●直巻モーターを使いこなそう
国産旧製品を愛好される方のために、修理や自作に不可欠な知識である、直巻(ちょっけん)モーターの配線のしかたをお知らせしましょう。
まずは各部の名称を下図に示します。昭和30年代、最も多く用いられたカツミKB−3を例に採りました。



★最初に、基本的な配線について説明します。下の図をご覧下さい。
【Fig.1】 直巻モーターは、上の図のようにブラシ端子への配線をつなぎかえてやることで逆転します。イ)の配線ですと、上から見て反時計回りに、ロ)の配線にすると時計回りに回ります。(註・自作のモーターや戦前製のもののなかには、コイルの巻きかたの方向が違うため、図のように回らないものもあります。)
また図とは反対に、ブラシ端子の配線を固定し、フィールドコイルの方をつなぎかえてやっても同様の結果がえられます。
これをスイッチを介して行うと以下の図のようになります。

【Fig.2】ファイバー製DPDTスイッチを使用した手動逆転の配線のしかたには色々ありますが、ここではごく一般的な方法を掲載しました。田宮模型の電池ボックスなどに付属しているスイッチでも上の配線で使用できます。
スイッチのレバーが、車輌の進行方向に向くように配線するのが望ましいので、レバーの向きと進行方向が合わない場合は、図中AとBのスイッチ端子への配線を左右逆に入れ換えてやればよいでしょう。ヘッドライトの点灯方向も同様で、図中のA'とB'を入れ換えてやります。(B電関の場合は、ライトへの配線を長めに取っておき、車体を180度回転させてしまったほうが簡単ですね。)
逆転スイッチの一番上の端子…台車にアースされる端子は、電関の場合、スイッチ取りつけ座の裏側に接触していればよろしいので、接触する部分をよく磨いておき、端子を持ち上げ気味にして、十分な圧力で触れるようにしてからスイッチをネジ止めすれば、特にハンダづけする必要はありません。

【Fig.3】スイッチによる手動逆転も味があって良いものですが、自動逆転器(以下『自逆』と略)を取りつけると、入れ換えなど運転への興味はさらに倍増します。ここでは現在容易に入手できるDallee Electronicsの自逆(あちらではE-Unitと呼ばれます)を利用した配線の例を示しました。線の色はE-Unitに付属しているコネクターの線の色分けに従っています。左より、緑と黄色はフィールドコイルに、2本の黒は車体とコレクターに、灰色と赤はブラシホルダーにそれぞれ接続されます。
上にある赤と黒の線は、ロックアウトスイッチを作るための配線です。この2本の線を接続しておくと、逆転器は作動せず、一方のみに動くようになります。これは前進のみになるように取りつけるのが普通です。重連をさせたり、長時間前進のみの運転をさせるときに使用します。
北米の既製品や、国産旧製品の自逆装備車をお持ちの方はご存知のように、コレクターは必ず複数個付いています。これは、ポイントやクロスなど、サードレールに無電区間があるところでも、逆転器が誤作動を起こさないようにするためです。自逆は、電流を切るたびに、前進⇒中立⇒後進⇒中立⇒前進の順番にシフトが進みます。かつてはラジコンのエスケープメントのように、電磁石とラチェットでスイッチのドラムを動かしていました。

【Fig.4】おまけとして、 この自逆で、現在市場に流通している永久磁石式のモーターを、三線式に使えるようにする配線法も掲載しておきましょう。
DC(直流)モーターで三線式を動かすなんて…と、お思いでしょうが、現在では北米三線式製品もほとんどがDCモーター装備になっています。
この自逆は容量4アンペアのブリッジダイオードがついていますので、図のように、直巻モーターのときはフィールドコイルに至っていた緑と黄の線を直結し、ブラシホルダーに至る線はそのままで、簡単に交流運転ができるようになります。
界磁の永久磁石を強力にすることで、小型でもトルクのあるものを作れるのがDCモーターの強みですが、かつては低速時のトルクが弱いことや、電流を断ってからの惰力がきかないこと、また電池以外の直流電源が得難かったことが、直巻モーターに比べて模型用動力に向かないとされた時代もありました。
しかし今では量産により値段も大変廉価になり、耐久性も申し分なく、フライホイールで惰力を補えば直巻モーターよりもはるかに高性能の車輌ができるため、復刻版的な製品以外はすべてDCカンモーターが使われるようになりました。北米製品が、そのサイズや機能の割に安価にできるのは、ひとえにDCモーターのおかげであると申しても大げさではありません。

直巻モーター・質問と答え

Q:直巻モーターは交流でしか回らないのですか?
A:直流でも交流でも回ります。

Q:では、直流のときは、+と−を切り替えれば逆に回るんですね?
A:いいえ、交流の時と同様、逆転のための装置が必要です。

Q:直巻モーターの最高電圧は何Vくらいですか?
A:製造した時代やメーカーによって異なりますが、国産で、戦前のものでしたら8〜10V程度、戦後のものでしたら18〜20V前後が最高電圧です。

Q:直巻モーターは現在販売されているのですか?
A:模型動力用としての、モーター単体の製品は現在ありません。工業用などではありますが、使用電圧や出力、大きさなどが模型用として適しません。

Q:では、直巻モーターは入手できないのですか?
A:古物として出回るものを探すしかありません。中古・委託品を取り扱う模型店、教材や玩具の古物を扱っている骨董店、ネットオークションなどをまめに巡回すると良いでしょう。


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