7月27日 「チョロリンの死」
チョロリンが死んだ。
チョロリンがいなくなったことが判ったのは、午後になって、夕べのエサが手つかずに残っていたことに気づいたためだった。
飼育ケージの中に取り付けた温度計によじ登って、上ぶたの一部を囓り取り、脱出したらしい。5、6mmX1cmほどの小さな穴だった。ベランダに降りた後、ジョロの中に入り込んで、出られなくなり、そのまま衰弱死したようだ。脱出を試みた跡なのか、ジョロの中には、囓られたプラスチックのクズが、ほんの少し散らばっていた。
ジョロから取り出したチョロリンは、薄目をあけて眠っているようだった。小さい体を新聞紙の上に載せ、体重および各部を測定していく。頭胴長、尾長、後足長、耳長・・・。これらのデータは、一般的には捕殺によって調べられる。野外観察によるデータ取りが主で、捕殺の手法を用いた調査をしない私には、貴重な資料になるのだ。やらなければいけない。
全身のスケッチをしようとした時点で、それまで押さえていた涙がぼろぼろっと溢れた。
「ごめんなさい、ごめんなさい、ごめん・・・・」
手がふるえて、線がうまく描けなかった。3時間かけて、3枚のスケッチを仕上げた。
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今チョロリンの体は、我が家の冷凍庫に保管されている。
本当は土に還したかったのだが、組織を調べる必要が出来たときに、新たに一匹を犠牲にしないで済むからだ。
そうすることが、命を無駄にしないということなのだと自分に言い聞かせている。