うよ。
8/12。美凪は夏期講習。
ふらふら散歩して神社に着いた時、みちるに会う。どうしてここに、と訊くと、もう1人の自分があると答えた。でもそれ以上は何も言おうとしない。
一緒に散歩。駅前に戻って来るが美凪は来ない。
そこでみちるは最後のお願いを。----美凪の夢を、覚ましてあげて欲しいと。そうしなければ前に進めないから。
雨の中、学校の屋上に走る。夜の雨上がりに立つ美凪。
泣きそうな美凪。泣きたいなら泣けばいいと言う往人。でも、ここで自分が泣いたらあの子はいつ泣けばいいのかと、いつもと違って少し激しい語調で美凪は叫んでいた。あの子は、産声さえ上げることが出来なかったのに----。
悲しい夢ばかり見ると美凪。いつも笑いかけてくれる笑顔がそこにいるのに、決して触れることが出来ないという夢。
あいつの目を覚まさせてやろうと往人は言った。そして、美凪は何をしてあげたいのか? と。
美凪の回想。物心ついた時からずっと知っていた羽のついた女の子の絵。それを見ながら、どうして自分に羽がないのかと訊いて母を困らせたりした。
美凪は父の肩車で駅からの帰り道を歩く時、星の中を飛んでいるような気分になっていた。父と一番星を探す競争をしながら帰る道。
妊娠した母は、心配する美凪に「神様から幸せを分けてもらった」と微笑んだ。美凪は、神様に願い事を1つだけするとしたら? という言葉に「妹が欲しい」と答えた。
母は膨らんだお腹に願うように言った。美凪は声に出して願った。
それから毎日、お腹に他愛もないことを話しかけるのが美凪の日課になった。
しかし、母は重度の妊娠中毒症にかかって倒れ、妹は流産してしまう。
その日から母は変わってしまう。『美凪』はいなくなり、『みちる』と呼ばれるようになった。
両親は喧嘩をするようになり、父が家を出た。それでも美凪は父を駅に迎えに行き続けた。いつか帰って来てくれると信じて。
友達が出来ず、1人で駅前でシャボン玉を飛ばして遊ぶ子供になっていた美凪。
そんな日々を過ごしていたある日、みちるが駅前にいた。何故か友達になりたいと思った美凪は、それでも声をかけるきっかけを探せず、みちるにシャボン玉を飛ばして見せることできっかけを作った。
それから2人でシャボン玉を飛ばして遊んだ。また明日と約束をして別れた。
家に戻ったら、羽のついた女の子の絵がなくなっていた。幼い美凪は、それがみちるだったのだと思った。あの羽のついた女の子が、友達になるために絵の中から出で来てくれたのだと。
美凪は、みちるに会わせておきたい人がいると言った。往人にも付き合って欲しいと。
8/13。美凪はみちるに、美凪の家に行こうと言った。みちるは戸惑っていた。それでも3人は一緒に歩いた。美凪の家に。
夕飯時。みちるは食卓につき、戸惑いながらも美凪に促されて自己紹介をする。美凪の母は笑いかけてくれた。いい名前だと。そして、にこやかな食事風景が始まった。母親と、みちると、そして美凪と。
それからもいつもの日常が流れる。
3人の星の砂を1つにする。3人の願う幸せは1つだけだから。
シャボン玉遊びをする3人。うまく出来ないみちると往人。
何度も練習を重ねて、夕焼けにようやくみちるのシャボン玉が飛んだその時、みちるは。
一緒にまた星を見たかったという言葉を残して、作ったシャボン玉ごと消えてしまった。
名前を呼び、探す美凪。でもそこにはみちるはもういない。
でも往人には奇妙な予感があった。美凪を連れて屋上に走る。
フェンスの向こうにみちるはいた。いつもは上げている髪を解いた彼女は何処か美凪と面影が似ている。
みちるは美凪に思い出をありがとうと話し、美凪は、みちるがいなくなったら私は笑えないと泣きそうになっていた。
みちる、美凪は笑っていなくてはダメだと言った。そして、みちる以外の人に対してちゃんと笑えるようになっていると。話を振られた往人も答える。美凪が自分に向けてくれた笑顔は嘘だったのかと。
みちるは往人に言った。探している女の子をちゃんと見つけてあげて欲しいと。きっとその子は待っているからと。悲しい夢を見ながら、空の上で。
そして美凪に言った。ずっと笑っていて欲しいと。笑っている美凪が好きだからと。
美凪はようやく笑顔になった。笑顔で。みちるの望む通り、笑顔でさよならを言った。
そしてみちるの姿は消える。思い出だけを残して。
夏が終わりに近づく頃。往人はみちるとの約束を守るためにまた旅に出ることにした。いつか無邪気に見物してくれた姉妹の口コミのお蔭で、やっとそれなりに芸で稼ぎを出すことが出来たから。
美凪は、父から突然手紙が来たと話してくれた。妹がいるのだそうだ。会いに行くと言っている。「下心あり」だそうです(笑)。
何故なら。その彼女の名前は。
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恋愛AVGだと思ってはいけない、のだな…。やはりそういう次元とは関係なく1つの物語だと思った方がよさげ。
というか…このストーリーってそういう要素全くないですね。美凪とその家族が、長き夢から解放される物語だったんだ…。
不思議だけど、美凪さんが精神的にいきなり大人になったという感じがする。で、実は往人ってただ通りすがっただけで何もしてないというか、一部始終見てただけというか(笑)。往人である必要ないというか、いいタイミングですれ違っただけのお兄さんというか、そんな感じが…。
でも、そのすれ違い加減がいいのかも知れないですね。このシナリオに関しては。
ちゃんと恋愛で終わるノーマルエンドを何気にひどく後味悪くしてあるのもそういう作戦なのかなあと。何となく。
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