「そう、例えばひとつの運動体、或いは理念に向ってそれを実現しようとする集団であって
もいい。これらの集団が、当初は理念を前提としながらも、それがやがてはその集団を守
ることが一義的になる理由を考えてみたことがある? つまりは擬似化といっても構わな
いのだけれど、事象がやがてはそう転化する理由を。うん、連合赤軍でも、全共闘でも構
わない、花田くん、真面目に考えたことがある? 擬似化というのは、まぁ一種の家族にも
似た集合体と考えてもいいのだけれど」
昨日、私に一通の社内メールが届いた。それは社内メールで、私はその方と一面識もな
い方である。そのメールには、私のHPを読んでくださっているということ。あなた(=花田)が
普段は温厚であり、滅多に怒るなどということはしないこと。しかしながら、あなたがHPとい
う公開の場であれほどの怒りを示した背景を考えたということ。その上で、ぜひ話を聞いて
みたい、急なことだけれど出張があるので、今日の夜、小一時間でも話ができれば。内容
はそういうものだった。その方と社内とはいえ、名刺交換したあと、その方は私に冒頭記し
たような問いかけをした。私が怒らないというのは、誰かがそう評したことを聞いたのかも
しれない。
「そのPatioの主宰者は年齢幾つ?」
「確か、私と一回り、年齢が違いますから、昭和23年か24年ですか」
「大学は?」
私は知っていることをそのまま答えた。
「なるほど、学部は違えど同じ大学、同じ学年だね」
そう言って、私の前に座っている先輩は、苦笑した。そして、冒頭のような質問を私に投
げかけたのである。
私は、すぐにその質問に答えることができなかった。当たり前である。そういう時代背景を
文献で読むことはあっても、私は、その時々にWAKEI氏が述べることを信じた。少なくとも
信じたいと思ったからである。
「君は利用されたんだよ。少なくともそのWAKEIたる人物にとって、君はそのとき必要な人
物だったんだね。僕は、こうして君と会う前から、君とWAKEI氏の議論を読んできた。君と
WAKEI氏の間には深くて長い河がある。君が教えてくれたのでよりはっきりしたが、昭和
24年であれ、23年であれ、全共闘〜戦後民主主義世代のしたたかさを君はわからなか
ったんだね」
「理念を実現するためには、根幹に共有する思想こそが問われる。戦後民主主義世代
の傾向として、それらをすっ飛ばして、理念による結びつきを求める、それは嘘なんだ
よ。あの世代、すなわち自分もそうであるけれど、我々は思想的に信じるものを重視す
る最後の世代なんだな。それがなければやっていけないことは、おそらく君以上にその
WAKEI氏という人物はよくわかっていたはず。この世代は、右も左も、最後には『理念よ
り集団の維持と秩序』を尊重する傾向が強い。当時の左翼組織は皆、そうだった。花田
さんの主張など、彼にとっては青臭い、そして鬱陶しい邪魔なものでしかなかったと思う
よ」「だから、左に残された道は必然としての敗北しかなかった。それはゼロじゃない、
マイナスだったんだよ」
「そんなものですか」
私はぼおっとして、そう返した。
「理念に背くなら背く。それ自体は、実は必ずしも悪いとは言えない。そこにはそれなりの
理由もある。しかし、理念に背いた理由がどういうものなのか。「何故、背いたかということ
を」この世代の人々は概ね説明しない。実は、それが今日のいわゆる「左」の弱さに直結
しているんだ」
「理念で人が動くわけはないということを、身にしみて知っている世代だからね」
そう言って、私の先輩は二ヤっと笑った。それで充分だったかもしれない。
そんな話を終えて、あとは社内の話になった。それはここに書くことではない。
とはいえ、不思議と恨むとか暴れるという感情はない。ひたすらに自分の未熟を思い知
るというだけのことである。
ここから話は変わる。
いやしみ氏に関して、もう随分昔の記憶でしかそれはないのだが「氏は(苺)など読んで
いないよ。そういうネット環境を氏は構築していない」という趣旨の発言を、それこそ私
は苺ちゃんねるの「えふしそ板」だったかで読んだ記憶がある。別に疑問に感じること
はなかった。そんなものかなと思ってもいた。
昨今、氏は氏なりに「奇跡の詩人」関係の文献を色々と調べているようである。しかし
ながら、氏はこれに限らず、いわゆる文献の出処というものを、以前から、私が知る限
りFSHISOに示したことがない。旧紫野氏が、どこに書いていたのかと問うても、知らぬ
存ぜぬである。もし、この人が「インターネット」の様々なURLを読める環境にあるにも
かかわらず、それを開示しない、自分はインターネットなど読めない、まして苺など読め
るはずもなければ書き込めるはずもないという消極的な意思表示が、こういう類のこと
だというのであれば、まぁ、ある意味始末の悪い話という他はない。
これで突っ掛られた「わっと」氏は、その点においては実に悲劇ということになる。
普通、あれだけ意思表示を示せば、そういう者へRESなどつけないものだが、この人の
場合は違うのかもしれない。不思議な感覚である。とはいえ、私は既に壊れている者を
更に壊すなどという趣味は毛頭ないし、それほど暇でもないというのが正直な心境でも
ある。
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