受賞のことば
まいにちのなかの、ほんとになんでもないような一瞬。
たとえば五時間目が数学の木曜日とか。早口で喋る先生を、頬づえついてながめて。
大人はあたしたちが想像もできないような薄い空気の中で生きているんだろう。
未発達な呼吸器管を精一杯広げて、あたしたちはただ、ケースの中で、酸素を与えられているにすぎない。
そうして透明に泳いで。見える空に焦がれたりして。群れて、生臭くなって、生臭さに慣れて、水色がいつか空色になって、そして死んでいくんだろう。
しとしと。
あたしたちサカナ。その証拠に今日は雨だって降ってる。
ガラスの向こうの空はどう見たって灰色。
だから、
(あたしたちサカナ)
――そんなことを思ったんだ。
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