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ウー・ラ・ラ
OOH LA LA

A面の喧騒とB面の田舎道

 フェイセズ最後のスタジオレコーディングアルバム。それがウー・ラ・ラ。
 ロニー・レイン最後の参加アルバム。それもウー・ラ・ラ。
 顔を動かして遊ぶジャケット。これもウー・ラ・ラ。
 ロン・ウッドが初めてリード・ボーカルをとった。そういえばウー・ラ・ラ。

 1973年2月にアルバムに先立ってシングル「いとしのシンディ」がリリース(UK2位、US48位)され、3月にはイギリスの音楽誌「Disc」が行った人気投票でロッドを世界1にシンガーに、フェイセズを同じく3位のバンドにノミネートした。そして4月、フェイセズ4枚目のアルバム「ウー・ラ・ラ」が発表、同時に盛大な発表記念パーティも催され、フェイセズの前途は洋々かに見えました。しかし、ロッドは本作を失敗作だと評し、ロニー・レインはフェイセズ脱退を宣言します。その理由として、今作ではロッドのために準備した歌うべき曲を歌わず、結局レイン自身が歌うとケチが付けられ、レインだけがバンドのために犠牲なった感情をいだいた、ということです。一部マスコミからロッド・スチュワートのバックバンドだといわれ続けたのも不満として根底にあったのでしょう。

 さて、アルバムA面にはライブ映えするロックンロールナンバーが抜群に輝いていています。一方B面はロニー・レインがフロントに立ち、ライブでは聴けない落ちついた味を効かせています。ロッドがシャウトしまくるA面が都会の喧騒を走り回るスポーツカーだとすれば、ロニー・レイン色の強いのB面は畑に囲まれた田舎道を走る軽トラックといったところでしょうか。


「シリコン・グロウン」
 イントロからアウトロまでマクレガンのピアノが走りまくっている印象を持つ曲。事実、ロン・ウッドのソロツアーでメンバーとして来日した93年ののライブでもセットリストに挙げられ、ライブ盤にも収録されている。
「いとしのシンディ」
 ロッドによると、この作品は商業的に目覚しい曲をつくるためにロンドン近郊のリッチモンドにあるロン・ウッドのホームスタジオにメンバー全員が集まって完成させたとのこと。きっかけはイアン・マクレガンがなにげなしにひいたピアノのリフにロッドが注目し、それが核となってできあがったとか。曲調に関して再びロッドいわく「誠心誠意のボーカル、かっちりしたギター・メロディ、ケニー・ジョーンズの軍体調のシャッフル、消化不良の短い発作に苦しんでいたマクレガンの錯乱したようなピアノ・スタイル――新しい歌が誕生した」。
「フラグ・アンド・バナーズ」

「俺のせいだ」
 ロッドがリードボーカルをとっていますが、ライブではロン・ウッドがとりました。しかしちょっとキーがつらそうな気も。
「ボースタル・ボーイズ」
 サイレンの響きとともにロンのギターカッッティグがさえるイントロのロックンロール。“BORSTAL”とは少年院のことでイギリスでのこふうな言い方。つまり冒頭のサイレンは少年らが院を脱走するのを表現しているようですね。
「フライ・イン・ジ・オイントメント」
 ボーカルの入っていない、つまりインスト。インストになるべくしてなったのか、それともロッドが歌詞をつけようとしなかったのか・・・・・?
「イフ・アイム・オン・ザ・レイド・サイド」

「グラッド・アンド・ソーリー」
 "ありがとう ごめんね 幸せそれとも不幸せ 何もかも終わり、全て言い終えれば 君は満足 僕は憂鬱 ・・・・・”まるでロニー・レインの惜別の唄のようにも聴こえる。「君」がロッドを指すとすればロッドとロニー・レインとの意識の開きを感じさせます。
「ジャスト・アナザー・ホンキー」

「ウー・ラ・ラ」
 このアルバム発表に伴うライブを行った後ロニー・レインはフェイセズを脱退し文字どおりB面な人生を送ることになります。サーカスを伴うライブバンドでツアーを行いますが長くは続かず、スモールフェイセズの再結成にも参加せず、そして難病に犯され、、、、そしてついにA面の華やかな舞台に戻ることなく、ターンテーブルの回転は永遠に止まってしまいました。B面の田舎道は天国に続いていることを願わずにはいられません。 
     
 このアルバムの特徴を上げると結構出てきます。とても覚え易いアルバムタイトルに1度見たら忘れられないジャケットなのでこれはLPを探して中古屋を回りました。開けてみればインナーでド迫力のカンカン娘が思いっきり足あげてるし、歌詞付き大判ポスターまでついてくるわで豪華豪華。CD時代のジャケットなど足元にも及びません。ロックが今よりも圧倒的なパワーを持っていたことをこの時代のアートワークからひしひしと感じとれます。                                                                 (19970600)






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1.Silicone Grown
2.Cindy Incidentally
3.Flags and Banners
4.My Fault
5.Borstal Boys
6.Fly in the Ointment
7.If I'm on the Late Side
8.Glad and Sorry
9.Just Another Honky
フェイセズ ライヴ
COAST TO COAST 
OVERTURE AND BIGINNERS


 フェイセズ最後のアルバムだけど

 フェイセズが1973年秋のアメリカツアーでロサンゼルスのアナハイム(10月17、19日)において録音したライブアルバム。山内テツになってからの初アルバムということになるが、アルバム名義は「ロッド・スチュワート/フェイセズ」の併記となっており、レコード契約が複雑なロッドならではの形でしょう。そしてまたフェイセズ最後のアルバムにもなりました。 
 このアルバムをひっさげて、ロッド&フェイセズは初の来日公演を行います。フェイセズのアルバムのなかでももっとも中古レコード屋でみかけますからきっと当時はよく売れたのでしょうね。
 後追いファンの僕ならまっさきに買うようなものですが、逆に長らく買おうと思いませんでした。何曲かはロッドのベストに入っていましたて、聴いたところそれ以前に既に買って聴いていたブートレグでのライブの迫力に負けていたからです。ブートレグの方はロニー・レイン在籍の頃のライブで、バンド全体がひとかたまりになってぶつかってくるようなエネルギーが感じられましたが、本作ではかなりロッドとそのバンド的なミックスぎみであります。その辺りがどうにも不満でいまでもあまり聴きません・・・・・・・・・。
 演奏のほうは、ロックンロールナンバーが幾分軽い感じは否めません。バラードナンバーはロッドのボーカリストとしての表現力が感じられ、いい出来ではないでしょうか。反面、「エンジェル」「アイド・ラザー・ゴー・ブラインド」などのバラードは聴き応えがあります。
カセットテープで発売されたものには「アイム・ルージング・ユー」が追加収録されています。
(19970921)








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俺と仲間
I'VE GOT MY OWN ALBUM TO DO

 ストーンズとフェイセズのブレンド風味

 アルバムの発表された1974年というのはストーンズにしてもフェイセズにしても中途半端な活動時期で、ストーンズはバンドとしての活動は春にレコーディングをした後は年末までオフ状態、フェイセズもアルバムの制作にも入らず時々ツアーをやるだけ。そんな時間のありまった両バンド奇妙に交差した、今から考えると夢のようなセッションがこのアルバム。
 録音は74年の4月から6月にかけてロンドンのロンの自宅スタジオで。参加ミュージシャンはロッド、キースのほかにもミック・ジャガー、ミック・テイラー、イアン・マクレガン、デヴィッド・ボウイ、ウィリー・ウィークス、アンディー・ニューマーク、共作者にジョージ・ハリスンなどロンの交友関係の幅広さが伺える贅沢なゲスト陣です。
 内容は当然のごとくストーンズとフェイセズのブレンド風味となっていて実に楽しい。聞き物はなんといっても「I CAN FEEL THE FIRE/俺の炎」と「TAKE A LOOK AT THE GUY/あいつをごらんよ」。前者はミックのがぶりよってくるバックボーカルがいい。後年のストーンズでのイッツ・オンリーR&Rを彷彿とさせるます。後者はロッドが後ろから凄まじく突っつくようなシャウトを聞かせるのが珍しくも面白い。あと、「AM I GROOVING YOU/君に夢中だよ」はカバーですが、ファンクなのりがこれまた後年のストーンズっぽい。ウッディとミック、キースの3人が一体になって作り出すグルーブは見事だ。 
 アルバムリリースにあわせてロンは初の単独ライブを行います。と言ってもバックにキース、マクレガン、特別ゲストにロッドとアルバムののりそのままを再現。しかしキースとロンの、この過ぎたる接近が後に両バンドの命運を決めるものになっていく・・・・とは当時の彼らは気づいていたのかどうか。 
(19970915,20021103)








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スマイラー
SMILER

ひとつの時代の終焉を飾り、次の時代への先駆け

 タータンチェックの壁にかけられた鏡、それに写った微笑のロッド・スチュワート。少々ナルシストっぽい。いよいよ自分の魅力に気づいてきたか。
 ロッドの作品をこれまで出してきたマーキュリーレコードはこの後のレコーディング契約をロッドからとれなかった。フェイセズを出していたワーナー・ブラザーズ側に敗訴したのだ。その結果、本作がマーキュリーから出る最後のアルバムとなる同時に、英国でフェイセズのメンバーに手伝ってもらった最後のアルバムともなった。
 エルトン・ジョンとのツインボーカル「LET ME BE YOUR CAR」、ポール・マッカートニー作でコーラスにも参加の「MINE FOR ME」、お馴染みマーティン・クインテットンの快作「FAREWELL」、そして前作で薄まったスコティッシュ・トラッドからアメリカン・トラッドたるデキシー・ジャズの色が出てきた「DEXIE TOOT」などが聴きドコロか。
 この時既にロッドの胸中には次のビジョンがあったのだろうか?確実にロッド・スチュワートのひとつの時代の終焉を飾り、次の時代への先駆けとなった作品。
(19970706)





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1.Sweet Little Rock & Roller
2.Lochinvar
3.Farewell
4.Sailor
5.Bring It on Home to Me/You Send Me
6.Let Me Be Your Car
7.(You Make Me Feel Like) A Natural Man
8.Dixie Toot
9.Hard Road
10.I've Grown Accustomed to Her Face [Instrumental]
11.Girl from the North Country
12.Mine for Me
ナウ・ルック
NOW LOOK

 ギタリストとして自立

 このアルバム、ロンがまだフェイセズ在籍中の1975年7月に発表されたもの。しかし聞こえてくるサウンドはと言えば、フェイセズというよりは数年後のストーンズのアルバムに近い。それらのアルバムにはロンが正式メンバーとして参加してますから当然と言えば当然ですが、ロンの音楽志向は次第にフェイセズよりもストーンズに近づいていたのかもしれません。なにせこの発売月に彼はストーンズの全米ツアーにゲスト参加してるんですから・・・・・・。
 サウンドには、フェイセズにはない垢抜けた黒っぽさというかファンキー加減がミックス。このアルバムを出したことでフェイセズのいちギタリストから、独自の個性を持ったギタリストとして自立できたと言えるかもしれません。この個性をストーンズは欲しがり、後にそれは「サム・ガールズ」や「エモーショナル・レスキュー」を作り出す原動力になります。 録音は4月にアムステルダムのスタジオで前作の基本メンバーを再び集めて行なわれました。またキース参加曲など一部、前作時に録音されたものもあります。
 その一方、活動本体のフェイセズのアルバム作成はロニー・レイン脱退以来、まったく行なわれていない状態が続いていました。ロッド、ロン、マクレガンは言うに及ばず、ドラマーのケニージョーンズまでもソロシングルを出すなど、メンバーの活発な課外活動がバンドでの活動を次第に追い詰めていきます。その決定的な出来事がロンのストーンズツアーへのゲスト参加です。そのあおりを受けフェイセズのツアーの一部がキャンセルとなりました。2年続けてのソロアルバム製作と、ストーンズとの関係強化など、ロンの人生設計おいてフェイセズは既に形だけのものになっていたのでしょうか?
 日本初回盤のLP帯には次のようなコピーが記されています。「ローリング・ストーンズの信頼を一身に集める、フェイセズのギタリスト」。これってなんだか将来を暗示してるよなあ・・・・・。
 
(20010811,20021103)







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アトランティック・クロッシング
ATRANTIC CROSSING

やっぱり傑作、と言わざるを得ない

 1975年、ロッドはマーキュリーからフェイセズと同じワーナー・ブラザーズへ移籍。一見、これでフェイセズとの活動がし易くなったような感じだが、ロッドのマネージャーのビリー・ギャフの狙いはフェイセズをロッドのツアー用バックバンドとして生かすことにあった。ロッドがそのことをどう思っていたかはわからないが・・・・・。その結果、出てきた本作は、フェイセズ解散の一つの切っ掛けになったかもしれないと思うと少し複雑な気持ちにさせられるが、正直言って出来はいい、ちょっと悔しい。

 前作「スマイラー」まではフェイセズのメンバーや旧友に手伝ってもらい、いい意味でアマチュアリズムが最大限生かされた作品を作っていた。気心の知れたメンバーだけで近所のスタジオ使って作ってりゃ楽だろうし、出来もある程度までは保証される。でもそればかりではアーティストとしての将来的な広がりに限界が来ることにロッド自身気づいたのかもしれない。リスナーにさらに幅広く受け入れてもらうモノを作るなら、自分の未開拓な可能性を引き出してくれる敏腕プロデューサーと、腕は確かでツブシの効くプレイをしてくれるバックミュージシャン、そして世界を目指すならアメリカに行かなきゃと・・・・・・。

 アルバムレコーディングのためにロッドはアメリカに移住。プロデュースは名匠トム・ダウド。職人によって仕上げられた作品はとにかく聴きやすいという印象を受ける。耳に残るのはA4とB面の4曲のカバー曲だろうか。選曲はロッド自身のというよりはトム・ダウドが持ってきたのではと勘ぐりたくなるくらいロッドにピッタリはまって、ロッドも気持ちよく歌っている(実際はセイリングはロッド自身がカバーすることを数年前から考えていたようだが)。「ドリフト・アウェイ」は実に生き生きとしたボーカルが聞ける(ストーンズのカバーバージョンも存在するが、ロッドのを聞いて諦めんたのかお蔵入りとなった)。「ディス・オールド・ハート・オブ・マイン」はアイズレー・ブラザーズのカバー。後にセルフカバーしたバージョンよりもしっとりしてる。「もう話したくない」「セイリング」はロッドのライヴの定番。既にここでこれ以上ないってくらい完成されいる。名刺代わりの一曲ってとこか。
 バック・ミュージシャンにはトム・ダウドのコネクションをフルに使って、南部ロックをつくってきた才人達(スティーヴ・クロッパー、ドナルド・ダック・ダン、デビッド・リンドレー、ジェシ・エド・デイビス、メンフィス・ホーンズなどなど)が固めて、それまでとは比較にならないほど(こういうのもなんか悔しいが)完成度の高い職人サウンドに仕上がっている。万人受けにはいいんだろうが。結果、発売1年間にアメリカで300万枚売れ、チャート最高位は9位。UKでは最高位1位を記録し、その年の売れたアルバムの3位に選ばれた。

 アルバム発売と同時にロッド/フェイセズは全米ツアーを行う。ロンはストーンズのツアー直後で、またロンがフェイセズに戻ってこないことも予想してサポートメンバーにジェシ・エド・デイビスが参加。セットリストにも「アトランティック〜」からのナンバーが何曲かとりいれられ、ツアーは全米を回った後、豪州、日本、ハワイ、欧州へとつながる大規模なワールドツアーになるはずだった。しかしロッドは、ロンがストーンズに永久レンタルされている状態ではもうやっていけない、と感じバンドを脱退してしまい、ツアーはおろかバンドの存続そのものが不可能になってしまう。そして翌年2月、ロンもストーンズへの正式参加を表明し、ここにフェイセズの短くも太い歴史にピリオドが打たれてしまった。
(19990101,20021110)








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1.Three Time Loser
2.Alright for an Hour
3.All in the Name of Rock & Roll
4.Drift Away
5.Stone Cold Sober
6.I Don't Want to Talk About It
7.It's Not the Spotlight
8.This Old Heart of Mine (Is Weak for You)
9.Still Love You
10.Sailing






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