ロボオイル

 GGGAIロボットに任務終了後支給されるエンジンオイル。ロボジュースとも呼ばれる。
 エンジンオイルとはエンジン内部の磨耗、焼きつき、錆つきなどを防止する目的で、専用のタンクに貯蔵され適宜注入される潤滑目的の合成油である。潤滑目的の油に対酸化剤や対磨耗剤などを添加して販売されている。
 GGGが擁するAIロボットといえど、基本的にはエンジン=GSライドから発生するエネルギィを動力へと変換して稼動する以上、機体各所には負荷が蓄積される。それを防止する意味で、彼らにもエンジンオイル(彼らの間では、ロボオイル、あるいはロボジュースと呼称されている)は出撃ごとに補給される事になっているが、彼らの場合これを自身で経口注入する形式になっている。
 限りなくひとの「心」に近いと言われる超AIシステムを搭載した彼らにとって、任務においてかかる負荷は機体へのそれにとどまらない。苛酷な環境下での人命救助や、戦場同然の状況下での治安維持など、人間であれば極度の緊張を強いられる任務では、「心」を持つ彼らの精神もまた、当然大きな負荷を受ける。極限の状況下で彼らが接する理不尽や生命の尊さ、即ちひとが遍く有する論理矛盾に彼らのAIは大きく揺さぶられる事になる。これを放置すれば、彼らの超AIはその矛盾を抱えたまま、正常な稼動が出来なくなり、ひいては人間に対して敵対的な行動を執るに至る可能性がある。これを防止するためGGGでは超AIに対するロボット三原則の徹底や、定期的なカウンセリング、メモリーのデフラグ(彼らにとっては夢を見る時間かもしれない)を行っている。経口注入式のオイル補給もその一環で、人間の水分補給を擬似的に体験させる事で、これを快感としてAIにかかっていた負荷=ストレスを解消させる意図がある。配膳ロボットとして配備されているピギーちゃんの存在もその一端と言えよう。この措置は彼らにも(殊に炎竜には)好評で、闇竜に至ってはCCISの99年製オイルを特に希望するなど、相当に人間的な「好み」まで生じさせている。AIの負荷を軽減すると共に、整備部としては手間も省ける一石二鳥の措置と言えよう。
 GGG整備部が日夜その総力を結集することでAIロボットたちの機体への負荷を軽減し、機能回復を目的とした部品交換などの補修作業を行うことはできる。しかし結局、「心」のケアは「心」でしかできないのである。