4月28日 トラップ・トラップ
1個のトラップを1晩仕掛けることを、専門用語で「1トラップ・ナイト」という。10個のトラップを1晩、あるいは、5個のトラップを2晩掛けたら、「10トラップ・ナイト」。つまり、トラップ・ナイトとは、捕獲調査に用いた、トラップの延べ数を表す。これを、調査対象の動物の、「ワナのかかりやすさ」の指標に用いることがある。
ネズミの研究者の間では、アカネズミなら、「非常に良く捕れる時期で10トラップ・ナイトにつき1頭、カヤネズミなら、30トラップ・ナイトにつき1頭」が相場ということになっている。(これは、あくまで私が知り合いの研究者に聞いた数字です。ウソつけ!と突っ込まないでください(笑)。)つまり、カヤはアカより「ワナに掛かりにくい」ということが通説になっている。
で、私が何をいいたいかというと、「結果は予測をしばしば裏切る」(笑)。
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トラップの見回りは、3時間おきに行う。カヤは体が小さいので寒さで衰弱死するのを防ぐためと、どのくらいの個体が、短時間に一定範囲内をうろついているかを知るためだ。
前年から通い慣れた砂利道を下っていき、河川敷に下りる。やっと生えだした若草が、少し離れた橋の街灯で、ぼんやりと照らされている。川面は、とっぷりと黒くたゆたっている。人気のない、寂しい場所に思えるが、しかしよくよく耳を澄ますと、草の葉陰でかさこそと生き物の気配がする。
しばらく歩いて、トラップを仕掛けた場所に到着。ふたが閉じていないか、ひとつひとつ、慎重に点検していく。一番どきどきする瞬間だ。3つ目のトラップのふたが閉じていた!そっとふたを開けると、底の方でカヤが縮こまっていた。小さい体をまだ小さくして、目だけが大きく見開いている。なんだか、すごく懐かしい。ちゃんと寒い冬を生き延びたんだ、と、嬉しくなる。
トラップから、カヤをビニール袋に移し替えて、体重・性別を記録。その後、毛刈りで個体識別を施す。腰の部分から斜めに刈ろうとしたが、暴れてうまくいかない。気が付いたら、結構でかい10円ハゲが出来てしまった。ごめん。女の子なのに。
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また別のトラップで、今度はアカが掛かっていた。びっくしりたような大きな目を開けて、きょとんとしている。40gちょっとの体重だが、カヤの5倍はあり、体力が全然違う。ビニール袋に入れられると、大暴れして全然手が出ない。もたもたしている間に、袋の隙間から逃げられてしまった。残念。何とか、アカも個体識別出来るようにならないと。
この日の成績は、18トラップ・ナイトで、アカ2、カヤ7だった。