さて、時は流れて昭和の御代、そのころ、『上田に嶽行有り』と人びとに言われた、木曽御嶽行者「嶽行」と言う者が居りました。この者成人するや、才を表し行者仲間で苦行・荒行とされる行をことごとく納め、近隣霊場へ先達となり、人々を導いておりました。

 さて、さて、上田城築城三百五十年の年のこと、なんと人々の夢枕に再び白へびの霊が現われて、こう言われた。
『私は、太郎山の山ふところに松尾宇蛇の神と祀られし白へび、参る者も無くなって久しい。再び世に出たならば人々の願いを聞きとどけよう。』と、
いく人もの者が同じ夢を見るとは、また不思議な事が有ればあったりと、山に分け入って見ると、なんとも、草木がおい茂り北も南も分かりません。
人々は先へも進めず困りはて、ついついあきらめて戻ってしまいました。

 そんな話を耳にするや嶽行行者は、白装束に身を固め『さっそく行ってみましょう』と、皆を引き連れ山に向かったのでした。
 
ふもとに着くと行者は、印をを結びなにやら呪文をとなえ始めると山の奥へ、奥へと入って行くのでした。
その足の速いこと、後に続く者等は無我夢中、必死に付いていくのでした。「不思議なものだ、本当にこの山はこの前来た山であろうか?今日は誰ぞに引き寄せられる様に、奥へ、奥へと、入っていける。」皆がそんな事を思った時です、行者の足がぴたりと止まりました。
 見ると、行者の行く手をはばむかの様に一本の大木が横たわっているではありませんか。と、行者の呪文の声が、気合いと共に大きく変わったかっと思うと、なんと大粒の雨とヒョウが、ドットたたき付けてきました。逃げまどう皆をしりめに、行者の声はなおもたかく、九字を切り気合いを入れれば、答えるかのように雷鳴がとどろき、稲妻がはしり、激しく雨がたたきつけるのでした。

 「いやいや、ひどい通り雨であった」と、雨が上がりふと気が付くと、そこにはまだ印を結び呪文を唱える行者の姿がありました。しかし、良く見ると倒れていたはずの木が消えているではありませんか。
なんとまあ、それは大きなへびだったのです。

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