作業手順 ------- 180分コース(続き)
の作業でドライブシャフト・ブーツの交換が終わりました。
ドライブシャフトの車体への再組み込み作業は取外し作業の逆手順で行いますが、このまま組込んでしまう簡易法と、ロア・エンジンマウントの交換も同時に行う場合の標準法があります。後者の場合はインナージョイント・ケースも外さなければなりません。
*再組込み(簡易法)
この方法は、インナージョイント・ケースを取外さずにそのまま組込んでしまうが、バンドを締めるのにコツを要す。
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- 車体側の三叉ジョイント・ケース内部の古いグリースを拭き取り、新しいグリース 250g を補給する。入れ過ぎると走行時にブーツから噴出するので注意。
- 三叉ジョイントをジョイント・ケースに差込み、上側が出来るだけ開くようにして適当な箱等でドライブシャフトを受けてやる。
- ジョイント・ケースにインナーブーツを被せる。固定バンドは被せる前に緩く仮止めしておく。(赤矢)
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- ブーツ固定バンドの締付部をエンジン側(青矢)に持っていき、ラジオペンチ等で締める。余分な長さは切っておく。
- 作業しにくい場所なので、左写真のような巻込み式締付部のバンドが使い易い。普通の平止めタイプの場合は、締付部のバンド末端を太目の割りピンで挟み、割ピンに巻取りながら締めつけた後、バンドを曲げて固定し、割ピンを抜き取ると旨くいく。
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ここからの再組立作業はドライブシャフト・ブーツ交換(1)で行った分解作業を逆の順序で行います。
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- 固定されたインナージョイント側のブーツを引張らない様に注意しながらアウタージョイント側のドライブシャフト先端をステアリング・ナックル部のスプライン穴に戻し、ドライブシャフト側のスプラインと無理なく合うように調整しながら、ドライブシャフト・ユニットを押し上げる。
- この時、スプライン部には薄くグリースを塗っておく。
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- ステアリング・ナックル部を支えているジャッキを少しずつ下げながら、ドライブシャフト先端をステアリング・ナックル部に挿入していく。ドライブシャフト先端が表側に出てきたら、ナットで仮止めする。ネジ部には薄くグリースを塗っておく。
- ステアリング・ナックル下部のロワ-・ボールジョイント先端をロワ-・サスペンションアームのあなに差込み、ナイロストップ・ナットで固定する。テーパー嵌合部には薄くグリースを塗っておく。ナットの締付トルクは5kgfm。
- 仮止めしておいたドライブシャフト・ナットを締めつける。ナットの締付トルクは35kgfm。サイドブレーキを強く引いておく。
- 割ピンの穴の位置を合わせながら、廻り止めキャップをナットにかぶせ、新しい割ピンで固定する。
- タイヤを取付け、ウマを外して作業を終える。
**再組込み(標準法)
リペア・マニュアルにはこの方法が述べられています。
ここではインナージョイント・ケースも含めたドライブシャフト・ユニット全体を外します。
この方法の場合、右側のドライブシャフト・ユニットを外すのが厄介ですので、この右側についての方法を主に紹介します。
マニュアルではドライブシャフト・ユニット全体を組んだまま外す事になっているのですが、交換法(1)で紹介したインナージョイント部までの分解をまず行い、次にインナージョイント・ケースを含む中間ドライブシャフト部を外す、2段階方法を取った方が作業が容易です。
この方法を取るメリットは、組立時にインナーブーツのインナージョイント・ケースへの締付が容易なのと、ロア・エンジンマウントの交換作業が可能になる点です。 従ってこの場合、ブーツの交換とロア・エンジンマウントの交換を同時に行うことをお薦めします。
(1) 中間ドライブシャフト部の取外し。
# 右側ドライブシャフトの場合
中間ドライブシャフト部は下図の様に、エンジン下部クランクケースのベアリング受突起部〈黄色部:8)に中間ベアリング保持ボルト〈赤色部:6)で中間ベアリング〈青色部:7)を介して留められています。
保持ボルトを止めるナット(9)には車体の下に潜らないと手が届きません。従って、車体はウマでしっかりと支えて置かなくてはなりません。

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- 車体の下に潜るとフレームの開口部からナットにアクセス出来るので、レンチを使いナットを緩めます。送り角が余り取れないので、無段階ラチェットレンチか小型のラチェットハンドルがあると便利です。
- ナットを6mm程度緩めて保持ボルトを浮かせ、180度回すと中間ベアリングを抑える爪が外れて、中間ドライブシャフトを抜くことが出来るが、ナットを完全に外した方が簡単である。
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- ナットが外れたら、ベアリング受突起部とジョイント・ケース部の間に適切な厚みのレンチを入れてこじると、ベアリング受からベアリングが浮くと共に、ディファレンシャルに嵌合するドライブシャフト先端のスプライン部も抜けて、中間ドライブシャフトを抜き取ることが出来る。
- 左写真は外された中間ドライブシャフトで、青矢がジョイント・ケースのインナーブーツ固定部、黄矢がディファレンシャルに嵌合するスプライン部、赤矢が中間ベアリングである。
- 抜けた中間ドライブシャフトは清掃後、各部(特にジョイント・ケース内面)の損傷をチェックしておく。
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(2)ドライブシャフト・ユニットの組込み
- 清掃した中間ドライブシャフトのジョイント・ケース部に、250gのモリブデングリースを補充してブーツ交換(1)で組立てたドライブシャフト・ユニット本体の三叉ジョイント部を挿入した後、インナー・ブーツを被せてベルトで固定する。
- 組立てたドライブシャフト・ユニットは下図のようになる。
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- ベアリング受突起部に保持ボルトを左下写真の位置にセットし、ナットで仮止めしておく。
- 組立てたドライブシャフト・ユニットを、中間ドライブシャフト先端のスプライン部と中間ベアリングの外周にグリースを塗り、ベアリング受突起部の穴に通してもとの位置に戻す準備をする。
- 中間ドライブシャフト先端のスプラインをディファレンシャル部に嵌め合わせる。Oーリング(3)/リング(4)/ダストカバー(5)もセットする。
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- ベアリング受突起部のベアリング受〈赤矢)に中間ベアリングが収まる様に、ドライブシャフト・ユニットごと押し込む。この作業は車体下に潜っておこなうので助手にドライブシャフト・ユニット本体を持たせるとやり易い。
- スプライン部がディファレンシャル部に、中間ベアリングがベアリング受に、正しくセットされたのが確認出来たら、保持ボルト〈青矢)先端の爪〈黄矢)を180度回して〈青矢印方向)ベアリング外周に引掛け、ナットで締めつける。
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#左側ドライブシャフトの場合
左側ドライブシャフトの場合も基本的には右側と同じですが、ディファレンシャル部に嵌合したスプライン部にサークリップ/C−リング〈赤矢)がはまり、抜けない様になっているので、ブーツ交換(1)で紹介したアウター・ジョイント部の分解・組立法と同じ作業がスプライン部の脱着時に必要です。
組み上がった左側ドライブシャフトを下図に示します。
ここからの作業は *再組込み(簡易法) で行った再組立作業と同じです。