(6)【アメリカでの活動】
ここはマックにはまったくおあつらえ向きの町です。特にロサンジェルスで数年を過ごして、その間にいくつかの地震に遭い、娯楽産業の世界での浮き沈みの激しさを経験した後ではなおさらです。ここでは生活のリズムは少し遅い。ここで暮らすのは一長一短だとしても、マックは移り住んだことに喜んでいるようです。
「僕は今オースティンに住んでいて、とても幸せだよ。仕事の機会についてはロサンジェルスには全然及ばないけど、ここにいるだけで楽しいんだ。窓から地平線をながめて、視界には木々しか映らない。ロサンジェルスだったら、どの窓からも隣の家が見えるさ。それが一つの理由。それから、人々はもっと親しみやすいし、ひどい競争もない。だからずっと幸せだね、満足しているとは言わないけど。満足っていうのからは程遠いな。たくさん曲をためてあるし、たくさんやりたいことがあるんだ。」
一つの目標は、ソロ活動でもっと成功を収めること。マックがこれまでソロ・アルバムをすでに数枚出しているのを知って、読者は驚くかもしれません。実のところ、新作の「Best
of British 」のほかにも数枚あります。
「アルバムが2枚とEPが1枚あるよ。僕はこの新作をね、日本でCDになって発売された僕のファーストを手に入れたという日本人に送るところなんだ。ファーストは今じゃあちこちで売ってるよ!セカンドは一番知られてないアルバムだけど、この2枚だとこっちの方がいいね。最初のアルバムにはセッションマンを雇ったんだ、ジム・ケルトナーに、それからボニー・レイットと10年間やっていたジョニー・リー・シェル、それにジョン・フォガティだ。フォガティは曲を書いてくれて、"Little
Troublemaker"って曲なんだけど、それをアルバムのタイトルにした。仲良くなって数曲一緒に書いたよ。それからケルトナーに、ベーシストのポール・ストールワースだ。2枚目を作るときには、僕はバンドを組みたかったんだ。それでドラムにリッキー・ファタール、ベースには日本人で素晴らしい演奏をするレイ・オハラを入れた。4人でバンプ・バンドという名前にした。アルバムのタイトルが
Bump in the Night だったからね。リッキーがツアーには出られなかったんだけど、ボビー・キーズも参加してテキサスでツアーをやって、それから西海岸を北から南まで回った。これが1979年の話だ。あれはすごく楽しいときだったな。2枚目を録音した後で、マーキュリーに契約を外された。マネジャーのジェイソン・クーパーは病気で仕事ができなかったし、すでに僕は予算オーヴァーの赤字で、あれはアルバムを出すのに適した時期ではなかったね。Little
Troublemaker より優れたアルバムなんだけど、ほとんど誰も聞いてない作品だ。実のところ、今のバンプ・バンドと演奏するときは、収録した11曲のうち7曲はやっていて、もう2,3曲さらに加えたいのもあるよ。」
セカンド・アルバム当時のバンプ・バンドはボニー・レイットのバックで数年間ツアーに参加し、その演奏はレイットのアルバム「Green
Light」 で聞くことができます。ボニーは半分引退してドラッグと酒のリハビリをしていた頃で、けっして全盛期ではありませんでした。
「それでもあのアルバムは今でも彼女のお気に入りの一つで、僕のお気に入りでもあるんだ。あまり人に知られていないから、正当な評価を受けていないけど、僕は好きだね。」
もちろんレイットは1989年に大々的にカムバックを果たします。しかし、マックの方はそのままゆっくりとマイペースに活動をしていました。他のバンドとセッションやツアーを行うのも素晴らしいのですが、マックが本当にわくわくするのは、ソロ活動です。
「ソロは大好きだよ。とてもうれしいんだ。自分の曲を弾くのが楽しい。曲を思い付いて、数週間後にはステージで披露するっていうのは最高さ。僕のバンドはすごくすてきで、ほんとうにスムーズにいってるよ。新しく味わう気分だな。最初はフロントマンを務めるのは落ち着かなかったんだ。観客とやりとりする以外にもたくさんやることがあるからね。自分の曲の歌詞を覚えてからライヴに出演しなきゃいけないしね!昔はすごく気楽にやってればよかったけど、今はもっと全般に責任を負っている。これはすごく刺激的だよ。」
マックがキーボーディスト、サイドマンとして有名なことを考えると、彼がいくら楽しんでいるとはいえ、ステージの中央でピアノを弾くだけでなく、リード・ヴォーカルを担当し、少しはギターも弾くと聞くと、なかなか驚きです。
「今はギターを弾くのは減らしたんだ。ガーフがバンドに入ったから、僕がギターをやるのは1曲だけさ。前は一晩に3,4曲は弾いてたよ。2本ギターが必要な曲とか、キーボードの要らない曲があったからね。ギターを持って歌うのもときには気持ちいいもんだよ。」
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