決勝トーナメント編

そんな訳で、めでたいやら、悲しいやら・・・。複雑な気持ちの決勝トーナメンとの始まりである。
フランスがアルゼンチンがウルグアイがポルトガルが・・・。
ある意味、歌丸も木久蔵も楽太郎もこん平もいない大喜利のようなものである。
ウン!?ちょっと違うかな・・・・。
しかし、韓国も日本も予選トーナメント1位で進出した訳だけれど、単に開催国であったからだとは思えない。
それなりのプレッシャーや危機感や、大多数のにわかファンを含む目に見えるもの、目に見えない物の力が
彼等をそこに登り詰めさせ、導き出された至極当然な結果であろうと思う。
ここからの一歩一歩は、両国の代表にとって、また他の大多数のチームにとっても
未知の体験であると言っていい。正直な話、どこが勝っても不思議ではない。どのチームが笑い、泣くのか・・・。
興味と好奇と偏見を持って見届けたいと思うのであった。

決勝トーナメント第一試合
ドイツVSパラグアイ
ドイツ1-0パラグアイ
一言で言うと、パラグアイは疲れ切っていた。予選トーナメント最終戦、一人退場した後も果敢に守り攻め、半ば奇跡的と言って過言でない程の試合を超えて来たのである。ある意味仕方がない事かも知れない。
それでも試合は、ドイツが攻勢に見えて、僕はパラグアイの思う壷の戦いが出来ていたと思う。体力の過激な衰えを考えて、無理に前掛かりにならず、チラベルトからのロングフィードをサンタクルズ、コルドーソへ繋ぎ、極力シンプルに攻める。一見愚直に見えるかも知れないが、今までの試合でもこのやり方で、かなり効果を上げているのだ。しかし、誤算があった。サンタクルズが故障で交代した。たった一人の交代で、チーム全体の雰囲気が変わってしまう。それでもパラグアイは粘りに粘った。マスコミの中には、パラグアイはPK戦に持ち込もうとしていた。と評するかも知れない。けれど、それは間違いである。パラグアイの選手たちはすでに限界に近かったのである。たとえ、PK戦になったとしても相手は名立たるGKオリバー・カーンである。今回のチラベルトは、前大会から比べてウェイトも増え、動きも緩慢になっている。そしてそれを一番感じていたのはパラグアイチームであろう。何も好んでそんなリスクの高い道を選んだりはしない。彼等が考えていたのは90分で勝負を決めたがっているドイツをオーバータイムの延長戦に持ち込み、できればそこで、ラッキーマンのクエバスを投入して、一気に前掛かりのパワープレーに出たかったのではなかろうか?結局、90分経つ直前に ノイビルに決められてしまい、あわててクエバスを投入したが万事きゅうすという結果になってしまったのではないかと思うのだが・・・・。
さて、これでドイツでのアンケートはどうなるのかな?ちょっと興味深いが、報道してくれるかどうか?

決勝トーナメント第二試合
イングランドVSデンマーク
イングランド3-0デンマーク
ベッカム率いるイングランド、予選トーナメント最終戦、かのフランスを撃破したデンマーク、かつてはデンマーク帝国の一国であったイングランドなのである。(うそじゃないよ。かつてはフィンランドもノルウェーもスウェーデンもアイルランドもスコットランドもデンマークの属国だったのだから)まあ、さほどこの試合には大きな意味を持たないから、この辺でやめとこう。
さて試合である。簡単に言うと、デンマークは、バランスがバラバラになっていた。戦術は感じられる物の、それに伴う運動量が格段に落ちていた。なぜだろう?何でもかんでも疲れのせいにしたくはないが、結論から言えば、そうなのである。デンマークの最終戦は崖ップチのフランスだった。その手負いの獅子を相手にして、運動量、戦術、総ての面で圧倒したデンマークであったが、そのためには、個々それぞれ、必要以上の集中力や精神力を使ったに違いない。そして肉体の疲労も極限を超えていたに違いない。それだけの精神疲労は短時間では復活し切れないだろうし、いわゆる大勝負の後には、気の抜けてしまう事も多々あるのである。
それにくらべると、最終戦ナイジェリア、お互いに傷つけあう事もなく上手な取り引きをしたイングランドの疲労は、さほどの物ではなかったのではないか?実際の話、両チームが普通に戦ったら、こんなスコアほどの差はなかったように思う。それだけ今大会のデンマークの出来は良かったのである。惜しいかな雄国デンマーク。ただ、今回の選手たちは年齢も若く、次大会でも充分通用する年代に選手ばかりである。今後のデンマークはきっと強くなる。期待したいチームである。

決勝トーナメント第三試合
セネガルVSスウェーデン
セネガル2-1スウェーデン
セネガルは前試合の影響で、主軸の選手が多数出場停止で迎えた。対するスウェーデンは今大会屈指の守備力を誇るチームである。正直な話、試合前までは、スウェーデンが圧倒的に有利な気がしていた。あのアルゼンチンの猛攻をPK1本に止めてしまったスウェーデンのゴール前と言う物は、恐ろしいばかりの固さなのである。しかしである。その屈指の守備力でもセネガルの勢いは止める事が出来なかった。試合を重ねるごとにセネガルのサッカーは成熟度を増しているように思う。何度も触れている事だけれど、セネガルの選手のほとんどはフランスリーグに所属している。初期のアフリカ旋風の頃のアフリカ諸国のチームと違って、近代サッカーの洗礼を受けている。有り余る運動量、想像を超えた運動能力に加え、近代サッカーの戦術や思考が加わった時、最強なチームができる事は、自明の理である。この日のセネガルチームは、やはり主軸選手の欠けるためか、要所要所では、パスミスや意思疎通が出来ていない場面も多々見られた。そのためか、決定的な切り崩しはなかなか出来ず、また、スウェーデンも引いて守るからか、クリアするものの次への展開に苦しんでいるようで、結果ゴールデンゴール形式の延長戦に持ち込んでしまう羽目になった。この時点で、スウェーデンは自分達の体力にまだ余裕のある感覚だったのかも知れない。でも、冷静に見れば、かなり足に来ていた。むろん、それはセネガルも同様であった。しかし、ここで試合を左右したのは潜在する運動能力の僅かな差ではなかったろうか?アンリカマラの巧みなドリブルに突破されシュートを決められた。(いや、完全に突破された訳ではない。その直前に放ったのだ)ボールはジャストミートではなかったが、ポスト内側に当たって、転がり込む。
新しい時代の始まりを裏付けるには充分な一発だった。
日本がトルコに勝てば、このセネガルと戦う事になる。トルコ戦を前にこんな話をするのは不謹慎かも知れないが、もしセネガルと戦うとすれば、今大会最大の敵になると言っていい。出場停止だった主軸選手も帰って来る。
まず、0-2で負けたプレゲームでのスカウティングを忘れる事が肝要である。まったく違うチームになっていると言っていい。同時にマークすべき選手は、アンリカマラ、デューフ、コリーの三選手である。特にデューフは、速い、巧い、強い、かつ賢い。ここを早めに潰さなければ、日本に勝ちは望めないかも知れない。
一つ付け込む隙があるとすれば、開始、終了5分前後、特に開始直後5〜10分間、彼等の足が止まる。連携が切れる。この時間帯を大事にする事が大事である。

決勝トーナメント第四試合
スペインVSアイルランド
スペイン1-1アイルランド
(PK3-2)
この試合のスペインは、今までの試合のモア〜〜〜とした感じとは若干違っていた。モア〜〜〜の原因も分かったよ。それはね、やっぱり個人のスキルの高さにあったんだね。パスしあうボールはとても速いのに、トラップが実に巧みで、相手が取りに来ても実に懐が深い。だから足元に常にボールがあり、ボールコントロールからはかなりの部分自由な訳で、回りもゆっくり見れて、その動作は非常にゆっくり見える訳なのだ。でも、そこから出るパスは、きちっと当てるべき所に当たっているので、実に速いのである。
で、この試合の序盤、今までどう違っていたのかと言うと、パス&ゴーが実に素早く徹底されていたのね。これはアタリの速いアイルランドに対して考えられた戦術だったのだろうけれど、実際の話、これが徹底して実施されたのは、せいぜい前半の中盤までで、後は結局バテが出て、あまり動かず、それでもスペインリーグのように素早いパス回しで、終始していた感じであった。これは結果的に序盤のような戦いよりもアイルランドには、きつかったみたいだ。
アイルランドは、実に粘りに粘った。チャンスらしいチャンスもなかなか作れなかったが、数少ないチャンスの場面で、PKを取り、最初の一本は、イアンがはずして、思わず「イアン!」なんて状況で、普通はここで切れちゃう物なのに、それでもモチュベーションを落とさずに二本目のPKを取り、今度は二人目のキーンが確実に決め、なんと延長戦に持ち込んじゃったのである。スペインは嫌だったと思うよ。もうやんなちゃったと思うんだよね。でもさすが、無敵艦隊スペイン。攻めて攻めて攻め抜いた。が、アイルランドは、はねかえしたのであった。が、それ以上攻め込むだけの余力は、アイルランドには残されていなかった。しかし、延長戦は無得点で終了。PK戦にもつれ込んだのであった。このPK、にわかファンの方には不思議でしょうがないだろう。あれだけの距離のフリーキックがゴ−ルに入らないのだから、でもね、あの僅かな距離に挟まれたキッカーとキーパーの間には、実に虚々実々の駆け引きがあるのだよ。
僕は中学時代、キック力がなくて、でもコントロールには自信があったので、いつも6番目のキッカーだったのね。つまりサドンデス一人目だったのだけれど、実際に蹴った事があるのは、二回だけ。二回とも決めたけれど、実に痺れる経験だったのよ。ゴールがあれほど小さく見える瞬間はないと言って良い。
しかも、ほとんどの選手が120分を戦った後でしょう。あれはキツイと思います。結果、最後に試合を決めたのは、試合途中から入ったメンディエカだった。疲労がほんの少しだけ軽かったんだろうね。その分だけ余裕があったと言う事だと思うんだね。

決勝トーナメント第五試合
メキシコVSアメリカ
メキシコ0-2アメリカ

世界の国の中で、「フットボール」と言う言葉が、サッカ−の事を指さないのは、アメリカと日本だけである。アメリカで運動能力が高くて、背が高ければ、NBAを目指すだろう。体格とアタリが強ければNFLに、体がやや小さくてもプロを目指すならメジャーリーグだろう。つまり、他の国よりも圧倒的にサッカーに対する人気は低い国なのである。
だからアメリカでWカップを行った時は、各国から優秀な選手だが自国の代表には今一歩の選手をたくさんスカウトして来て、国籍を与え、アメリカ代表としてチームを構成した程なのである。(尚、どこかの国の代表として国際試合に出場した事のある選手は、政治的な理由などで特別な場合を除いて、他国の選手としては出場出来ないのである)
とにかく、そんなにサッカー先進国ではないのである。ないのであるが、アメリカは世界でも有数のスポーツ先進国であるから、なんだか効果的な練習法とか、データの蓄積とか、戦略の徹底などと言う事に於いては、老舗と呼ばれる多くの国より一歩も二歩も先んじてしまっている感がある。
予選の時もそうだったのであるが、この試合でも、徹底してスペースをつぶし、カウンター攻撃に賭けて来た。恐るべき徹底ぶりであったと言えよう。これに対し、メキシコの選手はブランコを中心に足元でボールを巧みに扱う選手が多い。選手は小柄な選手が多く、フィジカルでは到底太刀打ちは出来ない。事実、アメリカの選手は、ボールを持つ選手を二人、三人で囲み、ボールを奪い取る戦術に出ていたが、その場面場面で、メキシコの選手は、アメリカの選手に隠れて見えなくなってしまう程であった。また、引いて守るアメリカの戦術に対して、残念ながらメキシコは無策に近い状況だった。試合は2-0であったけれど、メキシコには、大きな大きな遠い遠い二点であったに違いない。
このアメリカのベスト8もある意味、新しい潮流である。個人のテクニックやスキルの積み重ねだけでは、世界は戦えなくなって来ている事が良く分かる。徹底したスカウティング(諜報活動)と分析。そのデータの蓄積と対策、それを徹底して実行する思考が必要になって来ているのは 、悲しいような気もするけれど、事実である。


決勝トーナメント第六試合
ブラジルVSベルギー
ブラジル2-0ベルギー

この試合の前、ブラジルの街角で、道行く人に今回の代表に付いてのインタビューをしている映像が出て来た。すると90才のおじいちゃんが出て来て(いや、実に元気なおじいちゃんであったが・・・)
「わしゃ、今年で90じゃが、こんな弱いセレソン(ブラジル代表)を見たのは生涯初めてじゃ・・・」もちろん、これは南米予選でもたついて、右往左往したから出て来た言葉なのだけれど、昨日の試合を見ていて、まんざらはずれてもいないな。と思ってしまった。要するにチームではないのである。あくまで優秀な個人の集合体である。大体チ−ム練習しているのは、この大会が始まる直前からであろう。今が一番チ−ム練習が出来ているのではなかろうか?リバウドはスペインのバルサにロベカルはレアルにロナウドはセリエのインテルに・・・当然他のメンバーも世界各国に散らばっているのである。前にも書いたがプレゲームしようにも所属チームの状況で招集出来ない。地域予選でもそれは同じ事だった。しかも現在、彼等はリーグ最終盤を終わったばかりなのである。それぞれのチームの戦術があり、それはブラジルのそれとは必ずしも一致しない。つまり、今あわててブラジルとしてのチ−ム戦術を確認している所なのである。
そこはそれ、世界有数の個人能力を有するブラジルであるから、攻撃の場面では面白いように色々なオプションを見せてくれる。したがって点もとれる。けれども昨日の試合を見る限り、守備に回った時、と言うか、攻守の立場が変わった時、ブラジルは、ほとんど守備の組織化がなされていない。中盤ガラ空きなのである。それゆえ、この試合でも前半はベルギーに押されっぱなし、中盤がコントロールできず、ベルギーに主導権を握られて、かなり焦りが見えた。幸いな事に昨日は明らかにジャッジミスで失点を逃れたけれど、ベルギーが無得点だったというのは、ラッキ−以外の何物でもない。90才の老翁が言うブラジルの弱さはこの辺を指すのではなかろうか?ただ、ブラジルにとってさらにラッキーなのは、とにかく勝てた事である。勝てた事で、日数が稼げる。一緒に練習ができるのだ。彼等がその気になれば、かつブラジルにその方策があれば、短期間で修正出来るだろう。
フランスやアルゼンチンも本当はこの時間が欲しかったのではあるまいか?そんな気がする太亮であった。


決勝トーナメント第七試合
日本VSトルコ
日本0-1トルコ

意外なスタメンと考えた人はどのくらいいるだろうか?僕には意外ではなかった。ずっとずっと前から、三都主をFWで使えと言っていたのは、他ならぬ僕だからである。メンバ−選出以前からずっとずっとこのオプションが有効であると考えていた。僕が意外だったののは西澤の起用である。なんで〜〜〜?僕はこれも何度も同じ事を発言して来た。「トルシェの考え方には共感出来る。が、起用方には首をかしげてしまう」と・・・。
うがった見方かも知れないが、いや、それに違いないけれど、つまりスターは自分でありたかったのではあるまいか?日本をこれだけ強くしたのは、トルシェ自身であって、中田でも稲本でも鈴木でもないのである事を表現するには、選手の起用方だけしかないと考えたのではあるまいか?監督が歯がゆい瞬間と言うのは、自分がそこ(ピッチ)にいれない事だったりするのである。ちょっと分かりにくいかも知れないけれど、つまり、自分の思い描いたプレーを 選手がしてくれている間は、非常に心地よい時間なのであるが、いつもそうであるとは限らないのである。ピッチに入ってしまえば、ある意味、選手は監督から自由になれる。その自由奔放さが目に余った時、監督は、交替と言うカードで意志を表現する事もある。鈴木の柳沢の先発落ち、三都主の交替、稲本の交替などをナナ目な目で観てしまうとそんな気がしてしまうのは僕だけだろうか?
さて、試合であるが、明らかに日本の選手は「丁寧にやろう!」「大事に戦おう!」「普通にやれば大丈夫!」というような気持ちが見え隠れしていた。すでにチャレンジャーでなくなっていた。中田浩二のバックパスのミスもそれを表す小さな事象に違いない。しかし、この小さなミスが、チーム全体にフっと集中力を切らせてしまった事を気づいていたジャパンのプレーヤーはピッチの中に何人いただろうか?ナカタは気が付いていた。大きな声で叱咤する。横目でそれをチラっと見ただけの宮本。この時に失点への台本が出来上がってしまったのだと思った。その時間僅か三秒。
宮本の頭の中にはハカンシュキルしか入っていなかった。松田も同様であろう。でも、試合序盤において、最初のCKでマークを再確認しないデフェンスリーダーがいるだろうか?得点を決めたユミトダバラが二列目から走り込んで来たなら仕方がないかも知れない。でも彼のヘッディングはスタンディングヘッドだったのである。つまり最初からそこにいたのである。宮本はそこにボールが飛んで来る事を見て、ユミトダバラがヘッディングする事も見て、ボールがゴールに吸い込まれる放物線を目で追っていた。彼はトルシェ塾の優等生ではあるが、やはり森岡だったらと言われても仕方がない選手であった。
けれどロシア戦以降失点していないじゃないか!と言う人もいるだろう。一点しか取られなかったじゃないか!という人もいるだろう。でもそれは、かなりの部分日本にとってラッキーな敵方のアクシデントが影響しているのである。ロシア戦では、モストボイ、イズマイロフがいなくなった。チュニジア戦では、カブシがいなかった。チュニジアが得意のドリブルで突破する戦術を捨てて、放り込んで来てくれた。このトルコ戦でも、トルコは一点取った後、無理して攻めて来る事はなかった。攻めて来なければ、単調な攻撃なら、不出来なセンターバックでも充分に役に立つ。厳しい言葉だがつまりはそう言う事である。彼にも海外からオファーは来るだろうが、彼はすぐには使えないだろう。これも重ねて言うが、彼にはトルシェの刷込みが強すぎて、彼自身のサッカ−観がきちっと育っていない。違うチームに行けば違う戦術、システムが待っている。彼がそれを素直に受け止められるまでには、時間が必要である。けれどもできればそいう経験をして欲しい。それが彼のサッカー観を育てる事になる。彼は今だ発展途上の選手である。(余談だが、仙台での試合ということだったのであるから、あえて、本拠地の近いアントラ−ズの選手で、スタメンを構成しても面白かったのではなかろうか?センターバック秋田というのも、今から考えれば、あながち悪い選択ではなかったようにも思う。そりゃないか?)

さて、予定通り、先取点を取ったトルコは、相変わらず、ボールへの集散を速く保つ事を維持した以外、引いて守り、チャンスにもほとんどバティシュルク、ハサンシュキル、ハサンの三人だけでカウンタ−攻撃を仕掛けて来るにとどめた。日本の選手は攻撃の場面でも、大事にボールを繋ぐ事に終始して、振り返ってシュートを打つことよりもパスを繋ぐ事ばかり考えていたようだ。その中で唯一、ドリブルで果敢に攻め上がり、トルコの選手を引きつけて、スペースを生み出していたのは、三都主だけであった。彼には時に四人のトルコ選手が集まった。ナカタも果敢にシュートを試みた。残念な事は、この二人がボールを持った時に、回りの日本選手が「あいつらなら大丈夫!』と踏んでしまったのか、フォローがなさ過ぎた事である。彼等の次の動きを読んでいなかったことである。ナカタがシュートすると見せかけてスルーを出す。それを受けるべき西澤は、そのナカタの意図を理解しておらず見ていた。結果、ボールが西澤の前を通り過ぎて行っただけであった。西澤は最低でも、ナカタのシュートの跳ね返りを予想して、スタートを切っていなければいけなかった。(試合からずっと離れていた選手はこの辺のカンが戻らないのである)この事一つ見ていても、先発西澤はなかったと思う。三都主をFWに使うオプションの時は、相棒は西澤や柳沢や鈴木ではなく、森島先発が良かったのではないか?と考える。彼は終盤5分で使う選手ではないというのは、誰でもが共通して認識出来る事だと思うよ。
後半、トルコが最も恐れた選手を下げた。三都主である。ここで、僕的には「ダメダコリャ!」であった。冷静に指揮していないのは明らかな事実であった。岡田前監督は「日本は戦術も運動量もトルコを上回っていた」と言うが、だからアンタは一勝もできなかったんじゃ!後半はトルコの考えたプラン通りの試合運びが出来ていたのではないか?後半、バテると予想して、そういうプランを立てて来たのだと僕は思う。けれども天候は雨で、しかも温度が低かったので、バテもさほど気にならず、最後まで集中力を持続出来たのだと思う。チャンスはたくさんあったかも知れないが、ワクのなかにシュ−トを打たなければ、次の展開は望めない。明神もミドルを打ったけれど、ワクの中に打たなければ、相手のミスも、アクシデントも望めない。この日、フルタイム出場した日本のトップの放ったシュートでワクに飛んだのは僅か一本である。これじゃあ、勝てないよ。
もうひとつ、これは実際、どこまでどうなのか分からないんだけれど、トルコと言う国が親日的な国であった事が、彼等の本来の激しいサッカーを抑えてしまって、逆に日本を苦しめたのではないかという仮説を立てたい。
日本としては、もっとガツガツ当たって来て欲しかったのではあるまいか?ガツガツ当たって来て、ペナルティエリア付近でFKをもらえる事を計算していたのではあるまいか?でも実際には、ハサンシュキルとナカタはチームメイトだし、局面局面でも、一触即発になるようなトラブルは一度もなかった。トルコの選手に余裕があったのかも知れないけれど、それ以上に、日本の闘争心を空回りさせてしまう様な所作がたくさんあったことを僕は見のがさない。少なくともトルコは、きたないサッカーはしなかった。激しいサッカーは、そこここに見られたが、クリーンなサッカーだった。これは予想以上に日本を苦しめたに違いない。
いずれにせよ、日本は千載一遇のチャンスを逃した。きっとマスコミや関係者は「次は四年後!」をキーワードに 話をするかも知れない。けれど、四年後には何の保証もないのである。たしかに世界で戦えるレベルまでは来た。間違いない。けれど、あと何が足りないのか?きちんと答えられる解説者はいるだろうか?ハングリーさ、個人スキル、 戦術・・・・。どれも違うような気がする。その答のヒントが隠されていたのは、同じ日の夜の試合にあったのではないかと思う。


決勝トーナメント第八試合
韓国VSイタリア
韓国2-1イタリア

イタリアは苦心惨憺の上で、予選リーグを勝ち抜いて来た。彼等は、彼等の所属するリーグの最終盤を闘って来たばかりのしかもその優勝争いを演じていた渦中の選手たちであった。疲労もピークだったろうし、精神的にも疲れは取れていない状況だったのではあるまいか。それでも予選を勝ち抜いたところで、時間にも余裕が出来ただろうし、チ−ム戦術の確認も出来つつあったのではあるまいか?それでもこの試合に望むために、主力センターバックのネスタをけがさせ、しかも最終戦でカンナバロが警告を受けてしまった。累積警告でこの試合出る事が出来ない。これは守りが要のこのチームにとって、何よりも大きなリスクを負ってしまったようである。

思えば、この大会、イタリアは強引に試合を進め過ぎていた様に思う。さらに審判の判定一つ一つにもナ−バスになり過ぎていた。自分達が世界で最高峰のリーグの選手であるという自負がそうしたのだろうか?特に中心選手であるトッティやビエリは、そのインタビューで、やたらと審判批判を繰り返していた。チ−ムの中心選手のイライラした気持ちは、やがてチ−ム全体に広がってしまっていた。イタリア選手全体がナーバスになり、そのプレー振りも荒々しいモノになって行った。時に肘打ちが入り、時に乱暴なタックルになって表れた。そしてその代償として、カンナバロの出場停止が待っていたし、ネスタの怪我もあったわけで、さらにはこの日の残念な結果につながって行くのであった。
つまり試合が始まる前に彼等は自分達をそういう状況へ追い込んでしまったのだ。審判が最低であっても、それを逆手にとれるだけの賢さが本来のイタリアにはあったはずである。相手が捨て身の闘争心でかかってきてもサラリと受け流せるだけの懐があったはずである。でも、チームリーダーが先頭に立って、冷静さを失ってしまったイタリアチームには、それだけの器量はなかった。けれど、さすがに垣間見せるテクニックには光る物が多々あった。実に惜しい。実に残念である。トッティは、確かに好い男かも知れないが、僕から言わせてもらえば、「裸の王子様」であった。パスも受け手の事は考えず出し、追いつけなければ罵倒する。シュートも強引なモノが多かった。上手に人が使えていなかった。セリエでは、その位のボールに追いつかなければ、チームメイトとして認められないのかも知れないが、Wカップという特別な状況で、個々の体力や運動能力を計算に入れず、あれだけ我意に試合を引っ張られても、なかなかついて行く事は難しい。それにくらべるとデルピエロは素晴らしかった。まず、チームのそんな雰囲気に染まらなかった。そして一度はチームのみんなをそんな険悪な心理状況から救い出す事さえしたのだが・・・。イタリアがこんな状況の中にいる所で相対する韓国はというと・・・。

アンジョンハンは、すでにペルージャから解雇されていると言う。他には欧州のサッカーを体験した事があるのは、柏在籍のハンソンホン一人。しかも二部である。まあ、この試合に関しては、経験もクソもなかった。スタジアムはもちろんの事、韓国全土が紅く染まってしまったようであった。国中全体が火の玉のような闘志の固まりであった。そこに世界一のリーグも世界最高の守備力も太刀打ちができなかった。くさい言葉で言えば、「魂」の戦いであった。アンジョンハンがPKをはずし、暗雲立ち込め、先制されても怯む事はなかった。前に前に出た。肘打ち喰らって出血しても、カニばさみを受けても、立ち上がって行った。ヒディングの選手起用は逆立ちしたって、トルシェにはできまい。交替で起用した選手は総て攻撃要員。最後は守りの要、ホンミョンボを下げて、韓国の英雄、チャブンクンの息子、チャドゥリを入れる。形は違えど、雰囲気はゴンを入れたのに等しい。そしてこの若者の活躍は、再びスタジアムにまた傷んだ、疲れた選手たちにエネルギーを注入した。そしてサッカーの神様は、時にいたずらな仕事をする。試合序盤でPKをはずしたアンジョンハンが、アメリカ戦とまったく同じような形でのゴール。その時、スタジアムだけでなく韓国全土に歓喜の声が上がった。

昼間、日本が負けた時には口惜しさもあったが、別に泣いたりはしなかった。けれど、この韓国が勝利を収めた瞬間、不覚にも涙してしまった。別に殊更韓国を応援していた訳ではない。むろんこのチームには大変好感を持っていた事は事実であるが、アズーリにだって期待していたのである。でも、彼等が彼等に与えられた総ての力を使い切って、闘い抜いて、勝ち得た勝利は、良質の時代劇ののような感動を呼ぶ物だった。(決して良質の映画ではない。あくまで時代劇なのだが・・・)この結果は、審判の誤審によるものでは、決してないし、開催国ゆえのホームタウンデジションは多少はあったものの、イタリアがそれで不利に成る程のモノではなかった。
イタリアは、小賢しい審判批判などせずに、素直にこの結果を受け入れるべきである。
テクニックや戦術だけでは勝てない事を韓国は証明した。もう一つ大事な物は「魂の闘い」であった。


準々決勝
いよいよベスト8の戦いである。ベスト8と呼ぶには意外なメンツであるとは思うが
やはり、各グループを勝ち上がり、さらに強豪をぶち倒して来たチームなので
これはこれで楽しみたい。まあ、ここにジャパンがいないのは仕方がない事なのかも知れないよ。
準々決勝トーナメント第一試合
ブラジルVSイングランド
ブラジル2-1イングランド

メンバー構成は、圧倒的にブラジル。得点能力もブラジル。守備の能力は、全体的に若い選手だけれど、イングランドがやや上か?ウ〜〜〜ム、基本的にはブラジル有利というのが、一般的な見方だと思う。特にブラジルは、ここまで決してチームプレーで戦って来たのとは違う。優れた個人の集合体で勝って来たのである。ただ優れているだけでは、ここ迄は来れないだろう。正味の話。やはり、そこはそれ、ブラジルという国の選ばれし男たちを意味する「セレソン」であるから、ここへ来て組織みたいな物を見せてくれるに違いない。本当の意味でその真価を問われるのは、この試合である。

イングランドは、オーウェンが二試合程前に股の付け根を痛めており万全でない。が、ヘイスキーは相変わらずのようである。ベッカムは大会前の骨折など微塵も感じさせない素晴らしいプレーを見せてくれている。彼のすごい所は、走りながらでももちろん止まった状況からでも、思い通りに思い通りの所へボールを運ぶキックの精度を持っている事である。
しかもその球が自由自在に変化する。彼は今大会がピークだろうが、その素晴らしい足技は、他のチームの誰と比べても遜色はない(実は、走り方、バランス、ルッキングの仕方等を見ていると、小野が彼のスタイルに良く似ていると思ってしまった。小野は次の大会当たりがピークになるだろう。是非ベッカムに負けない選手になって欲しい物である。もう一人、メキシコのブランコもプレースタイルは似ている)
さて、試合であるが、序盤15分迄は、ボクシングの1Rよろしく、お互いの考え方をさぐり合うような戦い方であった。
ウ〜〜〜ム、ちょっとつまんない。イングランドはもっとサイドから攻撃しなけりャダメだと思うけれどなあ。ベッカムもかなり献身的なデフェンスをしている。あの彼がよくもここ迄変わったものである。ブラジルは3Rのひとり、ロナウジーニョが今迄の試合と違って右サイドに張っていた。これはイングランドの左サイドの攻撃の起点であるコールズを押さえ込むためのモノなのだろう。さて、そのサイドでイングランドのファール。こちらからこの距離だとやっぱり、ロベカルでしょう。ちょっとわくわくして見ていたのだけれど、カベに入っていたイングランドのスコールズが飛び出す。あれ?あれはいいのか?僕が主審ならアゲインである。この日の主審、あのイタリアVS韓国の一戦後で今大会の審判の精度が問われている時に、何だか的外れな審判であった。スコットランドの方だから、ぶつかり合いでは笛を吹かないが、ツマラナイところでの笛が多かったように思う。
さて、試合に戻る。ロベカルのFK後、すぐのプレーで、ブラジルの心配されたデフェンスのミスが出る。イングランド中盤右サイドから前線のオーウェンへのフィード。ブラジルDFルシオが不用意なトラップミス。ワンダーボーイ、オーウェンがこれを見のがすはずもなく、GKの間もはずして、やすやすとゴール。簡単なプレーに見えるけれど、あのキーパー外す動きと間と言う物はなかなかできるもんじゃないのよ。恐るべしワンダーボーイ。傷んでいてもやる事はやってしまうのね。この一点でゲームが動いた。ブラジルのアタリ方が強烈な物に変わる。イエローも出始める。ムムム暗雲立ち篭めるピッチ上。前半終了間際、ハイボールを処理した後、顔面からエビ反り状態で落下した、イングランドGKシーマンが腰を傷める。38だもん。そりャ辛いよ。その治療に約3分。それがそのままロスタイムになる。試合再開後もブラジルのアタリはすごい。ブラジルエンド右サイドでベッカムを前から後ろからスライディングで囲む。でもさすがベッカム、こんなの受けたら、また怪我しちゃうからね。牛若丸のようにジャンプしてかわす。ウ〜〜〜ムうまい。と、感心していたら、そのこぼれ玉をブラジルMF、3Rの一角ロナウジーニョが、拾ってドリブル。早い、巧い、すごい。イングランドデフェンダーを翻弄し、引きつけて、軽くアウトサイドで、右へ流す。待っていたリバウド、このチャンスを確実にダイレクトのインサイドキックで左サイドネットに突き刺した。1-1、同点。これで試合は分からなくなった。と言うか、ブラジルが有利になった気がした。ここで前半終了。
(実はこの日、とある新聞の今大会ベストイレブンを聞かれて、MF一人挙げよ。というので僕は、このイタズラっ子みたいな容貌のブラジルの若手MFの名前を挙げていたんだ。偶然とは恐ろしい物であるが、MFでしょ。ナカタ?イナ?オノ?ウ〜〜ッムでしょ。ジダン?フィーゴ?トッティ?なんか違うでしょ、もういないでしょ。レイナ?シュナイダー?バラック?ブランコ?今一つでしょ。そうなるとリバウドかロナウジーニョ、でも、リバウドの動きは、ほとんどFWのそれだったと思うのね。そこで僕はロナウジーニョを選んだのでした)
前半の印象は、最後のロナウジーニョの突破が素晴らしかったせいもあるけれど、まったく個人技VS組織の戦いであった。ブラジルはイングランドに関してスカウティングは充分にした。と発言していたけれど、さほど大きな対抗策を取ってきているようには見えなかった。きっとね。「イングランドはおおよそ、どの試合も大体11人で戦っている。その内で、手を使うのは常にひとり。さらに追記すべきとして、ベッカムという不思議な頭をしたいい男がいるらしい」程度のスカウティングじゃなかったのか?そりゃまあ、冗談だけれどさ、ブラジルと言う国は、基本的にいつでも自分達が世界最高だと自負している事は間違いないと思うんだ。試合に負けたりするのは、監督が悪いか、審判に恵まれなかった時だけだと考えているんじゃないかと思うんだよね。まあ、間違いなく、それだけの人材は確実に備えているけれどね。

後半開始。ベッカムは攻守に渡り相変わらず献身的な動きをしている。それに比べ、オーウェンは怪我の影響か?動きに精彩が見えなくなって来た。本当なら、ベッカムはもう少し上がったポジションで、ボ−ルの配給ができると良いんだけれどなあ。試合の膠着状態を破ったのは再びロナウジーニョだった。イングランドゴールから30mほどのFK、ロナウジーニョが無造作にボールを逆回転させてセット。両チーム選手はゴ−ル前でボールを待ちながら揉み合う。レフェリーの笛、両チームを分ける。そこに一言声をかけたシーマン。一歩、二歩、その揉み合いに近付き、治まった所で、ポジションを取る。当然の事ながら、FKのターゲットは、今揉み合いがあった辺りでハイボールの競り合いになると思われた。だから、シーマンのポジショニングもゴールラインより少し前に出たポジショニングになった。しかし、ロナウジーニョはその僅かなポジショニングのミスを見のがさなかった。ボールはむしろ無造作な感じで蹴られた。そして、予定通り、ハイボールの競り合いになる辺りに向かって曲がって落ちて行くと思われたのだが、意外や意外、ボールの放物線は曲がらずにシーマンの頭を超えて、サイドネットにまっすぐ飛んで行ったのである。そこで今何が起きたのか信じられない!と言った様子で立ちすくむシーマン。ゴ−ルを決めたロナウジーニョは、してやったりと大喜び。いたずらッ子の本領発揮である。2-1。ブラジルリード。これでこの試合は決った訳ではないけれど、昼間の試合でもあっただけに、イングランドの選手に焦躁の色は隠せなかった。ベッカムが手を叩き、皆に声をかけ鼓舞するが、顔が上がらない選手もいた。
試合を決めたのは、次の一点ではなかった。意外な事にこの日のヒーローの退場が、この試合の雌雄を決してしまったのだ。この判定は、明らかな誤審であった。なんでもないプレーとして流されても、試合をしている22人もそれを見守るスタジアムも誰も気にも止めなかったであろう。また、サッカーを知らない人は、何が反則だったかも分からないであろう。

いずれにしてもロナウジーニョが退場になった。これで10人VS11人。イングランドが有利になったかと言えば、そうではなかった。ブラジルはこの「事件」を契機に守る意識が一つになった。同時にあえてドリブルで突破する戦術を捨てて、引いて守る事にした。カウンタ−攻撃が得意のイングランドにとって引いて守られたら、スペースが無くなって不利な事甚だしい。ドリブルで持ち込もうと考えても局面局面では個人技は、はるかにブラジルが上回っているのである。それでも負けたら終わりのトーナメントだから、イングランドも果敢に攻め続けた。攻めるためには守備にリスクを負わなければいけない。ブラジルはそこに付け込んでカウンターを仕掛ける。まるで持ち味が逆転してしまった感じである。さらに小さな部分、たとえば、スローインやフリーキック、ファ−ルの後の治療するか否か等の部分でもずる賢い程に時間を使う。こういうことやらしたら、ブラジルにかなう国はいない。さらに最終盤では、攻撃出来るのに、コ−ナ−ポスト付近までボ−ルを運び、巧みにキープして時間を稼いだ。イングランドにそれを打ち破る術はなかった。最後は、悲しげに首を振るベッカムの表情が総てを語っていた。試合終了。ナイスゲームとは言い難いゲームではあったが、決して凡戦ではなかった。この日のイングランドは、ブラジルにデフェンスの意識と組織を目覚めさせてしまった。いや、目覚ませたのは主審かも知れないが・・・。ちなみにマンノブダマッチ(この試合の最優秀選手)はロナウジーニョだった 。彼はその時、すでにピッチにはいなかったし、次の試合のピッチにも出る事は許されないけれどね。おかしな話である。


準々決勝トーナメント第二試合
ドイツVSアメリカ
ドイツ1-0アメリカ

この試合には、少し不満が残る。ドイツは中5日、アメリカは中3日での対戦なのである。ここへ来て二日間の違いは、あまりに大きくないか?中3日のうち、最低でも一日はクールダウンと休養に当てなければならないだろう。残りの二日間で、アメリカのように対戦相手を分析して戦うチームは、その対策を体と頭に叩き込まなければならないのは、かなりハ−ドな事だと思う。くじ運が悪かったからなどとこのレベルでは言い訳はしないだろうが、でも今回のように厳しい気候条件の中の試合なのである。やはりFIFAはシステムや開催時期、欧州のカップ戦の在り方なども含めて考え直すべきだろう。同時に審判もやはり今大会レベルが低いと思う。イタリアのクレームは取るに足らないけれど、全体を眺めてみると、やはり、格差がありすぎるし、ウ〜〜〜ン?と首をかしげてしまう判定が多すぎるように思う。これに対してもFIFAは考え方を変えて行かなければいけないと思う。
さて、試合に戻る。期間は短かった物の、アメリカはキチンとドイツを分析し、それに対する方策もキチンと組み上げて来た。素晴らしい。さすがスポ−ツ先進国。しかし、方策は決っていた物の、いかんせん体力は完全に復活していなかった。それでもシンプルでスピード溢れる攻撃で何度もドイツゴールを脅かした。その度に、ドイツGKオリバーカーンが アメリカの希望の前に立ちふさがった。実際の話。この試合は、アメリカ対オリバーカーンのようであったし、試合が進むに連れ、その色合いは濃くなって行った。そして、アメリカはカーンの壁を破る事は最後迄出来なかった。このドイツのチャールトンヘストンに似た守護神の、この試合にかけた集中力の高さは、半端な物ではなかった。彼自身試合終了後、立てなくなる程消耗していた事でもそれが分かるだろう。
アメリカは、帰って来た司令塔レイナを中心に果敢にかつ冷静にドイツの弱点を突きまくった。試合終了間際には、レイナが最終ラインに位置し、ハーフウェイラインから攻撃を組み立てた。でも、本当なら、もう一人くらいボールをキープし、コントロールできる卓越した選手が欲しかった所だろう。そしてレイナのポジションをもう少し上に保ちたかった。

しかし、アメリカは本国ではまったくサッカー人気はないものの、今後サッカー後進国とは言えないだろう。この緻密な分析能力と、その方策のレベルの高さ、それを徹底してピッチでやってみせる選手たちは、新しいサッカーの考え方、在り方を示す物だと思う。今迄だって、スカウティングや分析はしていなかった訳ではない。どのチームでもしている事なのだけれど、その質の高さが違うような気がする。その分析に対してピッチの上で充分に選手個々が対応出来なければ意味を為さない。その方策に沿って、個々の選手とチーム全体が対応する高い能力が非常に大事であると言う事が今回のアメリカの活躍で 証明されたと思う。


準々決勝トーナメント第三試合
韓国VSスペイン
韓国0-0スペイン
PK5-3

この試合もかたや、中三日、かたや中五日。ウ〜〜〜ム、これは公平とは言い難いなあ。いくらパワー溢れる韓国だって肉体的、精神的な疲労は蓄積されてきているだろうし、辛いだろうなあ。
さて、それでも試合は、真っ赤ッかの中で開始されたのである。スペインは無敵艦隊の象徴とも言えるラウルが欠場。韓国の方はと言うと、DFキムテオンがジャパンの宮本と同じようなフェイスガードで登場した。後から分かった事だけれど、このフェイスガード、キムテオンがイタリア戦でビエリの肘打ち喰らって鼻骨骨折した後、宮本の事を思い出して「あれが欲しい!」とリクエストして、急きょ大阪からスタッフが駆けつけ、顔型を取って作った物だそうである。単なるガラス繊維のフェイスマスクなんだから、韓国国内でも作れそうな気もするが、まあいいか?宮本のそれと差別化するためか、赤が基調のモノになっているけれど、どことなく、昔懐かしい「赤影」な感じの出来上がりであります。
試合は、予想以上にお互い引き気味で、韓国も簡単に攻め込めないでいて、いきなり膠着状態な始まりであった。これは、たぶんスピードに優る韓国の攻撃をさせないためにスペインが意図的に仕組んだ物だろうと思う。ラウルがいなかったせいもあるのだけれど、スペイン、韓国ともに腹のさぐり合いな前半二十分迄の展開であった。その中で特に目についたのが、韓国ボランチ、キムナミルと仮面の忍者赤影のキムテオンのヨミの良さと、それを行動に移す素早さであった。スペインの攻撃の芽をことごとく摘んでいたのは、この二人であった。
さて、前半二十分過ぎからスペインも攻勢に出始めた。しかし、ここで気になったのが、スペイン選手があきらかに審判に対して不信感を持ち、それを露骨に出している事であった。今大会、確かに審判の判定では大きな問題がたくさん出てきている。特に普段からハイレベルな試合をしているヨーロッパの選手には、「なんだよ?あいつ!」みたいな事がたくさんあるだろう。でも、不信感を持っていれば、その気持ちは審判にも伝わるし、別に贔屓するつもりでなくても、審判の方だって人間なんだから感情だって出てしまう事もある。試合後、イタリアやポルトガルは「我々は12人を相手にしなければならなかった!」と言っているけれど、その根っこは自分達で作ってしまったモノなんじゃないかと思う。この試合でも、スペインのホワキン、デペドロ辺りはさかんにクレームをつけていた。それが自分達の首を絞めているのを彼等は気がつかなかったのだろうか?
前半25分頃、キムナミルが後ろからタックルを受ける。笛は吹かれなかったけれど、あきらかなファールであった。このプレーでキムナミルが足首を傷める。かなり重症のようだ。それでもプレーを続けるが、31分、イ・ウリョンと交替した。ウ〜〜〜ム、辛いね、デーハミングク。でも細かなポジションチェンジをしても韓国のレベルは変わらなかった。恐るべしヒディング。良く鍛えてあるわ。(でもさ、この一連の事見てみても、韓国だけが贔屓されていない事が分かると思うんだよね。要するに審判は下手ッピだけれど、下手ッピなだけで、意識的な誤審はしていないんだよ)
36分、ゴール前でヘッディング後、なぜかイエロが倒れ込む。Vを見ても接触はない。ウン?疲れか?解説者は(高木)アタリ所が悪かったのでしょう・・・。と、言っていたけれど、それはないだろ!
前半終了前は、スペインの猛攻であった。これに対する韓国の足は止まっていた。ホワキンはFKから素晴らしいセンタリングを入れる。が、素晴らしすぎて、味方も合わせ切れない。終了間際のイエロのヘッドも素晴らしい物だったけれど、踏ん張って、首の皮一枚で防ぐ。前半終了。
韓国はたぶん、連戦の疲れがピークになってしまっているのだろう。でも、ここで、そういう疲れが出て来るのは、僕から見ると良い事だと思った。体から抜け切らなかった活性酸素が、出てしまう直前には非常にだるく感じる。が、汗と共に出きってしまうと、逆にマラソンのセカンドハイのように、体が軽く感じて、動きやすくなるものなのだ。
ところで、キムナミル、傷めた足をグルグルにアイシングしながら、おぶられて退場。ウ〜〜〜ム、ひどいみたいだな。

後半開始。問題のひとつ目はここ。後半5分、スペインFKからゴールイン。ところが笛が鳴る。競り合いの混戦の中でファールがあったと言う。でもVを見る限り、ほとんどイーブンな競り合いである。それぞれウェアを引っ張っているけれど、だとしたら、イーブンである。なんで?どれ?審判は明確にすべき所であった。たとえば、反則を犯した選手を指差すなどの行為でどこで誰のファールなのか知らせるべきだったと思う。カマーチョ監督、怒ってベンチでボトルを蹴りあげる。
さて、この辺から試合が動き出した。韓国もアンジョンファンからのロングボールなど、なかなか鋭い攻撃が始まった。しかしなんだね。この辺から、スペインのホワキン辺りが切れ始めていた。もう普通に自分でファールしてても食って掛かる。中には、どう考えても一発レッドでもおかしくないファールもあった。あまりにひどいので、ヒディング監督も怒って上着を脱いだりしていた。やる気じゃン!ヒディング。そのファールの後も、ホワキン相手のせいにするもんなあ。一枚の警告では物足りないのかねえ。ここで二枚目出しちゃえば、逆にスペイン勝てたかも知れないのにねえ。とにかく試合は大荒れながらも後半終了。延長戦へ。
さらにこの延長戦前半に、そのホワキンのセンタリングが 物議をかもす事になる。ホワキンゴールラインぎりぎりからセンタリング。空中にある間に笛が鳴る。そのボールをモリエンテスがヘッド。ゴールに吸い込まれたが、当然ノーゴール。
たしかにあれはウガンダのラインズマンのミスジャッジである。確かにラインを割ってはいない。これがスペインサポーターの反感を買っているのだろうが、笛が吹かれた時点で、韓国選手はプレーを止めていたので、そのまま続行されていたとして、ゴールインしたかどうかは、定かではない。むしろ笛が吹かれた後、プレーを続けたモリエンテスに問題ありである。ここでもホワキン、イエロ、モリエンテス他スペイン選手は、審判に食って掛かる。仕方ないじゃン。もう笛吹かれちゃったんだから・・・。(でもまあ、これは分からないじゃないけれどねえ・・・)

僕はスペインが勝ちでも良かったと思うけれど、そのためには彼等はミスジャッジにもう少し寛大であるべきだったと思うね。 もう少し、寛大に楽に試合を進めていれば、スペインはこんな苦労はしなくて済んだと僕は思いますよ。
スペイン、イタリア、ポルトガル、他審判の判定に不満を持って帰国した選手たちは、皆、強豪な訳よ。自分達こそ世界最高レベルのリーグでサッカーをやっている自信と自負を持っている訳でしょう。だとしたら、「審判によって負けた!」なんて、セコイこと言うなよな。認められなかった得点があったとして、それだけの得点機会しか作れなかったことを恥じるべきだと思うよ。もっとおおらかにやっていれば、得点機会もたくさん作れたと思うのだけれどいかがなものでしょうか?最終的にこの試合は、PK戦に持ち込まれた。そして、予想通りと言うか、はずすならこの人ね。と考えていたホワキンが外した。これは偶然ではないよ。彼は外すべくして外した。彼はテクニックもスピードも兼ね備えた素晴らしい選手だけれど
残念ながら、心のコントロールが出来なかった。若いせいもあるけれど、心のコントロールの効かない人間にボールがコントロールできるはずもない。落ち着いて考えてみればこんなに簡単な事はないと思うし、分からない選手たちでもないと僕は思うんだけれどなあ。翌日、FIFAの欧州審判部長のビジャルさんがFIFAに抗議文を提出して辞任した。

さて、誰が何と言おうと、韓国は世界のベスト4に残ったのである。素晴らしい。サポーターのバックアップもちょっと恐い事思い付いてしまうくらいスゴイし、団結しちゃっているのねえ。その割にはお行儀が良かったりする。まあ、あのサポーターの中で試合するのは、相手としては、辛い物があると思います。でも良く考えて欲しい。それ以外の条件は、スペインの方が、恵まれていたはずである。
また、今回の日本や韓国のように対戦国に対して居心地の良いキャンプ地やグラウンドを提供した開催国が、かつてあっただろうか?フランス大会の予選時、アウェイで戦いに行けば、グラウンドに釘がばらまかれていたり、あえて、ボコボコの練習グラウンドだったりしたものである。本大会中だって、試合前の練習は通常ホームが有利な時間帯に練習が出来るのに、スペインやイタリアの希望を聞いて、そちらを優先していたではないか!列強の敗退国の皆さんよ、贅沢ぶっこいてるんじゃないよ!ちゃんとそういう事を報道せいよ。あなた達が負けた事を素直に認めなさい。


準々決勝トーナメント第四試合
トルコVSセネガル
トルコ1-0セネガル(ET)

この試合は、セネガルのチーム内部の不協和音が、思いきり影響してしまったんだと思っている。実際にそういうことがあったか否かは報道もされていないし、どうなのか証明は出来ないけれど、プレーからは、そんな事を安に感じさせるタイミングがたくさんあった。
対してトルコは、組織力と言う点では、良く鍛えられている。ここのチームも個々の選手の潜在能力は非常に高いから、組織と噛み合うと、そりゃ、やっぱり強いよね。日本戦の後半、彼等は引いて徹底して守った。それでも行ける自信があったんだと思うよ。この試合見ていて、そう確信しました。実は攻撃のアイデアだって、たくさん持っているのにね。

さて、試合は開始早々、トルコのエンジンが暖まる前にセネガルが仕掛けた。セネガルの個人の能力は、今大会中、最高かも知れないと思った。それだけの活躍であった。デューフ、ファティガ、アンリカマラ、コリ、どの選手もスンゴイ。
彼等一人一人に対して、デフェンダーは必ず複数付いた。それでも突破される。翻弄される。こりゃ、かなわないよね。でもサッカーは、それだけで終わらない。だから面白い。前半ファティガからデューフにフィード。でもデューフは、反応しなかった。デューフのことを睨んでいるファティガ。その5分後、今度はデューフからファティガへフィード。これにも反応しない。今度はファティガのことを睨んでいるデューフ。知らん顔をするアンリカマラ。この日の試合は、この二つのプレーに象徴された物であった。どんなにすごい個人能力の集団であっても、その一人一人を繋ぐ糸がプツンと切れてしまっていた。蜘蛛の巣のような組織で張り巡らされた守備網に、ことごとく引っ掛かり、そしてカウンターで反撃された。ハカンシュキルは、股の付け根を傷めていたらしく、途中交代したけれど、代わりに入ったイルハンが活躍し、最後はエキストラタイム4分にゴールデンゴールを決めた。ちなみの彼にボールを出したのは、日本戦でヘッドを決めたユミトダバラであった。(予選の時は名前が分からなかったのよ。真正モヒカン一部ハゲ有りの彼です)やっぱり、要注意人物だったじゃない。
とにかく、セネガルタイフーンは、大きな記憶を残して去って行った。その卓越した運動能力、良い試合の時は、優れた組織力、チーム力も見せてくれた。今大会予選が始まる前迄は、名誉よりお金と考えて、まったくやる気もなく、代表の試合に出たがらなかった選手たちをDFのチセが、フランスのレストランに集め、説得してようやく集まったチームとは、とてもじゃないけれど思えない素晴らしいパフォーマンスであった。次のステップのセネガルが是非見てみたいと思ったのは僕だけではないと思う。

さて、再びトルコであるが、この日の試合を見る限り、日本が負けたのは、順当だった気がする。強いです。この次は、予選でも当たったブラジルだけれど、ブラジルがなめてかかったらやられます。予選の対戦の時だって、先取点取られているんだからね。しかも次の試合はロナウジーニョがいない。ロナウドも怪我気味らしい。トルコもハカンシュキルはフルタイムは無理そうだけれど、後はそんなに傷んでないからね。結構、好試合が望めちゃいそうです。楽しみです。ハハ


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