夢(親父が旅立つ日)
非常に重い疲労感を感じた一日を終えて、家に帰る途中で亀を拾ってきた。
そのまま2階へ上がり、床に放置する。
しばらくすると、いつものように、親父が帰宅して、居間の電気を点ける。
しばらく2階に居てから下に降り、居間を開ける。
夜に帰ったはずなのに、南側の窓からは夕日が射していた。
「明日は温泉旅行だってさ。」親父が言う。
「どこへ?」と訊ねると、「知らない。○○っていう処らしい」と言う。
聞いた事がある地名だ。「草津の方じゃないか?」と私が言うと「そうかな」と。
「そろそろ寝るかな」と夕日が射しているのにベッドの方に、居間の電気も点けたまま行く。
こんなこと言ったことがないのに、何故か「おやすみ」と言ってみた。
親父も「おやすみ」と返してきた。
「電気消すよ」と2階に帰る途中で言うと、「ああ、3つも点いてると何だと思われるからな」と言いながら親父は自分の寝室の電気を消した。
そういえば1階の3つの部屋の電気が全部点いていたんだ。
ついさっきまで雨戸が開いて夕日が射していたのに、1階は暗闇になった。
2階に上がり、部屋に亀が居ることを思い出した。
餌をあげなくちゃと思い亀を探すと直ぐに見つかった。
都合好く、レタスの葉を2枚、一緒に拾ってきている。
レタスの葉を亀の傍に投げると、ワシャワシャを凄い速さで食べ始めた。
急に、逆流性食道炎による吐き気で目が覚め、激しい疲労が戻ってきた……
不思議な夢を見たなと思いながら、夢の中で一瞬だけ、このひどい疲れから開放された感覚を味わった。
本当の開放はいつになるのだろう。
実は、今年の2月28日に、親父が倒れた。
そして、正に東日本大震災の起きた直後の時間に、私は担当医から「脳内出血で意識は戻らないだろう」との説明を受けた。
その後、入院期限を過ぎたため別の病院に転院し、6月に入ると「だいぶ容態が悪い。恐らく今週末まで持たないだろうと」と、付添うように言われた。
約1週間ほど、従兄弟と交代で病院に寝泊りをし、休むために家に帰った時に見た夢が、この「夢」である。
不思議な夢だけれど、なぜか「覚えておこう」と思い、起きて直ぐにmixiに書き込んだ。
夢から覚めてその足で病院に向かい、同日の穏やかな午後に親父は旅立った。
こういうことって本当にあるんだなと、説明の出来ない不可思議な思い出の日が残った。