2ちゃんねるの管理人、西村博之氏より、今回の「動物病院訴訟」の東京地裁判決文
について情報を頂戴した。今日は、その一部を紹介してみたい。
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3 争点及びこれに関する当事者の主張
(1) 被告の削除義務違反の有無
【原告らの主張】
ア 本件1,2の発言及び本件掲示板内の各掲示板における本件1,2の発言と同一
の文言(以下,一括して「本件各発言」という。)は,原告らの経営体制,施設,診療態度
,診療方針等に関し,事実に反し,原告らの社会的評価を低下させるものであり,原告
らに対する名誉毀損に当たる。
イ 被告は,本件掲示板を設置・運営し,その内容・システムについて管理している者
であり,本件掲示板上の発言を削除する権限を有している。
被告は,IPアドレスを原則として保存しないことを約束し,本件掲示板が,完全に匿
名の掲示板であり,発言を書き込んだ者が誰であるかを特定することが困難又は不可
能であることを保証している。また,被告は,本件掲示板において,「気兼ねなく,会社,
学校,座敷牢からアクセスできるように,発信元は一切分かりません。お気楽ご気楽に
書き込んで下さい。」と発言し,違法行為を誘発している。このような被告の行為により,
本件掲示板において,名誉毀損等の違法な発言がなされ,損害が生じ得べき危険状態
が惹起されたといえる。
そして,実際に,平成13年には,本件掲示板に日本生命保険相互会社の従業員を誹
謗中傷する書き込みがなされたため,同社は,被告に対し発言の削除を求める仮処分
を東京地方裁判所に申し立て,同裁判所は,同年8月28日,被告に対し,発言の削除
を命じる仮処分決定をしていること,また,同年に起きた西鉄高速バスジャック事件に
おいては,逮捕された少年が,本件掲示板において犯行予告をしていたことなどから,
被告は,本件掲示板において上記のような違法な発言がなされる危険性について認識
していたといえる。
ウ よって,被告は,本件掲示板において違法な発言がなされないように最大限の注意
を払い,然るべき措置を講じ,違法な発言がなされた場合にはこれを直ちに発見して,
違法な発言を削除するなどして損害の発生拡大を防止すべき条理上の義務を負ってい
るというべきである。
しかるに,被告は,これらの義務に違反し,本件各発言を発見し削除することを怠った。
【被告の主張】
ア 本件掲示板における情報は,当該情報の公共性,公益目的,真実性の有無が不明
な段階では,他人の権利を侵害する違法な情報であるか否かも不明であり,このような
場合には,被告において削除義務を負うとはいえない。そして,本件各発言についても,
その内容が真実であるか否かは不明であり,原告らの権利を侵害する違法な発言かど
うかも不明であるから,被告は本件各発言の削除義務を負わない。なお,「削除依頼@
2ch掲示板」において「削除の最終責任は管理人にあります」との記載があるが,これは
,削除した場合の責任についてのものであり,削除義務の根拠とはならない。
イ 原告らは,被告が本件掲示板において匿名性を保証していること,被告自ら違法
な発言を助長していることなどをもって先行行為とし,被告はこれに基づき条理上の損
害防止義務を負うと主張するが,匿名による発言も表現の自由の一環として保障され
るべきであり,匿名による発言の場を提供することを先行行為ということはできない。
また,被告は,本件掲示板において違法な発言を助長してはいない。
ウ 被告は,本件掲示板上の発言について,物理的には削除できるが,投稿者の表
現の自由等との関係で,法的に自由に削除できる訳ではない。
平成13年11月30日,特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発
信者情報の開示に関する法律(以下「プロバイダー責任法」という。)が公布され,同法
は,同日から起算して6か月を超えない範囲内において政令で定める日に施行されるこ
ととなっている。
プロバイダー責任法にいう「特定電気通信役務提供者」には,電子掲示板の管理者
も含まれるため,被告も「特定電気通信役務提供者」(以下「プロバイダー等」という。)と
して,同法の適用を受けることになり,施行後は,本件についても同法が適用されるもの
と解される。
プロバイダー責任法は,プロバイダー等の責任を明確化し,他人の権利を侵害する
情報の流通に対して迅速かつ適切な対応を期待するものとして制定されたものである。
そして,同法によると,プロバイダー等は,違法可能性情報の存在を認識した場合には
,違法可能性情報により他人の権利が侵害されているかどうかを判断する必要があり
(3条1項),かつ,違法可能性情報を削除する場合には,違法可能性情報によって他
人の権利が不当に侵害されていると信じるに足りる相当の理由があること,すなわち,
違法可能性情報に違法性阻却事由をうかがわせる事情のないことが必要である(3条
2項)ところ,本件においてそのような事情のないことは認められない。
このようなプロバイダー責任法の制定経緯,規制範囲等に照らすと,被告が本件
各発言を削除しなかったことにつき削除義務違反はなく,不法行為は成立しない。
(2) 被告によるその他の不法行為
【原告らの主張】
ア 被告は,本件各発言を削除するなどの措置を講じないまま放置するだけでなく,
原告Bが本件掲示板において削除を依頼する旨の書き込みをしたのに対し,削除依頼
の方法が間違っているなどとして,インターネット及びコンピューターに不慣れな原告Bを
嘲笑い,原告Bに対し,更に深い精神的苦痛を与えた。
イ 原告らが本件訴訟を提起した後,被告はその発行するメールマガジンにおいて本
件訴訟の内容を公開した。これにより,原告らに対する更なる中傷発言が誘発され,ま
た,原告Aに対し,多数の無言電話及び脅迫電話がされるようになるなど,原告らに対
する損害が拡大した。
【被告の主張】
被告が,本件1,2の発言を削除していないこと,メールマガジンにおいて本件訴訟
に関する記載をしたことは認めるが,その余の原告らの主張は否認する。
憲法は裁判の公開を制度的に保障しているから(憲法82条),本件訴訟に関する情
報を公開することは何ら禁止されるべきものではない。
(3) 原告らの損害
【原告らの主張】
原告Bは,獣医であり,獣医学会でも評価の高い著明な存在であるところ,本件各
発言により,社会的地位,獣医としての評価を傷つけられ,多大な精神的苦痛を被っ
た。また,原告Aは,小規模の動物病院であるものの,その治療方針,医療技術等が
評価され,日本各地から多数の飼主が来院しているところ,本件各発言により,動物
病院としての社会的地位・評価を傷つけられ,経営上の損害を受けた。
本件各発言の中には,原告らを極端に揶揄,愚弄,嘲笑,蔑視するものが多いこ
とからすれば,原告らの損害額は,通常の場合よりも高額となってしかるべきであり,
原告らが本件各発言により被った損害は,各250万円を下らない。
【被告の主張】
原告らの主張は争う。
(4) 本件各発言の削除を求めることの可否
【原告らの主張】
原告らは,民法723条又は人格権としての名誉権に基づき,本件各発言の削除
を求める。
【被告の主張】
原告らの主張は争う。
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第3 当裁判所の判断
1 認定事実について
(1) 本件掲示板の概要
本件掲示板は,被告が開設し運営しているインターネット上の電子掲示板であり,
何人でも使用料等を支払うことなく,本件掲示板を閲覧し書き込みをするなどして利用す
ることができ,本件訴訟提起時においては,1日当たり約80万件の書き込みがあった。
本件掲示板の利用者が,本件掲示板において書き込みをする際には,氏名,メール
アドレス,ユーザーID等を記載する必要はなく,また,被告は,発言者が本件掲示板に書
き込み等をする際に電子掲示板の運営者である被告において把握することができるIPア
ドレス等の接続情報を原則として保存していない。そして,被告は,本件掲示板の「使い
方&注意」と題するページにおいて,「気兼ねなく,会社,学校,座敷牢からアクセスでき
るように,発信元は一切分かりません。お気楽ご気楽に書き込んで下さい。」と記載し,
本件掲示板の利用者の情報が一切秘匿されていることを強調している。
本件掲示板には,平成13年9月の時点において,特定のテーマごとに個別の掲示
板が約330種類存在し,各掲示板には,個別の話題ごとに数百個のスレッドが存在して
おり,各スレッドに書き込まれた発言は,日時の古い順に1から番号が付けられている。
利用者は,各掲示板の各スレッドに書き込まれた発言を閲覧することができるほか,既
存のスレッドにおいて発言を書き込んだり,新しくスレッドを作って発言を書き込むことが
できる。
(乙1,3,7,8)
(2) 本件掲示板における発言の削除方法等
ア 本件掲示板における発言は,「削除人」ないし「削除屋」(以下「削除人」という。)
と呼称される利用者によって削除される場合がある。削除人は,いわゆるボランティア
であって,それを業とする者ではなく,後記の削除ガイドラインに従って本件掲示板にお
ける発言を削除することができるが,削除すべき義務や,削除をし,又は,しなかったこ
とについて責任を負わないものとされている。本件掲示板の「いろいろな決まり」と題す
るページ中の「削除する人の心得」と題する項目には,本件掲示板の全責任は「管理人
たる被告」が負い,削除人が行った削除等の行為についても,被告が責任を負う旨記載
されている。また,「削除依頼@2ch掲示板」において「削除の最終責任は管理人にありま
す」との記載がある。
削除人になろうとする者は,その旨を被告に対し電子メールの送信により連絡し,
被告が適任であると判断した者を削除人に任命し,登録することとされており,現在,約
180人の削除人が存在する。
イ 被告は,本件掲示板内の「いろいろな決まり」と題するページにおいて,削除人が
削除する場合の基準として,「削除ガイドライン」を定めている。
上記ガイドラインによると,電話番号,地域・人種等に関する差別的発言,連続して
なされた発言,重複して作られたスレッド,過度に性的で下品な発言,著作物に当たるデ
ータの存在する場所のURLの書き込み,宣伝を目的としたURLの書き込み等が削除対
象とされている。また,個人に関する発言については,対象となる個人を,「一群 政治家
・芸能人・プロ活動をしている人物・有罪判決の出た犯罪者」,「二類 板の趣旨に関係す
る職業で責任問題の発生する人物 著作物or創作物or活動を販売または提供して対価
を得ている人物 外部になんらかの被害を与えた事象の当事者」,「三種 上記2つに当
てはまらない全ての人物」の3種に定義して分類した上,「個人名・住所・所属」に関する
書き込みは,「一群:公開されているもの・情報価値があるもの・公益性が有るもの・等は
削除しません。削除の可否は管理人が判断します。」,「二類:外部から確認できない・責
任や事象に無関係な情報は削除対象です。公開されたインターネットサイト・全国的マス
メディア・電話帳で確認できる・等,隠されていない情報については削除しません。」,「三
種:趣旨説明も公益性も無い・誹謗中傷の個人特定が目的である・等の場合は削除対象
になります。」と記載され,誹謗中傷の書き込みについては,「一群:管理人裁定の無い
限り削除しません。」,「二類:公益性が有り板の趣旨に則した事象・直接の関係者や被
害者による事実関係の記述・等が含まれたものは削除しません。」,「三種:個人を特定
する情報を伴っているものは全て削除対象です。」と記載されている。また,法人に関す
る書き込みについては,「社会・出来事カテゴリ内では,批判・誹謗中傷,インターネット
内で公開されている情報,インターネット外のデータソースが不明確なもの,は全て放置
です。その他のカテゴリ内では,掲示板の趣旨に関係があり,客観的な問題提起がある
・公益性のある情報を含む・その法人・企業が外部になんらかの影響を与える事件に関
係している・等の場合は放置です。」などと記載されている。
また,被告は,上記ページ内の「削除依頼の注意」と題する項目において,本件掲
示板における発言の削除を求める場合の方法について定めており,本件掲示板内の「
削除依頼掲示板」において,削除を求める発言がなされたスレッドのURL,削除を求め
る発言のレス番号,削除を求める理由等を記載したスレッドを作るなどして,削除を求
めることが必要とされ,このような方法に従わない削除依頼は無視される可能性がある
旨を記載している。
(甲3,6,乙1,2,7,8)
(3) 本件1,2の発言の書き込みとその後の原告らの対応等
ア 平成13年1月14日,本件掲示板内の「ペット大好き掲示板」において,匿名の者に
より,本件1のスレッドが作られ,同スレッドにおいて,同月16日から同年6月8日にか
けて,いずれも複数の匿名の者により,本件1の発言が書き込まれた。また,同年6月
11日,上記と同様に匿名の者により,本件2のスレッドが作られ,同スレッドにおいて,
同日から同年9月21日にかけて,いずれも複数の匿名の者により,本件2の発言が書
き込まれた。
イ 本件1のスレッドは,診療態度,診療技術等に問題のある動物病院を挙げて批
判することを建前として作られたものと解されるが,スレッドを作った者の発言内容は,
「悪徳動物病院をこの世から滅殺しよう!!。pにある某動物救急病院!あそこはちょ
っとテレビでとりあげられたからといって調子にのっている!!動物の命よりもまず「金
」を請求します。」というものであり,その表現からして,およそ相当の根拠を持って事実
を摘示して病院を批判する内容のものではなく,特定の動物病院に対し侮蔑的な表現
をもって誹謗中傷するものにすぎない。そして,その後,本件1のスレッドには,動物病
院や獣医を誹謗中傷する発言が多数なされ,その中には,動物病院の病院名や所在
場所を特定して誹謗中傷する発言や,病院名の一部を仮名にしてあるものの,その所
在場所等から病院名を容易に特定することができる発言も多く存在した。
ウ 原告Bは,インターネットに不慣れであり,本件掲示板において発言を書き込み
,閲覧するなどして利用した経験もなかったところ,平成13年5月ころ,本件掲示板に
原告らに関する本件1の発言が書き込まれていることを友人から聞かされて知り,同月
22日,同月25日及び同月28日に,本件掲示板の削除依頼掲示板にスレッドを作って
,原告らの名誉を毀損する発言の削除を求めた。しかし,原告Bがインターネットに不慣
れであり,本件掲示板を利用したことがなかったことなどから,本件掲示板内に記載され
ていた削除依頼の方法に従ったものではなかった。そして,上記削除依頼にもかかわら
ず,一部は削除されたが,大部分は削除されず,かえって,本件1のスレッド及び削除依
頼掲示板内のスレッドにおいて,原告Bによる上記削除依頼を揶揄・侮辱する発言が書
き込まれた。
エ 原告らは,平成13年7月18日,本件訴訟を提起し,同年9月19日に第1回口
頭弁論期日が開かれたが,その後,被告は,「a動物病院裁判報告の第1回です。」な
どと記載した上,本件第1回口頭弁論期日における原告ら代理人と被告代理人との間
のやりとり等について記載したメールマガジン(以下「本件メールマガジン」という。)を発
行した(被告は,不定期でメールマガジンを発行しており,購読者数は,平成13年9月
の時点において,約7万人存在した。)。
オ 本件1,2のスレッドの各URLは,当初,それぞれ(略)及び(略)であったが,平
成14年4月ころまでには,本件掲示板内の「ペット大好き掲示板」の「過去ログ倉庫」へ
データが移動され,それぞれ(略)及び(略)へと変更された。
カ 本件訴訟の係属後,本件掲示板内の「法律勉強相談掲示板」において,「a動物
病院vsひろゆき」と題するスレッド(本件3のスレッド)が,「イベント企画掲示板」におい
て「ひろゆきまた裁判−」と題するスレッドがそれぞれ作られ,原告らが被告に対し本件
訴訟を提起したことが話題とされた。そして,本件3のスレッドの番号93には,本件1の
発言の番号662,682,683及び812の各文言と同一の文言(本件3の発言)が書き
込まれており,また,「ひろゆきまた裁判−」と題するスレッドには,本件1のスレッドのU
RL(略)が記載されリンクが貼られるなどしている。
(甲1,2,9ないし12,21,22,27,乙1,3ないし6,弁論の全趣旨)
2 争点(1)(被告の削除義務違反の有無)について
(1) 被告の削除義務
ア 前記1で認定した事実及び前記第2の2(5)の事実によれば,次のようにいうことがで
きる。
(ア) 被告は,本件掲示板を設置し,本件掲示板上の発言を削除する際の基準,削除
依頼の方法等について定めるなどして,本件掲示板を運営・管理している。そして,本件
掲示板においては,削除人は削除ガイドラインに従って発言を削除することができる旨が
定められているところ,削除人は被告によって適任であると判断された者が任命されてい
るのであるから,被告は当然に本件掲示板における発言を削除する権限を有していると
認められる。
(イ) 本件掲示板において他人の名誉を毀損する発言がなされた場合,名誉を毀損され
た者は,その発言を自ら削除することはできず,本件掲示板において定められた一定の
方法に従って,本件掲示板内の「削除依頼掲示板」においてスレッドを作って書き込みを
するなどして発言の削除を求め,削除人によって削除されるのを待つほかない。
被告が定めた削除ガイドラインは,個人に関する書き込みについて,個人の性質に応
じて3種類に定義して分類した上,発言の内容について,「個人名・住所・所属」に関する発
言,誹謗中傷発言等に分けて,上記各分類ごとに削除するか否かの基準を定めているが
,そもそも個人の性質に関する3種類の定義が不明確である上,各分類ごとの削除する
か否かの基準も不明確であるほか,管理人である被告の判断に委ねている部分も存在
する。また,法人に関する発言の削除の基準についても,電話番号を除き,削除されない
場合についてしか定められておらず,削除されない場合についても,その内容は不明確
である。結局,本件掲示板の削除ガイドラインは,その表現が全体として極めてあいまい,
不明確であり,個人又は法人を誹謗中傷する発言がいかなる場合に削除されるのかを予
測することは困難であるといえる。
このように,削除人が削除する際の基準とされている削除ガイドラインの内容が不明確
であり,しかも,削除人は,それを業としないボランティアにすぎないことから,本件掲示
板における発言によって名誉を毀損された者が,所定の方式に従って発言の削除を求
めても,必ずしも削除人によって削除されるとは限らない。
(ウ) 本件掲示板においては,管理者である被告において,利用者のIPアドレス等の接
続情報を原則として保存せず,その旨を明示していることにより,匿名で利用することが
可能であり,利用者が意図しない限り,利用者の氏名,住所,メールアドレス等が公表さ
れることはない。したがって,本件掲示板における発言によって名誉を毀損された者が,
匿名で名誉を毀損する発言をした者の氏名等を特定し,その責任を追及することは極め
て困難である反面,発言者は,自らの責任を問われることなく,他人の権利を侵害する発
言を書き込むことが可能である。そして,このような匿名で利用できる電子掲示板におい
ては,他人の権利を侵害する発言が数多く書き込まれることが容易に推測され,証拠(甲
1,2,21)によれば,現に,本件1,2のスレッドに限っても,原告らのほかに,多くの動物
病院,獣医等の名誉を毀損する発言が書き込まれていることが認められる。
(エ) 本件掲示板は,約330種類のカテゴリーに分かれており,1日約80万件の書き込み
があること,削除人はそれを業とする者ではないいわゆるボランティアであることからする
と,被告が本件掲示板において他人の権利を侵害する発言が書き込まれているかどうか
を常時監視し,削除の要否を検討することは事実上不可能であった。
イ 以上のような諸事情を考慮すると,被告は,遅くとも本件掲示板において他人の名誉
を毀損する発言がなされたことを知り,又は,知り得た場合には,直ちに削除するなどの措
置を講ずべき条理上の義務を負っているものというべきである。
ウ この点につき,被告は,本件掲示板における発言の公共性,公益目的,真実性等が
明らかでない場合には,削除義務を負わないと主張する。
ところで,事実を摘示しての名誉毀損にあっては,その行為が公共の利害に関する事
実に係り,かつ,その目的が専ら公益を図ることにあった場合に,摘示された事実がその
重要な部分について真実であることの証明があったときには,上記行為には違法性がなく
,仮に上記事実が真実であることの証明がないときにも,行為者において上記事実を真実
と信ずるについて相当の理由があれば,その故意又は過失は否定され,また,ある事実
を基礎としての意見ないし論評の表明による名誉毀損にあっては,その行為が公共の利
害に関する事実に係り,かつ,その目的が専ら公益を図ることにあった場合に,上記意
見ないし論評の前提としている事実が重要な部分について真実であることの証明があっ
たときには,人身攻撃に及ぶなど意見ないし論評としての域を逸脱したものでない限り,
上記行為は違法性を欠くものとされ,上記意見ないし論評の前提としている事実が真実
であることの証明がないときにも,行為者において上記事実を真実と信ずるについて相
当の理由があれば,その故意又は過失は否定されると解されている(最高裁平成6年
(オ)第978号同9年9月9日第三小法廷判決・民集51巻8号3804ページ参照。以下
,合わせて「真実性の抗弁,相当性の抗弁」という。)。
被告の主張は,被告において上記の真実性の抗弁,相当性の抗弁について主張・
立証責任を負うことはなく,むしろ原告らにおいて反対の事実を主張・立証することを要
求するものと解される。
しかしながら,本件掲示板における発言によって名誉権等の権利を侵害された者は
,前記のとおり,被告が,利用者のIPアドレス等の接続情報を原則として保存していない
から,当該発言者を特定して責任を追及することが事実上不可能であり,しかも,被告
が定めた削除ガイドラインもあいまい,不明確であり,また,他に本件掲示板において
違法な発言を防止するための適切な措置を講じているものとも認められないから,設置
・運営・管理している被告の責任を追及するほかないのであって,このような被告を相手
方とする訴訟において,発言の公共性,目的の公益性及び真実性が存在しないことを削
除を求める者が立証しない限り削除を請求できないのでは,被害者が被害の回復を図
る方途が著しく狭められ,公平を失する結果となる。
このことからすれば,本件において,本件各発言に関する真実性の抗弁,相当性の
抗弁についての主張・立証責任は,管理者である被告に存するものと解すべきであり,
本件各発言の公共性,公益目的,真実性等が明らかではないことを理由に,削除義務
の負担を免れることはできないというべきである。
よって,この点に関する被告の主張を採用することはできない。
エ また,被告は,この点に関連して,匿名の発言も表現の自由の一環として保障され
るべきであり,匿名による発言の場を提供していることを先行行為として条理上作為義
務を認めることは許されないとも主張する。
しかし,表現の自由といえども絶対無制約のものではなく,正当な理由なく他人の名誉
を毀損することが許されないのは当然であり,このことは匿名による発言であっても何ら
異なるところではない。しかも,被告は,本件掲示板について,IPアドレス等の利用者の
情報を一切保存していないので,本件掲示板にいったん掲示された発言については事
実上被告以外に管理者はいないから,被告が管理者としてその責任を負担するのは当
然というべきであり,被告の上記主張は採用することができない。
(2) 以上を前提に,被告が本件各発言を削除しなかったことが上記削除義務の違反
に当たるかどうかについて以下検討する。
ア 本件1の発言の番号16,32,35,36,96,427,457,623,662,669,6
78,682,683,685,686,696,761,765,772,773,788,811ないし813,
815,817,826,828ないし831,833,848,874ないし876,882,912,918,
921,922,925,929,930の各発言,本件2の発言の番号6ないし8,10,23,29
7,308,312,320,344,605,711,712,791,792,801の各発言は,いずれ
も,「悪徳動物病院告発スレッド!!」又は「悪徳動物病院告発スレッド−Part2−」という
題のスレッドの下で,原告らあるいは原告A又は原告Bのいずれかの名前を挙げ,又は,
原告らの名前の一部を伏字等にするものの,原告らを指し示すことが容易に推測される
文言を記載した上,「ブラックリスト」,「過剰診療,誤診,詐欺,知ったかぶり」,「えげつな
い病院」(本件1の発言の番号16,32,35,36,96),「ヤブ(やぶ)医者」(本件1の発
言の番号678,811,882,本件2の発言の番号792),「A’」(本件1の発言の番号7
73,912,918,921,925,929,本件2の発言の番号711),「精神異常」(本件1の
発言の番号427,848,),「精神病院に通っている」(本件1の発言の番号812,本件2
の発言の番号801),「動物実験はやめて下さい。」(本件1の発言の番号623),「テン
パー」(本件1の発言の番号669),「責任感のかけらも無い」(本件1の発言の番号682)
,「不潔」(本件1の発言の番号683,761),「氏ね(死ねという意味)」(本件1の発言の番
号685),「被害者友の会」(本件1の発言の番号696,761,788,930,本件2の発言
の番号23),「腐敗臭」(本件1の発言の番号696,788),「ホント酷い所だ」(本件1の発
言の番号815),「ずる賢い」(本件1の発言の番号817),「臭い」(本件1の発言の番号8
26)などと侮辱的な表現を用いて誹謗中傷する内容であり,原告らの社会的評価を低下
させるものであることは明らかである。
また,本件1の発言の番号18,425,664,677,697,789,814,823,919,92
0の各発言は,その発言自体には原告らを特定する文言はないものの,本件1のスレッド
の他の発言と併せ読めば,これらの発言がいずれも原告らに向けられていることは,そ
の内容に照らし明らかであり,原告らの社会的評価を低下させるものであるといえる。
さらに,本件3の発言は,本件1の発言の番号662,682,683,812の各文言と同一
の文言が書き込まれたものであり,これも原告らの社会的評価を低下させるものである。
したがって,上記各発言(本件1の発言〈番号764,872を除く。〉,本件2の発言,本件
3の発言。以下「本件各名誉毀損発言」という。)は,原告らの名誉を毀損するものという
べきである。
なお,原告Aは,動物病院の経営等を目的とする有限会社であるところ,本件各名誉毀
損発言は,いずれも悪徳動物病院の告発を目的とするスレッドにおいて,原告Aの経営
体制,施設等を誹謗中傷するとともに,代表者・獣医である原告Bの診療態度,診療方
針,能力,人格等をも誹謗中傷するものであり,原告Aと原告Bの両名に対して向けら
れ,原告らの社会的評価を低下させるものというべきである。
イ 以上に対し,本件1の発言の番号764,872の各発言については,これを本件1,2
のスレッドの各スレッド名及び他の発言と併せ読んでも,いずれも原告らの社会的評価を
低下させる内容のものということはできず,原告らに対する名誉毀損には当たらない。
ウ そして,前記第2の2(3)記載のとおり,原告Aは,被告に対し,平成13年6月21日付
けの通知書をもって発言の削除を求め,同通知書は,同月22日,被告に到達したから,
これにより,被告は,本件各名誉毀損発言のうち,本件1の発言の番号16,18,32,3
5,36,96,425,427,457,662,664,669,677,678,682,683,686,6
96,697,761,765,772,773,788,789,811ないし815,817,823,826
,828ないし831,833,848,874ないし876,882,912,918ないし922,925,
929,930の各発言並びに本件2の発言の番号6ないし8,10,23の各発言について,
本件掲示板に書き込まれたことを具体的に知ったものと認められる。また,原告らは,本
件訴状の別紙発言目録1において,上記通知書で削除を求めた発言の他に,本件1の発
言の番号623,685の各発言についても削除を求め,本件訴状は平成13年8月4日,
被告に送達されたので,被告は,同日までに,上記各発言が本件掲示板に書き込まれた
ことを具体的に知ったものと認められる。さらに,本件3の発言が記載された甲第9号証
は,平成13年11月5日に被告代理人が受領し,同月7日の本件第2回口頭弁論期日
に提出されたから,被告は,同日までに,本件3の発言が書き込まれたことを具体的に
知ったものと認められる。また,原告らは,平成14年1月30日付け「請求の趣旨訂正
申立書」において,被告に対し,本件2の発言の番号297,308,312,320,344,
605,711,712,791,792,801の各発言の削除を求め,同申立書は,同日,被
告に送達されたので,被告は,同日までに,上記各発言が本件掲示板に書き込まれた
ことを具体的に知ったものと認められる。
エ しかるに,被告は,前記のとおり,本件口頭弁論終結時である平成14年4月17日
においても,本件各名誉毀損発言を削除するなどの措置を講じていないのであるから,
被告には作為義務違反が認められ,原告らに対する不法行為が成立する。
オ なお,被告は,本件にはプロバイダー責任法が適用され,同法の制定経緯,規制範
囲等に照らすと,被告が本件各発言を削除しなかったことにつき削除義務違反はないと
主張する。
プロバイダー責任法は,平成13年11月30日に公布され,本件口頭弁論終結後の平成
14年5月27日に施行されたことは,当裁判所に顕著な事実であり,本件に直ちに適用さ
れるものではないが,その趣旨は十分に尊重すべきであるところ,同法は,3条1項にお
いて,特定電気通信による情報の流通により他人の権利が侵害されたときは,プロバイ
ダー等は,権利を侵害した情報の不特定の者に対する送信を防止する措置を講ずるこ
とが技術的に可能な場合であって,当該プロバイダー等が当該特定電気通信による情
報の流通によって他人の権利が侵害されていることを知っていたとき,又は,当該プロ
バイダー等が,当該特定電気通信による情報の流通を知っていた場合であって,当該
電気通信による情報の流通によって他人の権利が侵害されていることを知ることがで
きたと認めるに足りる相当の理由があるときでなければ,当該プロバイダー等が当該
権利を侵害した情報の発信者である場合を除き損害賠償責任を負担しない旨定めて
いる。
しかしながら,被告は,前記のとおり,本件掲示板上の発言を削除することが技術的
に可能である上,通知書,本件訴状,請求の趣旨訂正申立書等により,本件1ないし
3のスレッドにおいて原告らの名誉を毀損する本件各名誉毀損発言が書き込まれた
ことを知っていたのであり,これにより原告らの名誉権が侵害されていることを認識し
,又は,認識し得たのであるから,プロバイダー責任法3条1項に照らしても,これによ
り責任を免れる場合には当たらないというべきである。
3 争点(2)(被告によるその他の不法行為)について
(1) 原告らは,被告は,原告Bが本件掲示板において発言の削除を求めたのに対し
,削除依頼の方法が間違っているなどとして原告Bを嘲笑ったなどと主張するが,前記の
とおり,原告Bの削除依頼に対し揶揄・侮辱する発言が書き込まれたことは認められるが
,被告がそれらの発言を書き込んだことを認めるに足りる証拠はなく,原告らの主張は理
由がない。
(2) また,原告らは,被告がその発行するメールマガジンにおいて本件訴訟の内容を
公開したため,原告らに対する更なる中傷発言が誘発され無言電話等がなされたなどと
主張する。
証拠(甲10,21,24,27)によれば,本件訴訟の提起後も本件掲示板において
原告らを誹謗中傷する発言がなされていたことが認められ,また,原告Aに対し無言電
話が多数回かかってきたことがうかがわれる。しかし,本件メールマガジンには本件第1
回口頭弁論期日における両当事者の発言等について記載されているにすぎず,原告ら
に対する誹謗中傷に当たる記載,あるいは,原告らに対する中傷や嫌がらせを誘発す
る記載は認められないことからすれば,被告が本件メールマガジンを発行したことが原
告らに対する不法行為を構成するものということはできない。よって,この点に関する原
告らの主張も理由がない。
4 争点(3)(原告らの損害)について
(1) 本件各名誉毀損発言については,その内容が真実であることを認めるに足りる証
拠はないし,専ら公益を図る目的のためになされたものであることを認めるに足りる証
拠もない。そして,本件各名誉毀損発言において用いられている表現には,「ヤブ医者
」,「精神異常」,「動物実験」,「氏ね(死ね)」,「臭い」などと激烈かつ侮蔑的なものが
多数含まれている。
本件掲示板は,誰でも自由に閲覧することができ,極めて多数の利用者がある著名
な電子掲示板であり,本件掲示板内の「ペット大好き掲示板」における本件1,2のスレ
ッド及び「法律勉強相談掲示板」における本件3のスレッドに書き込まれた本件各名誉
毀損発言は,動物病院の利用者,獣医等を含む不特定多数の者が認識し得るもので
あり,その影響は大きい。しかも,被告は,原告らが通知書や本件訴状等をもって本
件各名誉毀損発言の削除を求めた後も,現在に至るまでこれに応じて削除することが
なく,本件各名誉毀損発言が書き込まれた本件1ないし3のスレッドは,現在も,本件
掲示板に存在しており,不特定多数の者が閲覧し得る状態に置かれている。
原告Bは,昭和58年に動物病院を開業し,現在まで,原告Aの代表者・動物病院の
院長として動物病院を経営し,獣医として診療を行い,日本獣医学会,日本臨床獣医
学会等にいくつかの論文を発表しており,そのため,上記動物病院は,日本各地から
多数の飼主が訪れる病院であること(甲27ないし32)からすれば,本件掲示板に本件
各名誉毀損発言が存在し続け,現在まで不特定多数の者の閲覧し得る状況に置かれ
ていることは,原告Bに多大な精神的苦痛を与えたほか,原告Aの経営にも相当の影
響を及ぼすものと認められる。
(2) 以上のような諸般の事情に鑑みれば,本件各名誉毀損発言がなされた時点にお
いて,電子掲示板を運用・管理する者が掲示板上の発言を削除する際の指標となるべ
き法令等が存在しなかったこと,本件各名誉毀損発言の書き込みをしたのは,複数人
と思われる匿名の者であり,被告自身が本件各名誉毀損発言の書き込みに直接関与
したものとは認められないことなどの事情を考慮しても,被告が本件各名誉毀損発言を
削除するなどの措置をとらなかったことにより,原告らが被った精神的損害,経営上の
損害は,各200万円を下らないものと認めるのが相当である。
5 争点(4)(本件各発言の削除を求めることの可否)について
(1) 人の品性,徳行,名声,信用等の人格的価値について社会から受ける客観的
評価である名誉を違法に侵害された者は,損害賠償及び名誉回復のための処分を求
めることができるほか,人格権としての名誉権に基づき,加害者に対し,現に行われて
いる侵害行為を排除し,又は将来生ずべき侵害を予防するため,侵害行為の差止め
を求めることができる場合がある(最高裁昭和56年(オ)第609号同61年6月11日大
法廷判決・民集40巻4号872ページ参照)。
(2) そして,前記のとおり,被告が本件各名誉毀損発言を削除するなどの措置を講
じなかった行為は,原告らの名誉を毀損する不法行為を構成するのであり,これに加え
,本件各名誉毀損発言の内容は,真実と認めるに足りず,その表現も極めて侮辱的な
ものであり,獣医である原告Bの受けた精神的苦痛の程度は大きかったものと認めら
れ,原告Bの経営する原告Aもその経営に相当の影響を受けたものと認められ,さらに
本件各名誉毀損発言が削除されない限り,原告らに継続して損害が生じると予想され
ること,被告は,通知書,本件訴状及び請求の趣旨訂正申立書において本件各名誉毀
損発言の削除を求められた後も,これに応じて削除をすることはなく,本件各名誉毀損
発言は現在も本件掲示板に存在し,不特定多数人の閲覧し得る状態に置かれているこ
と,本件各名誉毀損発言を削除すべきものとしても,その内容及び匿名で発言している
ことに照らし,発言者が被る不利益は少なく,また,被告が被る不利益も少ないといえる
ことなどの諸事情を考慮すると,原告らは,それぞれ,人格権としての名誉権に基づき,
被告に対し,本件各名誉毀損発言の削除を求めることができるものというべきである。
(3) 以上に対し,本件1の発言の番号764,872の各発言については,前記2(2)イ
のとおり,原告らの名誉を毀損するものとは認められないから,これらの発言の削除を
求めることはできない。
(4) また,原告らは,被告に対し,本件掲示板内の各掲示板における本件1,2の発
言と同一の文言の削除を求めており,その趣旨は必ずしも明らかではないものの,現に
書き込まれている名誉毀損発言の削除を求めているものと解される。
そして,前記のとおり,本件3の発言(本件3のスレッドの番号93の文言)につい
ては,人格権としての名誉権に基づき,削除を求めることができると解するのが相当で
ある。しかし,上記以外には,本件掲示板内のいずれかの掲示板に本件1,2の発言と
同一の文言が書き込まれていることを認めるに足りる証拠はなく,上記以外の発言の
削除を求めることはできないというほかない。
仮に,原告らの請求が,将来生ずべき侵害の予防として削除を求めているとして
も,本件記録中に本件掲示板内の各掲示板に本件各名誉毀損発言と同一の文言が記
載される具体的なおそれがあるものと認めるに足りる証拠はないから,本件掲示板内の
各掲示板において本件各名誉毀損発言と同一の文言の削除を求めることはできない。
(5) なお,原告らは,民法723条を根拠としても本件各発言の削除を求めているが,同
様に,本件各名誉毀損発言以外の各文言の削除を認めることはできない。
6 結論
以上によれば,原告らの請求は,各200万円及びこれに対する訴状送達の日の翌
日であることが記録上明らかな平成13年8月5日から支払済みまで民法所定の年5分
の割合による遅延損害金の支払並びに本件各名誉毀損発言の削除を求める限度で理
由があるから認容し,その余は理由がないから棄却することとして,主文のとおり判決す
る。なお,削除請求及び訴訟費用の仮執行宣言については,相当でないから付さないこ
ととする。
東京地方裁判所民事第24部
(平成14年6月26日 東京地方裁判所 平成13年(ワ)第15125号 損害賠償等請求事件)
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私の実家も「猫」を飼っている。もう10年以上も前のことになるが、迷い込んできた雑種の
子猫であった。以来、ホームドクターとしての「獣医」をみつけ、定期的な検診と予防接種
を受けている。診療費用だけみると、他の病院より高額のようである。ドイツ製の薬をよく
使う先生である。しかし名医であることは疑う余地がない。少々の病気は一発で治る。
それは、飼主にとっては何より幸せなことであり、安心感の対価と考えれば、実家ではそ
れを不満とは感じないようである。あんなに甘やかしては、名医がついても最後は肥満で
死んでしまうと私は思っているのだが、それはともかくとして。
私も途中から、このスレッドはウオッチしていた。素朴な感想としては「例えば患者さんや
一般の人々が、これだけをみて果たして信じるに値する情報とこれを解釈するかどうか」
ということである。それこそ一般人の感性に照らせば、首を捻らざるをえないネタともいう
べき発言が相当数あった。慣れないとというと変な言い方だが、まぁ最初にあんなものを
見せられると愕然とするという心情は理解できなくもない。
私は「自分の名誉」というのは、できるだけ他者の権利を侵害することなく「守る」という
スタンスをとる。なまじ削除などすると「火に油を注ぐ」ことになるからだ。
この判決を読むと、とにかく「俺の名誉は傷ついた」と言えば、大部分が削除対象となる
ような印象を覚えるのである。例えば、不慣れを克服して、ご自身の病院のHPでも開設
して、まずきちんと説明をする。それは不公平であるとは私はあまり考えない。事実や真
実を伝えるために、自分の名誉は自分で守るために、より効果的な方法はなかったのか
なぁと思う。2CHの匿名発言で、社会的評価など本当に落ちるものだろうか。経験上、私
はそれはちょっと信じられないのだが。
さて、今日は7月10日。このHPを開設してから1年が経過した。正直、これほどの読者に
恵まれ、このHPが縁で知り合うことが出来ることがあるなどと想像もできなかった。
WAKEIさんから、途中、思いもしなかった出来事も経験させていただいたが、とにかく直球
以外の球種を使うことなく、対峙できたことは、よかったと思っている。この年齢になると、
妙なやましさを背負いたくないという思いが強くなっていった。
今後は、もう少し更新頻度を高めていきたいと思う。
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