氷竜の胸部に装備された冷気放射装置。蓋部に設けられたダイアルで温度調節が可能であるが、基本的に冷却が目的であるため、20℃以上の温風は放射できない。
火災、物の燃焼には三つ要件がある。「可燃物」、「酸素」、「熱源」である。第一に「可燃物」とは文字通り、燃える物体全般を指す。第二の「酸素」であるが、そもそも「酸素」が強い熱を出しながら他の物質と化合する酸化反応を燃焼という。火が燃える、という事は、つまり周囲の「酸素」が燃えて他の物質と結合することを指すのである。つまり、「酸素」が供給され続けなければ燃焼は維持されない。逆に言えば「酸素」が供給されれば、たとえ水中であっても物を燃焼させる事は可能であるし、火薬のような酸化剤(「酸素」を含む物質。硝酸塩や、過塩素酸塩などが代表的)があれば空気がなくとも燃焼は起きる。。
そして第三の要件が「熱源」である。燃焼の発生には一定以上の温度が必要となる。その温度は火元となる可燃物や周囲の環境等に左右されるが、もっとも有効な熱源とは往々にして「火」そのものである。燃焼によって発せられる熱が熱源となり、更なる燃焼を発生させる。この連鎖は要件さえ満たされていれば短時間のうちに起こるため、燃焼範囲は急速に拡大し、それを押しとどめる事は困難を極める。ゆえに、火災発生現場では燃焼反応の範囲が小さいうちに消火する、いわゆる初期消火が最も重要視されるのである。
ではもっともポピュラーな消火方法はと言えば、もちろん放水(水をかける事)である。水は強い熱に接すると蒸発し、水蒸気となって飛散するが、その際強力に熱を奪う作用がある。これによって三要件の一つである「熱源」を断ち、燃焼反応を止めているのだ。日常生活の場において、「可燃物」を取り去るのも、「酸素」の供給を断つのも現実的ではない。「熱源」の除去がもっとも容易、かつ後の始末が簡単なのである。
チェストスリラーは強力な冷風によって熱源を断ち、消化を促すこと目的とした装備であり、主に火災現場などで、水流などによる強い衝撃を加える事ができない場合の消火方法として用いられる。放射される冷風の温度は機密とされており、またダイアルである程度調整可能と推測されるため定かではないが、周辺の大気に含まれていた水分が急速に凍結しているのが確認できる程である。
当初は純粋に救急救命用の装備であったが、原種大戦後に治安維持活動に動員された際は、国際犯罪組織バイオネットのやハイブリッドヒューマンやメタルサイボーグに対して用いられ、制圧用として戦闘にも転用が可能である事が確認されている。その際はフリージングガンなどとは異なり、広い範囲に目標を破損することなく凍結効果を及ぼすことができると言う特徴がある。