本谷橋からは、樹林帯の中のつづら折れの急坂の登りとなる。夜行列車の疲れが出てくる頃、この登りはきつい。背中の荷物が肩に食い込み、流れ落ちる汗が足元の岩を濡らす。呼吸を整え足元を見つめて、ひたすら一歩一歩と足を運び上げる。一本立てる回数が多くなる。
何回か小休止を繰り返した後、やがて樹林帯が切れると、行く手に
前穂、奥穂、涸沢岳、北穂東稜と続く岩の大伽藍が現れる。
丘の上の涸沢ヒュッテや、色とりどりのテントが見え出し、冷たい沢水の流れが現れたところで大休止となる。但し、この水は山小屋やキャンプ場の水が流れ込んでいるので飲んではいけない。
ヒュッテやテント場はすぐ近くのように見えるが、これから先が結構長い。
あと一息だぞと自分に言い聞かせながら、だけかんば
や ななかまど を縫って続く岩の道を、一歩一歩踏みしめて行く。 |

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