マイクロとは英語で”micro”と綴り、「微小な」あるいは「超小型の」を意味する。メートル法などでは基本単位(m;メートルやg;グラムなどのこと)の100万分の1を単位とするとき基本単位名の上につけて用いられる。すなわちマイクロブラックホールとは文字通り極小サイズのブラックホールを指す。
そもそもブラックホールとは恒星がその成長の最終段階において自らの重力によって限りなく収縮した極相状態の一種である。光すらも脱出できない超重力を生み出す超高密度の天体のいわゆる「本体」の直径はそれこそ様々である。当然「マイクロ」サイズのブラックホールも宇宙には数多く存在するであろう。しかし、ここで言う”micro”とは天体そのものの大きさではなく、その脱出不能な重力が及ぶ範囲、すなわちシュヴァルツシルト半径の大きさを指す。マイクロブラックホールとは天体そのものの直径はもちろん、そのシュヴァルツシルト半径が極めて微小なものを言うのである。
しかし自然状態でいわゆるマイクロブラックホールが誕生する可能性は極めて低いと言ってよい。なぜなら「ブラックホール」化するほどの質量が恒星内で生まれている以上、それが有する重力は必然的に極めて大きなものとなり、それゆえシュヴァルツシルト半径も拡大せざるをえないからである。もちろん極めて特殊な条件下でマイクロブラックホールが自然誕生する可能性もなくはないが、それも「0ではない」程度のものでしかない。
機界最強7原種のひとり、腸原種は三重連太陽系のオーバーテクノロジーが生み出した重力制御技術を更に拡大発展させ、このマイクロブラックホールを自在に発生、かつそのシュバルツシルト半径を直径数kmから30cm程度のまで自在に変化させることができる。またその強大な吸引力に指向性を持たせることにも成功しており、これにより腸原種はあらゆる攻撃を無効化することができるばかりか目標そのものを「重力の井戸の底」へ消し去ることも可能である。また自らが生み出したマイクロブラックホールの重力を制御し一種のシールドを展開、外界からのありとあらゆる干渉を受け付けない「結界」を敷くこともできる。またこれらの重力制御の際必然的に生じる重力場異常によって発生する高度に陽イオン化した分子、あるいは原子を生体の細胞に送り込み、これを破壊する「細胞破壊プラズマ」も腸原種の強力な武器である。
しかし機界文明の高度な技術をもってしてもマイクロブラックホールは制御が困難であり、一歩間違えれば腸原種自身もマイクロブラックホールに落ち込む危険性もある。
ちなみにマイクロブラックホールは人為的に発生させれば「空間跳躍」や「時間旅行」を可能にするといわれている「ワームホール」たりえるのではないかとする説もある。ESウィンドウなどは三重連太陽系の優れた重力制御技術の産物なのであろう。