立花暉夫先生講演(3)
 このようにサルコイドーシスは全身に変化をきたす可能性がある病気ですので、 あるところに変化が見つかった場合でも全身を調べる必要があると思います。

 次に検査の話をします。まず、胸のレントゲン写真が肝心です。胸の写真を撮る場合は、 正面だけではなく側面を撮ると肺門リンパ節が腫れているのがよくわかります。それと寝ころんで 断層写真を撮るとさらに詳しくわかります。最近はCTが使えるようになりましたが、 普通の写真ではわからなくてもCTで調べると肺門リンパ節が腫れていたり、肺に陰があることが よくわかる場合があります。胸の写真は病気が発見されてから1年ないし2年は毎月撮るように しています。胸の写真を診る場合、合併症のある場合がありますので、肺結核や肺ガンの有無、 カビによる真菌症がないかどうかを調べます。当初は肺門リンパ節の腫れだけであったものに 肺の陰が加わり、次に肺の陰だけになって5年ないし10年が経過すると、カビによる病気が 出てくる場合があります。胸の写真の他には、頻度は少ないですが、骨に異常がないかどうか両手、 両足の骨の写真をとることにしています。関節の場合も写真を撮ります。ただし、関節の場合は 組織を採って検査する必要があります。次にCTによる検査ですが、脳のCT検査によってかたまりが 見つかることがあります。激しい頭痛がある場合はいろんな病気が疑われますので、すぐに サルコイドーシスを疑うというわけにはいきませんが、尿ほう症の場合には、CTで脳を調べると かたまりが見つかることがあります。しかし、それは治療をすると治ります。腹部のCT検査は、 肝臓や脾臓、腎臓の変化が見つかります。お腹の中のリンパ腺が腫れているのが見つかることも あります。非常にまれですが、合併症として肝臓ガンや胆嚢ガンがあったりもします。肝臓の入り口 のところを肝門と言いますが、そこのリンパ腺が腫れて、肝臓ガンを疑われて、手術をしてはじめて サルコイドーシスによる変化であるという事が解った例もあります。膵臓の近くのリンパ節が腫れる こともあります。頻度は低いですが、このようにおなかのリンパ腺が腫れることもあるわけです。

 次に、心電図による検査です。一般に心電図は非常に短い時間しかとりませんが、少し長く 1分間とるとか、あるいは24時間、心電図をとると詳しいことが解ります。さらに超音波検査で 心臓の動きを調べることが出来ます。サルコイドーシスによる病変があると心臓の動きが鈍ります。 問題は、初めて心電図をとった時に、何の異常もない場合でも、しばらく様子をみてから、もう一度 検査すると変化が見つかる場合がありますので注意する必要があります。

 次に血液検査です。血液検査で何を調べるかと言うと、まず赤血球、白血球、血小板などです。 赤血球の数によって貧血かどうかを調べます。赤血球、白血球、血小板が減少している場合は、脾臓に 変化があるはずです。脾臓に問題があると、皮下出血があったり血尿が出たりすることがあります。 脾臓の病変が重症になると、手術して脾臓を摘出しなければならなくなります。次に肝機能の検査ですが、 肝機能が悪い方は非常に少ないのですが、ウイルス性の肝炎が合併症として出る場合があります。 次に腎機能の検査ですが、これは血液検査と合わせて尿検査をしてタンパク尿があるがどうかなどを 調べます。腎機能が低下すると透析を受けなければならなくなります。次に膵機能を調べます。 膵機能が悪い方は非常にまれです。外人の方の場合には血液中のカルシウムの値が非常に高くなること がありますが、日本人の場合はきわめてまれです。1万人中数人おられるかどうかというぐらいです。 それから、免疫グロブリンというタンパク質の値を調べます。およそ3分の1ぐらいの方が、この値が 高くなられます。次に血糖値を調べて、合併症として糖尿病がないかどうか調べます。サルコイドーシスと 糖尿病が関係が深いという事ではなく、一般に糖尿病は多い病気ですので、糖尿病にかかっていないか どうか調べるわけです。

 胃腸の病変は非常に数が少ないですが、その場合は検便をします。 超音波の検査は、心臓や肝臓、筋肉の検査に使います。

 昔から行われている方法にツベルクリン反応による検査があります。約8割の方が陰性ないし 疑陽性になります。日本人は8割の方がツベルクリン反応は陽性になりますので、陰性または疑陽性 になる場合は、ツベルクリン反応が減弱していると考えられます。このツベルクリン反応の陰性 ないし疑陽性は、サルコイドーシスの病気が良くなっても陽性になることはなく、陰性、疑陽性が 数年続くことがあります。昔は肺門リンパ節が腫れて、ツベルクリン反応が陰性の場合は、ほぼサルコイドーシスに 間違いないと考えていました。1970年代になって、ACEという値が肺に病変のあるサルコイドーシスの 患者のうち、約6割が高くなっていることが解りました。病気が良くなるとこの値は正常に戻ります。 正常値は21以下です。肺門リンパ節などの病変がありますと、そのサルコイドーシスの病変から ACEを血液中に出しているということが解っています。ですから病巣の量がACEの高い低いに影響するわけです。 目や皮膚の病変だけの場合は、病巣が小さいのでACEの値はあまり高くなりません。病気が良くなって、 再び悪くなるという場合には、ACEの値が低くなっていたのに、再び高くなりますので、病気の活動性のめやすになります。

 次に、組織検査です。リンパ節の腫れた部分を一部取って検査するとサルコイドーシスの 組織があるかどうか解ります。リンパ節の場合は簡単ですが、心臓の組織も取る事が出来ます。 筋肉や胃などの場合も組織を取って顕微鏡で検査が出来ます。

 次に呼吸機能の検査です。呼吸機能の悪い方は比較的少ないのですが、合併症として 気管支ぜんそくのある方がおられますので、検査するわけです。最近は、動脈血を採って、酸素の濃度が 低くないかという事を調べます。動脈の血液中に酸素の量がどれくらいあるかによって、肺の機能に異常が ないか調べるのです。  検査の事をいろいろお話しましたが、毎月行った方がよいのは胸の写真です。20代の方で目や皮膚に異常がない場合 は約2年で8割の方が良くなります。

 40才以上の方は、5年から10年続く場合が多いので、胸の写真は毎月撮り、 心電図を1年に1、2回とる必要があります。血液検査も毎月する必要はありませんが、 1年に1、2回行います。ACEは、発病当初1、2年は毎月調べた方がよいと思います。 特に、ACEの値が高い方は毎月検査して、治療の参考にします。ツベルクリン反応は 発病当初と良くなってからの2回ぐらいで良い思います。

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