立花暉夫先生講演(4)
 これまでは、サルコイドーシス(以下サ症と略す)の患者さんの症状や検査の話をさせていただきましたので、次にその経過についてお話します。

 集団検診でサ症が発見された場合の方が自覚症状があって発見された場合よりも経過は良好です。

 はじめにもお話しましたように、昭和30年頃よりサ症に取り組んでまいりましたが、患者さんによってその経過もさまざまに異なります。ある男子高校生の場合は、集団検診でサ症が発見されたのですが、その高校生が医者に行くのがいやだと言ってなかなか来ないのです。気になって、1年くらい経過してから病院に呼び出して胸の写真を撮ってみると、全く正常になっていたのです。このように幸せな場合は、何もしないで治っている場合もありますが、20才代の男性で心臓に病変が及んで、命を亡くしている方もおられますので、自然に治る場合があるからといって、この病気をあなどってはいけないと思います。自覚症状が無くてもやはり全身にいろいろな変化がある病気ですから、気をつけなければなりません。

 子供の場合は、一般に経過は良好です。しかし、大阪の女子中学生で肺門リンパ節の腫れが10年間続き、その後肺に陰がたくさん出来たというケースもあります。その方の場合は、何年か後に結婚され、妊娠したと同時に肺の陰が消え、分娩後少し悪化しましたが、その後良くなられました。このように、中学生で見つかっても10年以上異常が続く場合もありますので、少児だからといって必ずしも安心は出来ません。

 20代の方の場合は、目、皮膚に変化がないという条件だと2年で8割の方が胸の写真が良くなります。40代以上の方の場合は、5〜10年を経て胸の写真が良くなる率は約50%です。胸の写真で肺門リンパ節が腫れているぐらいのことでは別段どうということはありません。しかし、肺野に陰があったり、葡萄膜炎があったり、皮膚に赤い斑点が出ているような場合には、治り方が遅くなります。

 女性でサ症の方が妊娠した場合、中絶する必要は全くありません。妊娠すると、肺門リンパ節の腫れは消えてなくなります。分娩後もそのまま良くなります。

 ですから、若い未婚の方で集団検診で見つかった場合には、早く妊娠してくださいと冗談を言ったりするぐらいです。ところが、肺門リンパ節に肺野の陰がともなう場合はほとんどの場合、分娩後悪化します。妊娠するとどうして良くなるかと言うと、胎盤から出るホルモンがサ症を治すのに役だっているらしいのです。

 妊娠月数が進むと同時にホルモンが血液中にたくさん出ていき、自分で自分の体を治すことになるわけです。分娩後どうして悪化するかと言うと、後産で胎盤が出てしまって、ホルモンが出なくなるからだと考えられます。しかし、例外的に肺門リンパ節が腫れているだけなのに妊娠してもなかなか良くならなかったり、分娩後に悪化する方もおられます。一般的には安心して妊娠、分娩していただければよいと思います。分娩後は、育児に大変だと思いますが、悪化する場合は、分娩後3か月ぐらいまでですから、出来れば1か月後、遅くとも3か月後までに一度、胸の写真を撮っておくと良いと思います。

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