前述したNymanとLindhe(1979)の論文では、部分被覆冠は変形に対する抵抗力が低いために脱離しやすいことが考察されています。
Glantzら(1984)はブリッジに加わる力の強さと方向について、力の大きさを測定するstrain
gaugeを用いて検討しました。
まず、右下の8番、4番、3番を支台とするブリッジで、遠心支台となる8番に加わる力を測定しました。その後、8番と7番の間で切断し、カンチレバーポ
ンティックとなる7番、6番、5番、ロウ着(金属のロウを流して固定すること)部位である5番と4番の間、新たに遠心支台となる4番に加わる力をそれぞれ
測定しました。 その結果の一部を表にします。
主なストレス(N) | 主なストレス の方向 |
||
最大 | 最小 | ||
咬合調整後(中心咬合位)の ブリッジの遠心支台のクラウン(8番) |
317.8 | 173.6 | 64゜ |
ブリッジ切断後に遠心カンチレバー を有する遠心支台のクラウン(4番) |
-37.3 | -333.5 | 2゜ |
カンチレバーでの4番と5番のロウ着部 | 97.1 | 77.5 | 34゜ |
カンチレバーポンティック(5番) | 185.4 | -544.5 | 70゜ |
カンチレバーポンティック(6番) | -41.2 | -363.0 | 80゜ |
カンチレバーポンティック(7番) | -39.2 | -290.4 | 86゜ |
(Glanzら1984より改変)
数値だけだとわかりにくいので、図にしてみました。矢印の長さと向きががストレスの数値(プラスとマイナスの最大値)と方向を表しています。
カンチレバーの支台歯やポンティックには収縮方向の力が加わり、ロウ着部や1歯目のカンチレバー部には伸展方向の力が加わっています。機能的な変形は複雑であり、部位ごとに異なることが示されています。
RandowとGlantz(1986)は3人の被験者に対して、小臼歯の咬合面にカンチレバーを模した棒をロウ着し、近い部位から遠い部位にそれぞれ加重を加え、痛みの閾値について評価しました。
その結果、生活歯では回転の中心がクラウンの内面に位置するものの、失活歯では歯牙の外側に回転軸があることを算出しました。
(RandowとGlantz 1986より改変)
また、痛みの閾値は生活歯と比較し、失活歯では約2倍大きく、生体力学的な違いが考察されています。
(RandowとGlantz 1986より改変)
この研究は失活歯における失敗を正確に評価したものではないものの、その機械的な特性と疫学調査での結果から、疲労が重要な因子であると結論づけています。
最終更新2013.1.10