ロシアンラリー2001実戦編

 

 

3日目(5/2)

ウスリスク〜スラビアンカ(491km ÷ 2くらい)

ウスリスクのホテルで寝坊した。

起きたらホテルが変な雰囲気なので、いやな予感。

#18八重樫さんが様子を見に行き、「もう、みんな移動してる!」

大慌てで、荷物をまとめ、バイク置き場へ急ぐ。

歩いていると、スタート地点に移動するバイクが見えた。

これはまずい!まだ、マップも巻いてないのに。

慌てで、マップを巻付け、スタート地点に向かう。

これでひと安心、と思っていたら、ランチパックをもらい忘れていた。

これまた、大慌てでもらいに行く。

そうこうしているうちに、ウスリスク市の歓迎セレモニーが始まった。

ロシア伝統の歌と踊りの後、市長からのプレゼント。

健康増進酒(ロシアの養命酒みたいなものらしい)とミネラルウォーターだった。

だいぶ経ってから、サウスウィンド(シーカヤックの仲間)のみなさんと

飲んだのだけれど、アルコールは入っていないので、お酒ではないみたい。

水で薄めて飲むと、アルコール抜きの梅酒のようなさわやかな味。

僕は結構気に入ってしまったけど、みなさんはどうでした?

 

§

今日は、大移動日。500km近い距離を走る。

舗装道でもきつい距離なのに、

ダートでそんな長距離なんて、全く想像のつかない世界。

大勢のギャラリーが見守る中、緊張のスタート。

スタートして間もない街中、わずかマップ5コマ目でミスコース。

右折すべきところを直進してしまい、あわててUターンする。

ロシア警官に誘導される。「こっちだよ、なにやってんの!」

と言われたような・・・。ロシア語は分からないので、あくまで雰囲気です。

§

しばらくのダートの後、舗装路が現れる。

そして、またダート。でも、舗装路の割合が多いような気が・・・

相変わらず、ダートでは余裕が無い。

途中、中国国境付近を通ったはずなのだけれど、全然気が付かなかった。

フラットダートを快走!(#35池田篤志 著作権所有?)

 

200km過ぎ、ルートマップの指示は開けた草原へ。

本当にこっちかい?と考えていると、ロシア警官にこっちだよと教えてもらう。

分岐点の要所要所には、警官がいてくれるので、

致命的な迷子にならないようになっている。

目印は、山並みだけで、なんにもない。

あんまり気持ちいいので、ちょくちょくバイクを止めて休憩&写真撮影。

そんな道をしばらく走った後、舗装道に入る。

小さな町を通過。

立ち並ぶ家は、決してきれいとは言い難いが、

アクセントの窓枠のせいで、とてもおしゃれに見える。

町行く人達の服装もきれい。

真の意味での豊かな生活を送っているのだと感じさる。

ラリーの期間中、数々の小さな町を通過するが、これがとても楽しい時間なのだ。

町の人たちが声援を送ってくれる。若い女性はきれいだし、子供もかわいい。

手を振ってくれる小さな子供に、身振りで応える。

短いけれど、心底ほっとできるひと時。

210km地点、開けた草原地帯にて(#9竹下さん撮影)

 

しばらく行くと、ガス欠で止まっているバイクを発見。

#15上嶋さんである。

#9竹下さんが手早くタンクを外し、上島さんのTTに給油。

こういう光景、競技じゃないロシアンラリーならではのこと。

 

程無く、CP2付近に到着。

警官がマップにないルートを指示している。

指示されるままに、道を直進。

途中、引き返してくるバイク数台とすれ違う。

あれ、道違うの?

不安になって、引き返そうかと迷うが、とりあえず進んでいくと、

給油車が見えてきた。分かりにくいCPだった。

不安になって、引き返したエントラントもいたのでは?

§

給油、しばらくの休憩の後、CP2からの再スタート。

台の集団で飛び出す。

自分のペースじゃないよなと思いつつ、最後尾からなんとなく付いて行く。

 

元気な頃のGSの最後の姿(2点ともロシアンラリー&西巻裕 著作権所有)

 

そして、CP2からわずか数十キロ、事件は唐突に起きた。

速度の早い(?)集団に無理に付いて行ったせいか、

乾いた路面の、硬い轍にフロントタイヤを取られ、

次の瞬間、約1mくらいの深さの側溝に落ちてしまったのだ。

一瞬の出来事。

どうやって転んで、どうやって落ちたのかも分からない。

起き上がって、体の無事を確かめ、バイクの方を見ると、

そこには、あられもない姿のGSが横たわっていた。

体が無事だったのが、不思議に思えるほどの状態。

一目見て、「あー、終ったな・・・」と思った。

バイクは、溝沿ってではなく、溝に橋を渡すようにはまっている。

集団の最後尾にいたので、皆さんはとっとと行ってしまったようだ。

1人ではどうにもならん!と思っているところに助けが来た。

#107ジムニーの中島ご夫妻だ。

手を貸してもらい、とりあえずバイクを溝に対して平行にする。

バイクが動けば、あとは何とかなる状態になった。

中島ご夫妻様、ありがとうございます!本当に助かりました。

§

ここで、ようやくバイクの確認。

外観最悪。フロント周りのプラスチック系パーツは砕け散っていた。

エンジンはかかる。ハンドルガードはひしゃげているが、フォークはねじれてない。

インジケータランプの基板は割れていたが、

GSのアキレス腱であるチャージランプだけは生きている!

これが切れていると、充電しなくなりバッテリー上がりで止まってしまうのだ。

バッテリーの充電確認のためについているランプなのに、

これが切れると充電しないなんて、変な設計です。

結論として・・・、まだ走れる!

どうやってこの溝から脱出するか?と思案しているところに、#9竹下さんが通りがかる。

「どうしたんだい?!」と第一声。

溝に降りて来て、第二声。

「何でもないところでこけるよね」 ぐさぁー。

でも、竹下さんも99年参加のとき僕と同じような大破をやらかしたんですよね?

その後、ORAの川崎さんも到着し、バイクを溝から出してもらう。

さすが、川崎さん。斜面をもろともせず駆け上がっていました。

僕がやったら、もう一度、溝に落ちていたかも。

#31松村さんも加わり、言われるがままに記念撮影。

「はいはい、バイクの横に立って!溝を指差して!」

出来上がったのが下の写真。

転倒現場(#31松村さん撮影)

 

気を取り直し、走り出す。

ところが・・・

走り出して間もなく、プスンとエンジンストール。ガス欠か?

後ろから、#31松村さんが追いつき、

先に出ていた#9竹下さんも戻ってきてくれた。

スイープの若生さんも到着。

ああでもない、こうでもないとやっているうちに、

どうやらキルスイッチがおかしいと言う事が分かる。

そこで、キルスイッチのリード線を直結。再び走り出す。

がしかし・・・

またもや、エンジンストール。

スタート地点から約270km、ここでリタイヤが決定した。

若生さんのハイラックスに、GSを積み込みながらも、悔しい気持ちでいっぱい。

僕の方はオフィシャル岩波さんのランクルに乗り込み出発。

あー、悔しい!

自分のペースで走っていれば・・・

平常心で走ることの難しさを思い知らされた一件だった。

§

しばらく行くと、岩波さんのランクルに無線が入る。

4輪が一台、故障とのこと。

現場に到着。

#110澤田さんのランクルは、フロントサスのボルトが

折れてしまったらしい。応急処置をして、走ると言う。

ここで僕は、車を乗り換える。

オフィシャルの見尾さんのランドローバーである。

シートベルトをしないで乗っていたら、大きなギャップを

乗り超える際に、天井に頭を強打してしまった。痛っ!

しばらく行くと、僕のGSを乗せた若生さんのハイラックスが停車していた。

どうしたんだろう?

訊くと、搬送中にバイクのサイドスタンドが折れたらしい。

今度は、スタンドを使わずに、タイダウンの張りだけでバイクを固定する。

再び、見尾さんのローバーに乗り込み、今度はきちんとシートベルトを締め出発。

§

車でギャップを乗り越えるときの衝撃はすごい!バイクの比ではない。

本当に大丈夫か?と言うほどの衝撃が伝わってくる。

そんな中、ドライバーの見尾さん、同乗の泉さんと話をしながらゴールを目指す。

「参加者から見て、ロシアンラリーのオフィシャルって正体不明じゃないですか?」

と泉さんから訊かれる。確かに・・・

オフィシャルの正体は、元参加者だったり、そうじゃなかったりするけど、

基本的にはボランティアで、それぞれきちんとした本業をもった人達なのだ。

何かの縁で、オフィシャルとして携わっているけど、みなさんロシア大好き人間。

「なぜ、オフィシャルとして毎年参加しているんですか?」

「なんででしょうね、宗教みたいなものですかね」

「ロシアン教?」

「そうかも知れませんね(笑)」

ロシアンラリーの舞台裏を垣間見る事ができた貴重な時間でした。

§

最終CPに到着。

オフィシャルの泉さんが、太陽の周りに架かる虹に気がついた。

なんとも言い表しがたい幻想的な光景。

リタイヤした僕のためにロシアの神様が虹をかけてくれたのだろうか?

この虹を見たエントラントは何人いたのだろう?

 

§

フラットダートに入ると、さすがはランドローバー。

乗り心地がいいせいか、睡魔が襲ってきて寝入ってしまう。

すっかり暗くなったスラビアンカに到着。ご苦労様でした、見尾さん。

やはり、500kmの未舗装路は、とてつもなく長かった!

GSを積んだ若生さんは、まだ到着していない。

もういい時間なのに、ゴール地点には、子供達(中学生くらい?)がいる。

車から降りて、船に戻るのを待っていると、子供達に囲まれた。

何をいっているのか全く分からないのが少し怖いが、

何かくれ!と言っているようだった。

その中の1人と、グローブの引っ張り合いとなる。

「だめだって!あげられないっての!」

子供達は、笑っていた。くそー、むかつく。

準備ができたようで、再び見尾さんのローバーに乗り込み、船に向かう。

§

船に戻り、同室の八重樫さん、池田さんに報告。

「こけちゃいました!」

竹下さんにも会う。着いたばかりだそうで、とてもいい顔してました。

とりあえず夕食を済ませ、バイクの修理に取り掛かる。

まず、だめもとでセルを回してみる。

キュルキュル、ブウォーン。あれ!?かかるぞ、エンジン。

あのエンストはなんだったんだろう?

修理を見に来てくれた竹下さんと共に首をかしげる。

良く分からないが、シート、タンクを外し、始動系・点火系の配線を調べる。

一見して、何ともないように見えるので、とりあえずガムテープで防水。

続いて、大破したフロントメーター周りの修理。

ガムテープを駆使し、フロント周りを形にする。

そんなこんなで、バイクが形になった時、時計は午前2時を回っていた。

さあ、寝よう!

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