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横田ハープシコード工房作品ギャラリー

ようこそギャラリーへ。 ここに掲げた写真は自己紹介用に作った絵はがきになったものです。 解説文は少しだけ書き足しましたが、興味のあるかたはチェンバロ製作史概観のページもご参照下さい。


イタリアン・チェンバロ 1998年製作
イタリアンチェンバロ
イタリア様式のチェンバロは、細長くて軽やか。数学的にも美しいその外観は、チェンバロの原型としての尊厳を感じさせます。 強く丸みのあるアタックと素朴で自然な響き、ドラマチックな表現力が魅力。

緑色の外箱の中に、黄色っぽく見える白木造りの楽器がぴったり納まっているように見えますが、実際には一体です。 これはフォールスインナーアウターと呼ばれる、イタリアンにしばしば見られる意匠です。

イタリアン・多角形ヴァージナル 1981年製作
イタリアンスピネット
多角形ヴァージナルは、スピネット、アルピコルドなどとも呼ばれます。 この楽器はロンドンの博物館にある『エリザベス女王のヴァージナル』 (1570年頃のヴェネチア製) をモデルにしています。

上の写真は外箱に納めたところ。 薄い白木造りのイタリアの楽器はこのように丈夫な外箱(アウターケース)に納められることが多い。

中の写真はモデル楽器の現状と同じ仕様で、音域G/H-c³ (ショートオクターヴ、50鍵) の黒い鍵盤が納められているところ。

下は同時期のイタリアの典型的な、C/E-f³ のツゲ張りの鍵盤に取り替えた状態。 上に較べて4度低い音の移調鍵盤になる。

フレミッシュ・ヴァージナル <ミュゼラー> 1989年製作
フレミッシュヴァージナル
個人所蔵

アントワープのリュッカース一族が製作した「ミュゼラー」は、鍵盤が楽器の右寄りにあるのが特徴。 そのため弦の中央付近をはじくので、チェンバロなどに較べて、太くて暖かい音がする。
ふつうイタリアやイギリスのヴァージナルは鍵盤が左寄りにあり、弦の左端寄りをはじく。 リュッカース製のそのようなタイプは「ミュゼラー」に対して「スピネット」と呼ばれた。

フレミッシュ・チェンバロ 1984年製作
初期フレミッシュチェンバロ
16世紀末から17世紀前半にかけてアントワープで活躍したリュッカース一族は、チェンバロのストラディヴァリにもたとえられる。 わずか45鍵(ショートオクターヴ)の鍵盤は、中全音律に調律され、素朴で豊かな初期の鍵盤音楽にまたとない魅力を発揮します。

この楽器はできる限り忠実に、典型的なリュッカースチェンバロを復元しました。 外側は大理石模様のペイント仕上げ、内側は木版刷りの紙張り。 蓋の内側に書き込まれたラテン語のモットーは 「かくして地上の栄光は過ぎ去る」 「音楽は神の賜物」 「神を褒め称えよ」。

蓋を支えている棒は本来はなかったもので、壁に立てかけるか紐で吊るのが正しいようです。 失敗でした。

18世紀フレミッシュ・チェンバロ 1992年製作
18世紀フレミッシュチェンバロ
リュッカースの輝かしい伝統を受け継ぎながら、18世紀のチェンバロ音楽の演奏に必要な機能を備えた設計。 2m60cmに及ぶ巨体が発するおおらかで明晰な響きは、製作家にとっても演奏家にとってもすてがたい魅力がある。

いわゆるドゥルケンモデルですが、ドゥルケンにはあまりこだわっていません。 装飾もロココを強く意識したもので、白磁と青磁の色をねらっています。 屈曲した脚は日本語ではネコアシと呼びますが、英語ではヤギアシ、ここでは二つに割れたヒヅメもついています。チェンバロは偶蹄類だったのです。

初期フレンチ <アーキタイパル> チェンバロ 1997年製作
アーキタイパルチェンバロ
構造や用材、仕上げ等にチェンバロの原型<archetype>から続く製作伝統を保持したと思われる特徴を持つ、 17世紀フランスの楽器= ジルベール・デリュイソー (1678年以後にリヨンで製作) をモデルにしている。

現代に生きかえった典型的な<アーキタイパル>チェンバロのひとつとしての思いを込めて製作しました。その見かけどおり、柔らかく渋めの響き。 華やかな宮廷のイメージとはまた違った、チェンバロの別の魅力を感じていただければ幸いです。

17世紀フランスの楽器がドイツのチェンバロと近い関係にあることは、この楽器でバッハを弾いてみると納得できる。

大型イタリアン・チェンバロ 2001年製作
イベリアンチェンバロ
栃木[蔵の街]音楽祭実行委員会 所蔵

ドメニコ・スカルラッティが活躍したスペイン、ポルトガルに因んで、 ふつうは使わない言い方ですがイベリアン・チェンバロとよびたい楽器。

リスボンのJ.アントゥネスが1785年に製作した1段鍵盤の雄大なチェンバロを基にして自由に構想した楽器。 イタリア風の構造体に2組の8f 弦、3列のレジスターとドグレグ式2段鍵盤を備える。

蓋裏の美しい装飾画は栃木県岩舟町にお住まいの染絵作家、加藤千代さんの作品。 正倉院の有名な「紫檀螺鈿五弦琵琶」を弾く貴公子と三鳥居酒を飲む美女図。
お披露目コンサートプログラム解説

フォルテピアノ 2002年製作
フォルテピアノ
18世紀後半、アウクスブルクのJ.A.シュタインが完成したプレルメカニック (ウィーン式アクション) をもつ5オクターヴの小さなフォルテピアノ。

ダンパーペダルは膝で押し上げるようになっています。

この小さなフォルテピアノがモーツァルトに、そしてあのベートーヴェンにも、多大なインスピレーションをあたえました。

なんと 「悲愴」や 「月光」 までがこの音域で作曲されています。 鍵盤の隅から隅まで使い切った圧倒的な迫力と美しさは、恐ろしいほど…本当に言葉を失います。

ジャーマン・チェンバロ 2004年製作
ジャーマン・チェンバロ
フォルテピアノを彷彿とさせる質素で渋い外観、生真面目な響き(当社比)を持ったザクセン様式のチェンバロ。
J.S.バッハと縁の深いゴットフリート・ジルバーマン作(?)とされているベルリンの楽器博物館所蔵の1740年頃の楽器をもとにしている。

一番手前のジャック列はドグレグになっていて、上鍵盤からは常に働き、下鍵盤を奥に押し込むと下鍵盤からも稼働して、カプラーを入れた状態になります。このときも鍵盤自体は連動しません。下鍵盤を引き出すとドグレグジャックは下鍵盤からは稼働せず、カプラーをはずした状態になります。これはザクセン式カプラーとも呼ばれています。

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