パピヨン・ノワール(レプリジン)

 マモル少年のレプリジンによるQパーツ強奪事件の最中、GGGオービットベース・研究モジュールにおいて発生したパスキューマシンの暴走事故によって生成されたパピヨン・ノワールのレプリジン。若干の色素の欠乏が見られる以外は、身体的特徴、性格、知能、知識、そして特殊能力であるセンシングマインドに至るまで、オリジナルのパピヨンと全く同様の存在であり、同時に全く別個の人格である。パスキューマシンの暴走による爆発によってオリジナルのパピヨンは死亡したが、その瞬間に複製された彼女は、複製による何らかの作用によって死亡を免れた。また物質復元装置無しに、その中枢であるパスキューマシンのみで複製された地球上、および衛星軌道上に存在した動物は、その存在が不確定なものとなり、複製直後にそのほとんどが暗黒物質へ還元してしまったが、彼女はそれをも免れている。おそらく複製と同時にオリジナルが致命傷を負ったことで、複製になんらかのバグが生じた結果であると推測される。
 地球圏においてただひとりの生きた人間となってしまった彼女は、衛星軌道をはずれ宇宙を漂流し始めたオービットベースの複製からクシナダで脱出し、地球へ降下。複製された地球の調査を行いながら、救助を待ち続けていた。その間にセンシングマインドによって自身が複製人間であること、そしてオリジナルの自分が既に死亡していることをも知ることとなった。
 戒道少年の先導により、三重連太陽系へと遠征してきたGGGを出迎え、アメリカGGG宇宙センタを拠点として提供、GGGの複製された地球圏調査に協力する。その際、恋人である猿頭寺耕助と「再会」を果している。
 パレッス粒子によって無力化したGGGにあって、ガイとルネの除き、ただひとりその異変に気付いた彼女はパレッス粒子の分解作業を開始、同時にセミ・エヴォリュダーとして虚脱状態から覚醒したミコトに道を指し示した。
 ソール11遊星主殲滅に際して、ピサ・ソールが破壊されたことにより身体を維持できなくなり、消滅する。その結果を、恐らく複製された時から彼女は受け入れていたように思える。センシングマインドがあるとはいえ、自らの死を目前にしてあの柔らかな微笑みを浮かべていた彼女の中に葛藤や恐れはなかったのだろうか。だが、オリジナルのパピヨンとは異なり、その「還るべき場所」を恋人である猿頭寺耕助の中に求めた。オリジナルとは異なる経験をつんだことが、今際の言葉の違いとして現れたのだろうか。レプリジンといえども、その意志は確かに存在し、複製されたその時からとはいえ、確かに時を刻み生きているのだと、彼女は身をもって教えてくれたと思える。