41回詩人会議新人賞・作品紹介
詩部門佳作
りょう 城

富山県高岡市生まれ。東京都在住。作詞もします。


受賞のことば

 何心なく応募した作品に賞をいただき、驚いています。
 今は第三次思春期で、自分も含めた人間にとても興味があります。あるきながら想いを攪拌し、産みたくなったら立ち止まって産む。そんな単純で生理的なやり方で書いています。
 よんどころなく書いた詩が、手を離れ、人に読まれることで形となり、自分のもとへ返ってくることを本当にしあわせにおもいます。これから自分の詩がどう変化していくのか楽しみです。ありがとうございました。




りょう 城


ワタシは体を持つので
電車の座席ひとり分を占めることができる

他人の目にも
ワタシは人間に映るらしく
 「大人一枚」といってお金を出せば
チケットだって買える

工事現場を横切るとき
係の人はクレーンを止めて
ワタシを通してくれる

引力に逆らって
重い買い物袋を持ち 歩きまわる

体を持ちたくないと強く願う心は
限りある体の なかに宿る

ワタシは何度でも空を見上げる
それは脳のスクリーンに映し出される
かぎられた物質からできた
脳のその奥の
かぎ型の月のオレンジ色の端から
新しく生まれおちる

                                    




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