第1巻

第1章

「ナイミシャの森の聖仙達」

祈願(1-3)


シャウナカをはじめとする賢者達は、有名な吟頌詩人スータ(=ウグラシュラヴァス)に質問します。

(1)我々は、宇宙が生まれ、それを保ち、それが帰趨するところの超越的な実在(神)について瞑想します。 なぜなら、彼は存在する全てのものに変わることなく存在し、非実在ではありません 。 彼は自己意識であり、自ら光り輝くものです。そして(まさしくその最初の予言者である)ブラフマーに、意志するだけで、最も偉大な賢者でさえ学び難いヴェーダ (Vedas) を啓示したのです。サットヴァ (純質) 、ラジャス (激質) とタマス (翳質)という3種の要素から成り立っている創造は彼の中で行われ、その創造は幻のように非現実的ですが、(その根底にある実在のために)真であるように見えます。 それは、まさに(炎の要素である)太陽の光線が(蜃気楼で)水と間違えられ、水が大地に、大地が水に間違えられるようなものです。そして彼は、自ら光り輝くものとしての栄光によって、マーヤー(幻)を常に超越しているのです。

(2)偉大な賢者ヴェーダ・ヴィヤーサによって作り出されたこれほど輝かしいバーガヴァタ の中では、その至高の宗教(バーガヴァタ・ダルマと呼ばれる宗教、または神への崇拝)が語られています。それは(解脱のための願望も含めて)あらゆる願望の自己欺瞞からは完全に解き放たれています。
それのみならず、悪意から自由となった聖者だけが知ることができ、至高の至福を授けるものであり、三種からなる苦しみ(1.肉体の苦しみ2.自然の働きがもたらす苦しみ、そして、3.他者から与えられる苦しみ)を除くものである絶対の実在が詳しく説かれています。 とはいえ、神が他の方法によって速やかに人の心に捕えられえるかどうかは疑わしいのです。この物語が朗読されるのを聞きたいと強く望んでいる祝福された人々によって、神は直ちにとらえられるのです。

聖仙達は近づいてスータに質問をする(4-11)

(3)おお、神の喜びを味わうことができる汝ら信者よ。シュリーマッド・バーガヴァタはヴェーダ (Veda) の願望をもたらす木の実(本質)であって、オウムのような賢者シュカデーヴァの口からこの世にもたらされ、最上の至福の蜜でいっぱいです。それは(果物の皮や種子、あるいは他の余分な物質のない)純粋な甘さです。意識がある限り、繰り返してこの神のネクターを飲み続けてください。

(4)昔々、ヴィシュヌ神 に捧げられた土地であるナイミシャの森で、シャウナカと他の聖仙達は、天上でで歌われ信者の住居である主 (Lord) を実感するために、千年にわたって、大いなる祭を執り行いました。

(5)ある朝、聖仙達は、神聖な炎に供物を注いで、スータに彼らの敬意を捧げました。 そして彼が席に着くと、聖仙達は、恭しくは彼に次の質問をしました。

(6)聖仙達は語りました:
おお、罪の無いスータよ。あなたは、法典と同様に、すべてのプラーナとイティハーサ (歴史) を学び詳述なさいました。

(7-9)ヴェーダ の知者の間でもっとも高名な聖者であられるバーダラーヤナ(=ヴェーダ・ヴィヤーサ)や神の限定された相と絶対の相を共に悟っている他の賢者達が知っている全てのことを、正直で純粋な心を持つあなたは彼らの恩寵によって、真に知っていらっしゃいます。 なぜなら師は、最愛の生徒に最も深遠な秘密さえ打ち明けるからです。 おお、幸多きスータよ 、願わくば、最高の善き人々のために、信頼ができる易しい道を、あらゆる聖典の学習を通して理解したところから私達にお話下さい。

(10)おお 、神聖な集いの誉れである人よ。このカリ期(末法の時代)において、多くの人は命短く、(神を求め歩む気持ちにおいて)怠惰であり、理解力に乏しく、不幸せであり、病気や他の不幸に見舞われています。

(11)また聖典は多数あり、一つの修行のみが述べられてるわけではなく、むしろ多くの実践と儀式が述べられている始末です。その上、それらは部分から部分へと耳を傾けねばなりません。 従って、慈悲深きお方よ、あなたの大いなる洞察力で、これらの聖典の精髄を信仰に満ちている我々にお話下さい。そうすれば我々の心は静かに落ち着くことでしょう。

聖仙達の五つの質問(12-23)

(12)スータよ。あなたに神の祝福があらんことを。あなたは 、ヴァスデーヴァ (クリシュナの父) の妻であるデーヴァキーに、信者の守護者である聖なる主がお生まれになった目的と理由をご存知です。

(13)親愛なるスータよ。どうかそれを説き明かし給え。なぜならば、主は、命有るもの全ての守護と繁栄のためにこの地上に降臨されたからです。

( l4 )もし生死の恐ろしい渦に巻き込まれた人が彼の御名を口にするなら、速やかに救い出されます。なぜならば、恐怖それ自体が、主を恐れているからなのです。

(15)スータよ。主の御足のもとに避難して、完全なる平安にとどまる聖者は、彼らと交際する人々を直ちに浄化します。それに反して、天空の河(ガンジス河)は長きにわたって沐浴して初めて、ただ心を清めるだけです。

(16)自分の魂を浄化することを望み、聖なる名声ある聖者によって称揚されている神聖なる主の栄光を聞くのを拒否する人がいるでしょうか? と言うのも、このような栄光はカリ期の不純を拭い去るものだからです。

(17)敬意に満ちあふれている我々に、遊び戯れて様々な姿をとる主の高貴な行いを話聞かせ給え。その行為は(ナーラダ仙と他の)予言者達によって歌われたものです。

(18)おお、 賢者スータよ。ヨーガマーヤー(神の潜在力)によって思うがままに様々な戯れを演じる、かの全能の主の降臨に纏わる神聖な物語を語ってください。

(19 )素晴らしい主の偉業を聞き飽きることはありません。それは甘美なるものを味わう能力を持っている聞き手にとって、聞くことこそが喜びなのです。

(20)まさに、人間に化身した聖(シュリー)・クリシュナは、彼の兄、シュリー・バララーマと共に人間の能力を越えた偉業を行いました。

(21)カリ期の到来を知って、我々は集い、長期にわたる供犠祭を通してシュリー・ヴィシュヌ神 に神聖な瞑想を捧げました。それによってシュリー・ハリ(=ヴィシュヌ)の物語を聞くための十分な時間を得ました。

(22)このカリ期は人々の心の純粋さを奪い去ってしまいます。それで克服することが難しいのです。我々はこのカリ期を乗り越えられるかどうか不安にかられます。神の思し召しによってあなたと私達は出会いました。ちょうど荒れ狂う大海原を渡ろうとしている人々の前に現れた案内人のようなものです。

(23)ヨーガの師であり、ブラフマンの友人で美徳の保護者であるシュリー・クリシュナが(天上の)彼の住居を出発しました。正義が誰に保護を求めたのか、さあ我々にお話下さい。