幅広い層の中から、浮かび上がった表現
葵生川玲

第38回詩人会議新人賞の応募は、昨年より増えて540名、評論5名となった。第一次選考の作業には、選考委員のほかに、小森香子、秋村宏、鈴木太郎、南浜伊作、青井耿子、赤木比佐子江の6名が加わりました。

 第一次選考通過作品は、91編、評論部門は、2編でした。

 年代別内訳は、10代・17名、20代・11名、30代・15名、40代・16名、50代・16名、60代・11名、70代・7名で各年代が突出することなく、ほぼ平均していることがわかり、しかも、最も数が多いのは10代で、新人賞としては今後に希望の持てる傾向だと思います。

 詩部門は、第二次、第三次、第四次、と進み、さらに第五次、第六次通過五名の中から入選作品は、美和澪「つづれさせ こおろぎ」に、佳作第一席には高井俊宏「父」、第二席には、山田よう「虚構の中へ」。ジュニア賞には、11歳の廣中奈美「ミラーハウス」が決定しました。

 美和澪さんは76歳ですが作詩歴も長く、母に寄せた思いと歴史的な豊かな表現力とを一体化させて、深い作品は世界を作り上げていることが選考委員の評価を集めたと思われます。 

 佳作の高井俊宏くんは14歳、第35回新人賞では11歳でジュニア小を受賞していて今回の作品は、父と母そして自分との関係をしっかり捉え、表現に深められていて感心するものでした。

 佳作の、山田ようさんは、日常の暮らしから離れ、劇団の稽古場に向かう車の中、信号待ちの間に自身を変身させていく様を、前向きな表現の中に出していて力強い作品になっています。

 ジュニア賞の廣中奈美さんはミラーの家で感じた不思議な感覚を作品化していて、さらに心に響く体感のような思いも伝えることが出来ています。

 その他、第六次まで残って、選考委員の評価があつまって、惜しいと思ったのが、浅田杏子「チチチリ テテッチョ キィウーイ」、葛原りょう「もう僕は眠れない」、草倉哲夫「ギリシャ文字」、塚井善久「橋上」、中川泰郎「ポマト」の各作品でした。

評論部門は、二編が第一次通過で、そのうち一編が第二次通過となった。現実の詩的課題に大胆に切り込むものが欲しいと感じました。


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