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さて大工さん『今日はなんとも大変な一日だった。』と、家につく頃にはもう薄暗くなっていました。
いつもと変わりなく家の玄関を開けたとたん、いような気配に背中がゾク、ゾクっとするのです。そして、中に入ろうと敷居をまたごうとしたその時です。
土間に何か、何か白いものが、『何だろう何か二つ赤く小さなものが、ひかっている?・・』大工さんが目をこらし、ジーッと見つめたその瞬間『アっ!』と大きな声を上げるや、飛び上がって腰を抜かしました。『ヘッ、ヘッ、ヘビだ!』なんとあの白へび、白へびのくびです。まっ赤な目を見開いてこっちをジーと見ているのです。
大きな声に驚いて近所の衆が、「なんだ、なんだ」と駆けつけて、大工さんの指差す先をのぞきこむと・・
いや、なにもいません。しかし、水オケをひっくり返した様に土間がビショビショにぬれていたそうです。
その日の夜から大工さんは、高熱を出して七日七晩ねこんでしまいました。
白へびの亡霊がいくどとなく夢の中に現れては消えていきました。そして、最後に現れたとき、こう語ったのです。
『ああ、うらめしや、うらめしや、私が人にからみついたのは悪かった。そして、そのために首を切り落とされて苦しみ死んだのも自業自得、しかしなぜ、おまえは、私の死体をさらし物にしてはずかしめた。この恨み消せるものではない。おまえの子孫七代までも盲目にしてやる。』と呪い、『城の見える水の清き渓谷に私を祭るべし。』と言い残し消えたのでした。
また、時を同じくして、城下一帯に原因不明の疫病がはやり、人々が次から次ぎえと病に倒れていきました。すると、『これは、あの白へびのタタリだ。』と、もっぱらのうわさとなり、そこでお殿様は『白へびの霊を鎮めよ』と、白へびの霊に『松尾宇蛇』と名を与え、大工さんに命令して、ていちょうにまつらせたそうです。
はたしてそれ以来、疫病もおさまり、藩は益々栄えたと言うことです。
しかし、きのどくしたのは大工さんの一家、代々子供の中に盲目の者が生まれると言う事です。また、弘化二年四月十日の夜、下房山町の大火のため、家も家財道具も、大切な文書も無くしてしまったそうです。
この時焼けてしまった古文書が残っていたなら、もう少し詳しく白蛇さんのお話しができるのに、残念ですね。