ここでは、三線式Oゲージにまつわる基礎的なことがらをお伝えしてゆきたいと思っております。


§1・三線式と二線式の違い
三線式と二線式は、読んで字のごとく、線路に設けられているレールの数に外観上の大きな違いがあります。その他には、どういう違いがあるのでしょうか。まずは下の図をご覧下さい。
電気方式…家庭に供給されている交流100ボルトを、トランスによって安全な電圧に下げるまではどちらも同じですが、三線式が一部の例外を除き、トランスの二次線から出た交流(AC)20ボルト前後の電圧をそのまま使っているのに比べ、二線式は交流を整流器で直流(DC)12ボルトになおして運転します。(ここでいう電圧はいずれも最高電圧です。)→より詳しい配線を知りたい方はこちらへ

逆転の方法…二線式は、手元のスイッチでプラスマイナスを切りかえることにより車輌の前後進をさせます。三線式はスイッチなどで電流を断続させ、車輌に内蔵された自動逆転器を作動させるか、車輌についた手動逆転スイッチを切り替えてやらねばなりません。

車輪・枕木の絶縁…学問的なことはさておき、わかりやすく表現すれば、二線式が「右のレールから電気を取り入れ、左のレールに返す」構造であるのに比べ、三線式は「中央のレールから電気を取り入れ、両側のレールに返す」方式であるのが両者の大きな違いと言えましょう。
二線式は車輪の片方か、場合によっては両方を絶縁車輪とし、また枕木は必ず絶縁体として2本の線路を電気的に離しておかねばなりません。三線式は中央のサードレールのみ絶縁しておき、車輪の乗った2本のレールは金属製の枕木(枕金)で電気的につながっています。枕木が絶縁体の線路もありますが、車輪が非絶縁のため、やはり電気的にはつながっているのと変わりありません。


§2・ところでOゲージってなんだ。
Oゲージは、欧州では前世紀初頭からその存在が知られている、大変歴史のあるゲージです。英国とドイツでゲージの規格が考えられたとき、2番ゲージ(51ミリ)、1番ゲージ(45ミリ)などとともに、最小のゲージ「0(れい)番」として定められました。
われわれはOゲージ=32ミリと記憶していますが、米英流にいいますと1インチと4分の1…1.25インチで、ミリに直しますと31.75ミリとなります。
この線路の上を走る車輌のサイズは、英国では43.5分の1、米国では48分の1、ドイツ・日本では45分の1とされていますが、機能性や全体の雰囲気が優先される場合はもちろんその限りではなく、大は40分の1前後から
小は50分の1まで、時代や製造会社によってかなりの幅があります。ちなみにゲージは、図のようにレールの頭と頭の間を測るのが現在の標準的な計測法です。昔は、レールの頭の中央から中央までを測っていた時代もありました。


§3・車輌各部の名称
市販の三線式動力車の車体を取り外して、中を見たことがある方は、シンプルな二線式車輌とは異なり、機械でぎっしり詰まったさまを目の当たりにして驚かれたことと思います。
その塔載機器どもの名称と働きを簡単にご説明しようと、廉価な初心者向け蒸機としても名高い、MTH製のペンシルバニアS-2を引っ張り出しました。(現在は残念ながら生産されておりません)折角S-2君にご登場願ったのですから、分解して中身をさらす前に、彼の勇姿を掲げつつ、日ごろからご質問の多い蒸気機関車の各部名称をFig.1に示します。

Fig.2に三線式ならではの塔載機器や部品の名称と働きを示します。
上と同じS-2の車体を外し、搭載機器を見せたところ及び、横に寝かせて裏側を見せたところです。電源のボタンを押せば汽笛・ベルが鳴り、速度に同調して勇ましいドラフト音を響かせ、煙も速度にあわせて断続的に噴き出すという、多芸な機関車ですので、部品のぎっしり度合いもむべなるかなというところです。
かようなメカニカルな部分を味わうことこそ、三線式の醍醐味の一つと思うのですが、皆さんはいかがでしょうか。
自動逆転器…「電流断続式」と呼ばれる方式で、電源の逆転ボタンを押して電流を切ったり、入れたりするたびに、前進→中立→後進→中立→前進の順にシフトが進みます。この装置には整流器(ブリッジダイオード)も備えられていて、モーターに供給する直流を作ります。

DCモーター…三線式といえば、交流で駆動する直巻モーターが思い出されますが、整流器を備えて既製のDCモーターを使用すれば、直巻モーターを装備するよりはるかに廉価でしかも強力な車輌が作れますので、10数年前より徐々にDCモーター装備の車輌が増え始め、今ではほとんどがこれといっても過言ではなくなりました。
ただし永久磁石を界磁とするDCモーターは、磁石にアマチュアが吸引されるため、電流を断ったときに惰力が効かず、車輌がガクリと停止してしまう欠点があったため、最近はフライホイールを備えて惰力を補う製品が多くなりました。

発煙装置…少量の灯油や機械油をニクロム線で熱すると、微細な粒子となって吹き上がることを利用したのが模型用発煙装置の原理です。ライオネルでは戦後すぐに、蒸機のロッドでフイゴを駆動する強制排煙式の装置を発表しました。MTHはそれをさらに改良し、ガラス繊維の中に発煙剤を染み込ませて発煙量を増した上、小型モーターでファンを駆動して濛々たる煙を楽しめる装置を「プロト・スモーク」と称して製品に組みこみ、一世を風靡しました。
写真のものはそれをさらに改良したもので、走行速度に同調してファン駆動用モーターの回転を断続させ、ボッ、ボッ、と実物さながらの迫力ある発車シーンを演出できるようになりました。

サウンドユニット…電源のボタンを押すと、汽笛やベルが鳴らせるこの楽しい装置は、戦前にライオネルが開発したもので、ボタンを押すとレールに直流が流れ、車輌に積んだ直流だけに反応する装置(DCリレー)が作動して汽笛用モーターを回すというものでした。走行電流が交流であることを利用した、まさに三線式ならではの装置といったところです。
現在では装置全体がご覧のように一体の基盤になり、音質も昔とは比べものにならないほど良くなりました。汽笛とベルの区別は直流の極性によっており、たとえば汽笛が「+−」だとしますと、ベルは「−+」の直流が流れて装置を反応させます。S-2はこの他にもドラフト音を装備しており、速度に応じて蒸気の排気音が楽しめます。同社製品では同様にディーゼルのエンジン音、電車のモーター音を装備しているものもあります。

Fig.3は国産旧製品のB電関、EB50を例に、各部の名称を示します。上掲のS-2とは登場時期に40年以上の隔たりがありますので、その辺りを了解の上ご覧下さい。
直巻モーター…シリンダー型ブラシホルダーを備えた、戦後の標準型とも言うべきタイプの直巻モーターです。天地の軸受けは、ごく高級なものですとオイレスメタルや、ボールベアリング入りを備えていますが、ほとんどは真鍮の平軸受けですので(フェルト保油装置付もある)、注油を頻繁に行わないと軸受けが磨耗し、回転むらの原因になります。
直巻モーターは、DCモーターのような界磁の永久磁石によるアマチュア(回転子)の吸引がなく、電流を切るとアマチュア自身の惰力が持続しますので、調整が良ければ、ウォーム駆動の機関車でも素晴らしい惰走をさせることができるのが長所といえるでしょう。

逆転スイッチ…ファイバー(圧縮紙)のベースに接点やレバーを設けたもので、この時代鉄道模型に限らず、さまざまな模型のスイッチとして利用されたタイプです。老朽化が進むと、ラグを留めているリベットが接触不良を起したり、レバーの接片がずれたりと故障の原因になりやすい箇所でもあります。

コレクター…銅の薄板をプレス成型したもので、逆転スイッチと同様のファイバー製のベースに取り付けられています。旧製品のブリキ製レールを痛めないように、コレクターを軟質素材として磨耗させ、穴が開いたら交換するようになっていました。

台枠…リベット組みで分解はできません。初期の製品はネジ組み台枠が多かったのですが、工程の圧縮と強度の向上を同時に狙った結果、ほとんどの機種がリベット組みになりました。素材の厚みはt1程度と薄いため、動輪をこじるようにすれば台枠にはめ込むことができます。

【以下建造予定そして完成時期未定】


ウォームギヤーの間に戻る

豆知識Tに進む


最初のページに戻る