アテナ外伝

Act.7 贖罪

夕暮れ時の寺社の境内は、どこか鬱蒼とした気配を漂わせていた。
その片隅、使い古され手入れも行き届いていない納戸小屋で、庵は立ちつくしていた。

"――遅かったじゃねぇか。"

たむろしていた男達が、口元に皮肉めいた笑みを浮かべていた。
どこか殺伐とした男達に囲まれて横たわる少女の姿を認めたとき、庵は完全に言葉を失った。
乱れた長い栗色の髪。
引き裂かれた衣服。
白い肌のあちこちに残る、紅い痣。
ここで何が行われたのか、問うまでもなかった。

"・・・貴様らっ・・・!"

変わり果てた少女の姿に、庵の全身が総毛立つ。

そして―――――

天空に浮かぶ青白き月の下、人ならざるモノの咆吼が轟いた。


空を切る音が、アテナの耳元を掠めた。
艶やかな黒髪が数本、宙を舞う。

「何故?」

何度目か口にした台詞。
それに対する庵の答えが、鋭利な刃物の様な手刀だった。
近間から放たれた一撃をすんでの所でかわしたアテナは、飛びすさって距離をとる。

「何故、闘わなければならないのですか?」

彼女はもう一度、問うた。
徐々に強くなる木漏れ日の下、庵は無言で彼女を見返す。

「・・・貴様は・・・にえだ。」

「え?」

ボソリとこぼされた言葉に、アテナは思わず聞き返す。
しかし次の瞬間、庵の姿は彼女の視界からかき消えていた。

「きゃっ!」

上空から青白き炎を纏った拳が、彼女を襲った。

「・・・オロチに連なる者共は、贄に群がる。」

地に伏したアテナに、降り注ぐ静かな声。

「・・その末路は、無惨なものだ。」

追い打ちとして放たれた蹴りを、彼女は地を転がって避ける。

「・・・だから、死を与える、と?」

庵と距離をとり、ゆっくりと立ち上がるアテナ。
彼女の言葉に、庵はただ沈黙を守る。

「・・・随分と勝手な論理ですよ、それ。」

ゆっくりと構えをとった彼女に、庵は口元に微かな笑みを浮かべる。

「ならば・・・抗って見せるがいい。」

その言葉が紡がれた刹那、庵の姿は再びアテナの視界からかき消えていた。

「破っ」

側面からフック気味に繰り出された庵の鉤爪を、アテナは受け流すと同時に反撃の頂肘を放った。
しかし命中したものの、僅かに急所を逸らされる。
直後、アテナは逆に腕を捕まれていた。

「しまっ・・・」

体を崩されたところへ、腕に紫炎を纏った庵が舞う。
次の瞬間、彼女は青白き炎に包まれていた。

「くっ・・・」

サイコパワーを振り絞り全力防御を行ったお陰で、致命傷にこそならなかったが、ダメージは大きい。
宙を舞う彼女に、庵はさらに追い打ちをかけるべく、突進する。

「・・・フェニックス・アロー!」

背の高い木の幹を足がかりに、彼女は空中で反転、反撃に転じた。

「フン」

――が、庵は難なく彼女の攻撃をかわす。

「きゃっ」

逆に、炎の洗礼を浴びるアテナ。

「・・・どうした、もう終わりか?」

まともに攻撃を喰らい地に伏したアテナを見下ろし、庵は冷たく言い放った。

"・・・強い・・・"

懸命に身体を起こすアテナだったが、思いの外ダメージは大きい。
湿った空気を含んだ風が、頬を撫でていく。
庵の瞳は、相変わらず冷たい色を宿したままだ。
そこには怒りや殺意といった、感情の動きは見えない。
何故、闘うのか?
その疑問は未だ消えていない。
死にたくないから?
庵の身勝手な理屈が許せないから?
どちらも闘う理由には足りないと思える。
だが。
このまま黙って殺される訳にはいかない。
庵の真意を問いただすためには、闘って、勝つしか道はない。

「・・・遊びは、終わりだっ」

地に伏したままのアテナに向けて、庵は猛然とダッシュする。
彼女は反射的に飛びすさり避けようとしたが、ダメージを受けた身体では、その動きは遅すぎた。


身体が、重い。
小刻みに横揺れを繰り返す、暗い空間。
レールの継ぎ目を踏み越えるたびに起こる振動は、定期的に彼女の足下を揺らす。
いつもなら清領学園へ通う生徒達でごった返す地下鉄の車内は、いつになく人気ひとけが無かった。
いや。
数分前までは、確かにいつもと変わらない光景だった。
車内モニタに、先日のディノ・アクアリウムの事故を報じるニュースが流れ、心を痛めたのも先ほどのことだ。
だが。
たった一人の男の企てに、車内は地獄絵図へと変貌していた。
同じ車両に乗っていた生徒達は、他の車両へと逃げまどった。
逃げ遅れた幾人かは、端々で倒れ、気を失っている様だった。

「・・・なぜ・・・こんなことを?」

アテナは乱れた呼吸を整えながら、目の前に佇む不遜な男に問うた。
直後、空を切って男の拳が彼女を襲う。

「!」

避けられる筈がなく、アテナは硬直するだけだった。
が、男の拳は、彼女に届くことは無かった。

「・・・他人ひとの大事なお姫さんに、なにしよんねんっ」

颯爽と・・・というにはいささか三枚目気味に、男の攻撃を受け止めたナイトが一人。

「――椎くん!?」

アテナの驚きの声に、彼女をかばった少年――椎拳崇は、彼女を振り返る。
普通なら、ここで守られた側がときめいたりなんかするものなのだろうが、哀しいかな、クロスした腕で止めたのではなく顔面で敵の攻撃を受け止めたらしく、なんともお間抜けな顔となっていた。

「心配いらへん、アテナは俺が守ったる」

どんな表情かおを浮かべたものか思案するアテナをよそに、拳崇は決め台詞を声高に叫ぶ。

「なんてったって、俺はアテナのナイトやさかいな!!」

――ゴンッ
直後、男の二撃目が拳崇を蹴散らした。

「椎くんっ」

吹っ飛ばされて転がった拳崇に駆け寄るアテナ。
彼は、大の字に仰向けになって気を失っていた。

「―――お友達がまた一人、お前さんの犠牲になったぜ?」

拳崇を抱き起こすアテナの背に、男が揶揄するように言葉を浴びせる。
拳崇の息があることを確認すると、彼を静かに横たえ、ゆっくりと背後を振り返る。
右手の座席から上がった炎の照り返しを受けて、茜色に染まった彼女の顔は、怒りに震えていた。
彼女の視線を受けて、眼前の男は右手をポケットに突っ込んだまま、軽く顎をしゃくり上げ、ニヤリと笑った。

「・・・いい表情かおだぜぇ?」

金色に染め上げられた髪をオールバック気味にまとめた男は、ひどく楽しげに吐き捨てた。

「そうだ・・・もっと憎めよ・・・」

どこか異常ともとれる物言いに、アテナはうすら寒い印象を受ける。
男は、ポケットに突っ込んだままだった右腕をかざした。
その手に握られた、何かのスイッチ。

「もっとだ・・・!」

アテナが誰何の言葉を発する間もなく、男はスイッチを握り込む様に押した。
直後。
背後の車両で、再び火の手が上がった。
ほぼ同時に、生徒ゆうじん達の悲鳴。

「・・・・ヤマザキ・・・っ!!」

怒髪天をつき、アテナは叫ぶ。
急激に彼女の"力"が高まる様を見てとり、男――山崎竜二は、満足げな笑みを浮かべた。


アテナは咄嗟に、目の前の光景を理解出来なかった。
いつ果てるとも知れぬ連撃を、サイコパワーを振り絞り耐えている。
一瞬気を失っていたのだと理解するまでに、さらに4撃をしのぐ時間が必要だった。
庵の攻撃は素早く、かつ防御そのものを切り裂くがごとく鋭かった。
実際、直撃こそないものの、物理的なダメージは殆どそのままアテナへと到達していた。

"昔話に気を取られている場合ではないのに。"

記憶が甦るのは結構なことなのだが。
内心苦笑しつつも、アテナは圧倒的に不利な状況であるにも関わらず、冷静さをまだ残している自分に気づいていた。

「くっ!」

不意にやんだ連撃に続き、頭部を捕まれた刹那、アテナはサイコパワーによるバリアーを頭部へ集中させる。
直後、爆炎が彼女を包んだ。

「・・・ほぅ?」

吹き飛ばされ、地を滑りながらも立ち上がった彼女に、庵は感心した様に眉を上げた。
気を抜けば崩れ落ちそうな膝を気力で奮い立たせ、アテナはまっすぐに庵を見返す。

"・・・あと、一撃。"

恐らく自分に残された力は、あと一撃を放てるぎりぎりであろう。
アテナは、最後のチャンス――カウンターによる一撃に賭けるしか無かった。
そんな彼女の考えを見取ってか、庵は距離をとったまま様子をうかがっている。

「!」

一瞬、アテナの膝が落ちかける。
庵はその隙を見逃さなかった。
一気に間合いを詰める。

"かかった!"

だが、それはアテナの"誘い"だった。
最後の気力を振り絞り、彼女は無数のエネルギー体クリスタル・ビットを放出した。
それらは青白い光を放ちながら、彼女の周囲を立体的に高速で周回する。

"ダメか?"

しかし、庵はすんでのところで踏みとどまっていた。
防御を固めエネルギー体ビットの攻撃に耐えながら、じりじりと距離を詰めてくる。
クリスタルビットの維持が出来なくなった瞬間に、反撃を喰らうことになるだろう。

"・・・どうする?"

通常、最速でのカウンターを狙うなら最も適している技は サイコ ソード だ。
だが、クリスタルビットとサイコソードでは、サイコパワーの使い方が異なる。
技を切り替える為には、新たに"力"を練り直さなければならない。
今この状況で、そんな時間があるとは思えなかった。
なにより、新たな技を形成できるだけの力も残ってはいない。

"・・・ダメかな、これは。"

敗北が死を意味する状況であるにも関わらず、アテナはどこか暢気にひとりごちた。
殺されてあげてもいい。
そんな考えがよぎる。
庵の攻撃は、恐ろしく切れがある。
だが。
どこか駄々っ子の地団駄の様な、投げやりとも必死ともとれる、ちぐはぐさを伴っているのは何故だろう。

"は・ち・す・・・"

失った少女を返せと、姿の似た自分への八つ当たりにも似た、行き場のない憤り・・・なのだろうか。
だが。

"凄いな、アテナは。"

どこか後ろ向きな、彼女の物思いを打ち破るように、不意に思い出された言葉。

"普通はな、"

いつだったか―――、初めてクリスタルシュートを放った後の、拳崇の台詞。

"一度放出してもうた力を、維持したまま別の形へ組み替えることなんて出来へんねん。"

彼は半ば呆れた様に、クリスタルシュートが穿った坑を見つめながら言葉を続けた。

"力っちゅうもんは、放出した瞬間に制御を離れてまうもんやからな。"

せいぜいが、一定の軌道を周回させるのが関の山、なのだそうだ。
アテナのクリスタルビットの様に。
だから、断続的に制御する必要がある場合は、放たずに手元に止め置くのだ、と説明された。

"・・・よっぽど器用なんか、ごっつい力を潜在的に持っとるんか、どっちかやろなぁ。"

椎拳崇。
ともすれば忘れがちになる青年。
恐らくは、自分とは因縁浅からぬ存在。
そもそも彼女の旅は、彼との記憶を取り戻すために始まったようなものだ。
だから―――

まだだ。
まだ終われない。
生きて、彼の元へは戻らなければならないのだから。

アテナには、一度放出した力を組み替えることができるのだと、拳崇は言った。
それなら――
もっともカウンターに適した技、サイコソード。
ビットの力を組み替える技、クリスタルシュート。
そう、それなら、ビットを組み替えてサイコソードを形作れないか。
新たに力を練り直すのではなく。

"・・・やれる?、わたしに。"

ビットを維持できる限界も近い。
もはや迷っている時間はなかった。
防御姿勢のままの庵は、一瞬の隙も見逃してはくれないだろう。
――大丈夫や、アテナなら、な。
何故か、拳崇の姿が脳裏をよぎった。
気休めとも取れる言葉だったが、今の彼女にはそれで充分だった。

"・・・そうだね、拳崇・・・"

周回を続けるビット達を、振りかぶると同時に掌に集中させる。
しかしそれは、クリスタルビットの中断を意味していた。

「そのまま、死ねっ!」

間髪入れず、庵が反撃に転じる。

"・・・間に合え!"

ほぼ同時に、アテナの掌のビット達は、白刃の輝きを放った。

「・・・クリスタル、ソード!!」


ようやく意識を取り戻した少女は、体中に走る痛みに表情かおをしかめながらも、ゆっくりと上体を起こす。

"・・・な・・に?"

戸口から差し込む、ごく僅かな月明かりに照らし出される自分の姿。
変わり果てた自分の様に、少女は一瞬硬直した。
何故、体中が痛むのか。
何故、全裸なのか。
そして。
先ほどまでの記憶が甦ってくる。
身の毛もよだつ、忌まわしい記憶。
吐き気と寒気が同時に彼女を襲う。
耐え難い苦痛が、彼女の精神こころを苛む。
彼女はノロノロとした動作で、引き裂かれた衣服を拾い集め、その身に宛った。
内股を伝う生ぬるいモノに、気が狂いそうになる。
それは自分が汚された証。
震える身体からだをかばう様に、自らを抱く。
救いを求めて彷徨う視線は、やがて薄暗い小屋の外へと向かう。
微かに聞こえる怒声・・・いや、悲鳴だろうか?
彼女はゆっくりと半開きの扉に手をかける。
一時もこの忌まわしい場所には居たくなかった。
だが、外へ出るのも怖い。
再び、声が聞こえた。
同時に、何かが押しつぶされる様な、音。
少女は意を決して、扉を開いた。
いつの間にか月光は雨雲に遮られ、辺りは殆ど見通しが利かぬほど薄暗かった。
だが、そこに広がる異様な光景は、彼女にも知覚できた。
屍。
それは、先ほどまで彼女を嬲っていた男達のなれの果てだった。

「こ・・の・・、化け物・・・っ」

彼女の右手で声があがった。
直後、飛び散る血しぶき。
断末魔の叫びさえ許さずに男を葬った獣。
その姿に、少女はを見開いた。

「・・・庵・・」

男の返り血を浴びた庵は、さらなる獲物を求めて視線を巡らす。
その瞳には、尋常ではない光が宿っていた。
およそ、人間とは思えない、不気味な光。
事実、今の彼には理性というものは欠片も残ってはいなかった。
前傾姿勢―――と言えば聞こえがいいが、要するに猫背――のまま周囲を伺う様は、まさに獣そのもの。
その姿は、少女の記憶にある、ある人物と重なった。

「オロチの・・・血の暴走・・!」

庵の父でもある、先代八神家当主。
その末路は、血の暴走と呼ばれるトランス状態に陥った挙げ句の殺戮。
八神に仕える巫女であった少女は、その様を目の当たりにしていた。

「いけない、庵!」

何故、彼が暴走状態へと突入したのか。
その理由は、分かり切っていた。
今の自分の姿と、屍達が全てを物語っている。

「庵!」

少女の何度目かの呼びかけに、庵はゆっくりと彼女へ向き直った。
そのに宿るは、例外なき殺意。
血の暴走。
その行き着く先は、自らの死。

"・・・わたしのせいだ。"

少女の頬を、雫が伝う。

"わたしがこんなだから、庵は・・・"

獣の咆吼をあげる庵。
その声は、次なる獲物を見つけた喜びに満ちていた。

「ごめん・・・庵・・・」

少女は泣いたままの表情かおで、微笑んだ。

「ごめんね・・・」

全てを受け入れるが如く、獣の前に無防備な姿をさらす。
そして――――
無慈悲な一撃が、彼女を貫いた。


崩れかけていた天候は、もはや回復を見せる気配もなかった。
激しい、雨。
夕暮れ時の時間帯も手伝って、一気に気温が下がっていく。
雨にうたれながら、アテナは立っているのがやっとの状態だった。

「・・・ク、ク、ク・・・」

倒れ伏したままの庵は、忍び笑いを漏らす。

「・・・庵、さん・・・?」

その声は、他人の記憶と思しき光景を見せられていたアテナを、現実の世界へと引き戻した。
忍ぶ笑いは、いつしか大笑いへと変じていく。
駆け寄りたいのだが、身体が言うことをきかない。
そのもどかしさに、アテナは思わず膝をつく。

「?」

不意に止んだ雨に―――いや、止んではいないのだが、アテナの周囲にだけ、雨粒が落ちなくなったのだ――訝しげに振り仰いでみれば、傘をさしかけてくれている人物が居た。

「フジ子さん・・・。」

アテナと視線があうと、彼女は複雑そうな微笑を浮かべた。

「立てる?」

そう言って、肩を貸してくれる。

「ありがとう」

アテナの礼に、フジ子は微笑んだ横顔で応えた。

「・・・笑いに来たのか?」

庵の側まで歩み寄ったところで、彼が自嘲気味に呟いた。

「そうよ。」

戸惑ったアテナをよそに、答えたのはフジ子だった。

「やっぱり、殺されたかったのね?」

「・・・フン」

話の見えないアテナには構わず、フジ子は言葉を続ける。

蓮に似た女の子アテナちゃんに殺されれば、償いになるとでも?」

アテナに傘の持ち手を預けると、反対側の肩を庵へ差し出すフジ子。

「そんなつもりなど」

「あったんでしょ?」

庵の言葉を遮り、フジ子はぴしゃりと決めつけた。
拒む庵には構わず、引き起こす。

「・・・あんたの考えそうなことだわ。」

垣間見えた、庵の過去。
最愛の少女をその手にかけた、苦く、重い記憶。
アテナは先の闘いでの、庵の違和感の原因が見えたような気がした。
彼は、自分に殺されたかったのだ、と。
だから、必死にならざるを得ない状況を作ったのではないだろうか。
彼にとって、そうすることがはちすへの贖罪だったのだ。
どんな理由があったにせよ、例えそれが事故であったのだとしても、蓮を殺めた事実には変わりがない。
そのことが、庵の心に重い十字架となっていた。
その重荷から解放されるすべは、ただひとつ。
はちすに殺してもらうこと。
これこそが、彼がアテナに拘った理由なのだろう。

フジ子の言葉に、庵は何も答えない。
雨は激しさを増し、全てを洗い流すかの如く叩き付ける。

「・・・庵さん。」

雨音にかき消されそうなアテナの声に、それでも庵は反応を示した。

「贄とは・・・オロチとは、なんですか?」

アテナが抱いていた庵への拘り。
その原点ともいえる疑問を、彼女は口にした。
もは誤魔化される理由もないだろう。
庵は―――、観念したように、微苦笑を浮かべた。
そのには、いつかの優しい光が宿っていた。


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ACT.8

ひとこと