ロシアンラリー2001実戦編
1日目(4/30) ナホトカ〜ナホトカ 81.73km 長い船旅も間もなく終わる。船の中で、時計は2時間進められた。 よく分からないが、時差が2時間ということは確か。 バイクのタイダウンを外し、下船に備える。 § いよいよ着岸。タラップを降りていくと、軍服姿のおねーさんが、お出迎え。 セレモニー会場に向かって歩いて行く。 途中、明らかに日本の族車と思われるシートの跳ね上がったバイクを発見。 盗難車じゃないのこれ? 漢字で、「明治乳業」と書かれたトラックもいた。 それにしても、日本車ばかり。 ロシアに来たっていう実感が全くない。ほんとにロシアか? さらに歩いてゆくと、なにやらブラスバンドらしき演奏が聞こえてきた。 おー、なんか知らんが、すごく歓迎されている。 ナホトカ市庁舎での歓迎セレモニーが始まった。 ブラバンの演奏、ロシア民謡らしき歌、恰幅のいい女性副市長の挨拶。 そして、歓迎のパン。#31皆勤賞の松村さんが代表で受け取り、 みんなで分け合って食す。塩を付けて食べるのだが、付け過ぎた。辛い! § 続いて、お小遣いの両替です。 ここ、ナホトカ市役所(?)では、機械の関係で両替業務停止中らしく、 市内の銀行まで両替しに行くらしい。1人頭2000円分だけ。 これで、400ルーブルになる。でも、#35池田さんが隠し持っていた(?) ルーブルでコーヒーを頼んだところ、8ルーブル(=40円)也。 400ルーブルって、結構使いでのある金額かも。 代表者にお金を預け、その他の面々は、ここで、いったん船に戻る。 § 昼食後、ようやくバイクに乗れる!装備を固め、タラップを降りる。 外しておいたテールバックを取り付け、ゼッケンのひもを結び準備完了。 2日ぶりのエンジン始動。やっぱり、落ち着くなーこのエンジン音。 ナホトカの広場まで、隊列を組んで走ってゆく。 結構な数のギャラリーがいる。少し緊張する。 広場にゼッケンナンバー順に並んで駐車。スタート待ちとなる。 § 待ち時間の間、ひっきりなしに子供が寄ってきてはサインしろと、腕を差し出す。 その腕は、すでに日本の名前でいっぱいになっているではないか! 最初のうちは、サインを求められるのは悪い気分じゃなかった。 けど、あまりにひっきりなしに押し寄せてくるので、いいかげんいやになってくる。 「こんにちは・・・」 そのとき、ゆったりとした女性の日本語が聞こた。ロシア人だった。 大学で、日本語を勉強しているという彼女の日本語はとても上手であり、 そのとき横にいた#32河西さんと共に、感心しっぱなし。 バイクのナンバーに書かれている漢字も読める。 彼女の横にいたもう1人の学生である彼は、ナンバーを見て、 「この平仮名は、どういう意味があるのですか?」(横浜 な ←これ!) と訊かれてしまった。 「いや、これはね、特に意味はなくて、平仮名50文字の1つを適当に・・・どうのこうの」 と説明したところ、「あー、なるほど」という顔。納得してくれたのだろうか? ロシアの学生と(ロシアンラリー&西巻裕 著作権所有)
彼女の方は日本語の通訳になりたいそうだ。 「僕達の船の通訳さんよりも、ぜんぜん上手ですよ」 と言ったところ、「お世辞でも嬉しいです」だって。もう十分なれますよ、通訳に。 ブリーフィングが始まるので、名残惜しいけど彼女とはお別れ。 § 今日のコースの注意事項、チェックポイントがニシマキさんから告げられる。 マップにCPを書き入れ、注意事項をメモする。 そして、いよいよスタートだ! 4輪のスタート後、エンジンをかけ、スタート待ちの列に並ぶ。 35台のバイクのエンジン音は、轟音となり、ナホトカの広場に響き渡る。 緊張感は、ますます高まってくる。 バイクは2台ずつ、30秒毎のスタートである。 横に並んだのは、#15上嶋さん。 「マップの見方、分からないからよろしく!」 そう言われても、僕も初めなんだよな、コマ図走行・・・ ついに、スタートの瞬間がやって来た。 オフィシャルの秒読みが、始まる。 緊張は最高潮に達する。 10秒前。ギアをローに入れる。 「5、4、3、2、1、GO!」 § 舞い上がる自分を抑えつつ、極力スピードを殺して走り出す。 最初は並走していた#15上嶋さんも、しびれを切らしたのか、 スピードを上げて、先に行ってしまった。 それでも、僕にしては、スピードを出し過ぎていたんだと思う。 最初のコーナーで、いきなり後輪がスリップ! 暴れ馬と化したバイクを押さえつつ、必死に立て直す。 何とか、転倒は免れた。これで、やっと我に返る。 それにしても、舗装路の浮き砂は怖い。 やがて、ダートに入る。 次々と、後発のバイクに抜かれて行く。 野太いエギゾーストノートが聞こえた、と思った一瞬の後、 アフリカツインの#32河西さんが、勢い良く抜いていった。 「えらいとこに、来てしまった・・・」 その時は、下手の横好きで来てしまったことを、本気で後悔した。 乾いたダートが終わり、風景は、開けた草原地帯に変わる。 が、しかし・・・ 草原に見えた道も、実は湿地帯で、いきなりスタックしてしまう。 後輪は、むなしく空回り。 どうしようもなくなった時、BMW F650#14真田さんが助けに来てくれた。 バイクを押してもらい、脱出。ありがとう! 止まってしまわないように注意しつつ、湿地帯を抜けた。 § しばらくは、乾いた砂塵舞うダートが続いた。 前走者との車間を詰めていると、砂ホコリで前が見えない。 とやっていると、路面の凹凸にハンドルを取られる。 僕のGSは、サスストロークが短いので、ガツンガツンと言わせながら 走ることになるのだけれど、バイクの寿命を縮めているんだろうな。 相変わらず、周りのペースは速い。 ついては行かない。というか行けない。 でも、自分なりのペースで走るのが楽しくなってきた。 楽しくて、始終、頬は緩みっぱなしだったと思う。 § そのうち、前方に停車している集団が見えてきた。 「何だろう、休憩か?」 最初はそう思ってバイクを止めたのだけど、そうではなかった。 フロント周りが大破し、フォークがよじれたTW・・・ そして、横たわる#34前田さん。 腕が動かないという。とても痛そうだ。 #20福丹さんの話では、すぐ前を走っていた前田さんは 「えらい勢いで、飛ばはったんです」 そう、飛んでしまったのです。まだ、走り出して間もないのに。 なんと言っていいのか・・・ メディカルのスタッフが来て、応急処置が済み、車で運ばれて行きました。 § そんなことがあったので、ここからは、R80GS#9竹下さん、F650#14真田さん、 僕の3人で、急遽BMW軍団を結成し、いっしょに走ることになった。 しばらくは、でこぼこのダートが続く。 そして、目の前に、今回初めての川が姿を現した。 #9竹下さんが、ぶりぶりと川を越えてゆく。 その様子からして、川底はごろた石だろうか? 心の準備が出来ないまま、恐る恐る川に侵入してみる。 やはり、川底には、ごろた石。 川の中ほどで、たまらず転倒!
でも、水深は浅く、フラットツインのシリンダーがつっかえ棒となり、沈は免れた。 またもや、#14真田さんの助けを借り、川を渡り切る。ありがとう! でも、川渡りの困難さを知り、少し川恐怖症になってしまった。 渡った先には、逆さまにされたバイクが一台。 どうやら、川沈をやらかしてしまったらしい。水抜き中である。 その後、何本か川を渡るうちに、恐怖心が薄れていく。 そればかりか、川が現れるのが楽しみになってきた! 最初は、さっぱりだったコマ図にも、だんだん慣れて、 景色と距離から、だいたい、このへんかなってことが分かってくる。 だから、40km過ぎの分かれ道で、みんなが大挙して別の道を選んでも、 「いや違う、こっちだ!」と言ったり出来るようになるのだ。 で、結果的に僕達の選んだ道が正しかった。 多分42km地点(#14真田拓聖 著作権所有?)
ルートの選択は、非常に難しいところ。 分かれ道に差し掛かったとき、人と違う道を選ぶのもそうだし、 自分を捨てて人と同じ道を選ぶのもそう。 これは、まさに人生の縮図ではないだろうか? なんてことを考えたりする。いや、実際はそんなたいそうなものではないか。 § いくつもの分かれ道を過ぎ、何本かの川を渡り、ほんの少しの泥ヌタ道を 走り抜けた頃、2つ目のチェックポイント(CP2)に到着。 今日は、走行距離が少ないので、CPでの給油はない。 そのせいか、オフィシャルで元ヤマハワークスの川崎さんも、 後続のバイクを見に行くためのガソリンが不足しているらしい。 #9竹下さんが、川崎さんにガソリンを分けてあげる。 タンク容量のでかいGSが、タンカーと呼ばれる所以でしょうか。 今日のゴールまで残すところ20km。気を引き締めて走り出す。 § 10kmほど走ったところで、舗装路になる。 ここからは、右側通行の一般道。とても気を使う。 しかも、舗装道とはいえ、スピードを上げて走っていると、突然の穴や、はがれた舗装に ハンドルを取られるので、安心して走ってはいられない。浮き砂も怖い。 そんな道を、10kmほど走ると、ようやくゴールが見えてきた。 「ゴール!」 やったぁー、ものすっごく、ほーっとする瞬間。 そして、得も言われぬ充足感。 誰もがいい顔してる。 1日目ゴール(#14真田拓聖 著作権所有?)
オフィシャルにタイムカードを渡し、給油を済ませ、しばしの休息。 ここから、船までは、パトカーが先導してくれる。まるで、ウィニングランみたいで、気分がいい。 もっと右側に寄って走るようにと、ロシア側から苦情が出ているらしいので、 努めて右側に寄せて走る。 すでに、懐かしい船が見えてきた。1日目が終わった。 § 毎日のラリーは、僕らが新潟から乗ってきた船(オルガサドブスカヤ号)から出発し、 また船に戻る。船は、同じ港だったり、違う港に移動していたりする。 僕達は、船を追いかける様にして、ラリーを続けてゆき、船が宿になるのだ。 辞書で「rally」を引くと、「競技としてのラリー」という意味の他に、 「再び集まる」という意味がある。 来年また会おう!というのも、ラリーだけど、毎日走り終わって、船に戻り、 無事を確かめ合うのもラリーのもう一つの意味だろうと思う。 さあ、明日に備えて、バイクのメンテナンスでもしようか。
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