欧米エンジンメーカーの系譜 (1)

以下は United States Air Force Museum 米国空軍博物館の展示エンジンを基に述べたものです。

CURTISS (USA)

 右の写真は米国で最初の軍用エンジンとして採用されたカーチス製エンジンである。

 グレン・カーチスは世界のレーシング・モーターサイクリストであり、彼は自分が走るためにエンジンを製作していた。1903年友人から小型の飛行機用のエンジンを作ってほしいと頼まれ、1904年8月排気量984cc出力7馬力V型2気筒が最初であった。このエンジンはボールドウィンの機体に搭載して飛行に成功している。

 その後1908年には右の写真の手作り感いっぱいの直列4気筒エンジンを開発、さらにV8エンジンに発展し1909年にはフランスの競技会でトップ賞を獲得するなどいくつかの水冷エンジンを制作して航空機用エンジンのブランドとして名声を高めていった。

 

 1910年には新たなV8 8.2リッター定格出力90馬力のOX-5エンジン(下の写真)を開発した。 これは吸排気バルブが同じ向きではなく交差するペントルーフタイプに配置され、プッシュロッドは排気用のロッドが筒状で、そのなかに吸気用のロッドが通っている構造だった。(下の写真で分かる) このエンジンは第一次大戦機に用いるため多くのメーカーにてライセンス生産され、カーチスJNやDH.6に搭載されたが信頼性が低く故障が多かった。

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← バルブ配置とプッシュロッドを見て下さい

 1908年7月4日にはカーチス製作による飛行機「ジューン・バグ」が彼の生誕地であるハモンズポートで飛行に成功し、グレン・カーチスは動力つき航空機で空を飛んだ2人目のアメリカ人となったのだが、当時ライト兄弟の初フライトや飛行テストは非公式扱いであったため、彼と「ジューン・バグ」が公認されたアメリカ初飛行となった。彼はアメリカ飛行機クラブからパイロットのライセンスを受けた第1号となった。

 


LAWRANCE (USA) Model-L 3Cylinder

 チャールス・ローレンスは1910年から自動車レース用のエンジンを製作していたが、1917年に軽飛行機用の水平対向2気筒エンジンを生産するためローレンス・エアロ・エンジン社を設立した。 当初のモデルA28馬力から40馬力へと性能向上し、その発展として1気筒追加した星型3気筒65馬力のL型(写真)を開発し陸軍にも30機程度納めることが出来た。

 欧州のこの種のエンジンがシリンダー全体が回転するのに反し、固定したクランクケースで安定した性能と信頼性が特徴であった。そして9気筒のエンジンを開発したが、これはL型3気筒を3基重ねたものであった。ローレンス社は当時の強大な航空エンジンメーカー・ライト社に対する小さいが強力なライバルとなっていた。

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ABC (GB イギリス)

 何故ABCなる社名にしたのか? オール・ブリティッシュ・カー(モータース)であろうか?

 1911年にグランビル・ブラッドショウが設立した。彼はいろいろな種類のエンジンを精力的に開発した。最初が直列型の40馬力から始まり、100馬力V8型、5馬力の水平対向2気筒、そして1916年にモスキートと名づけられた空冷6気筒星型エンジン(シリンダーは固定)を製作した。

 しかし台上試験で完全に失敗に終わり、引き続いて同様な7気筒ワスプエンジンを製作した。これが写真のエンジンである。排気量10.8リッター重量131kgで170馬力を発揮し高い評価を得た。 シリンダーは銅のコーティングが施されて写真のような外観色が特色である。

 その後ブラッドショウは更に大型の9気筒22.8リッタードラゴンフライ・エンジンを開発し英国軍で急遽採用されたが冷却性能が悪く振動が最悪でイギリス航空業界は大混乱に陥り同社は大打撃を被った。

 


Le Rhone 9C (France)

 ル・ローン社は1910年には最初の星型ロータリーエンジンを製造し、1914年にグノームに引き継がれた。その中でシリンダーサイズの異なる9気筒エンジンで80、110馬力、更には180馬力のものがあり、相当数が生産された。

 シリンダーは鋳鉄製のライナーをもちクランクケースにネジ込まれていて、それで圧縮比の調整ができた。バルブは1本のプッシュ・プルロッドで作動した。 また気筒あたり2つのプラグを持ち、他のロータリーエンジンでは出来なかった600回転のスムーズなアイドリングが可能であった。

右のスイッチを押すとエンジン全体が回りだしロータリーシリンダーの仕組みが分かる。

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上右は給気管も装備された状態(カットモデルと別物)
 


Hispano-Suiza Model-Aa

 イスパノ・スイザという名が示すように、この会社の国籍は表せない。(スペイン+スイス)それは社主がスイス人マーク・バーキャットで1904年スペインのバルセロナに高級自動車工場を設立し、その後1911年にフランスはパリに同社を設立し1915年に航空エンジンを生産し始め、世界のメーカーにライセンス供与をしたためエンジン国籍が多様になったのである。(日本は三菱)

 同社の最初のエンジンがA型でアルミ一体型の2個のシリンダーを90度V型に配置し、初めて強制潤滑方式を採用した。カム方式はエンジン後部にあるラジアルシャフトで駆動されたOHCを採用していた。 また既に2プラグ方式で信頼性を高めていた。 このエンジンは当時注目の的で直列6気筒より全長が短く、星型より前面面積が小さく、パワー・ウェイト・レシオもたいへん優れた値であった。

 フランスではスパッド(SPAD Vll)戦闘機などに搭載され飛行機の性能を飛躍的に向上させた。 初期型は140馬力であったが順次改良され8Aa型で175馬力、8Ba型では220馬力となっている。 ライト兄弟が飛行してから10年もたたないうちに航空エンジンは素晴らしいスピードで発達した。

Type :Model A V-8 Cylinder watercooled,

Desplacement : 11.8 L, Maximum Power : 150(180)PS/1400 rpm , Weight : 202 kg(dry)

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LORRAINE-DIETRICH 8Be (FRANCE) 

Soc Natinale de Construction de Moteurs (ロレーヌ・デートリッヒ)は1915年に水冷式航空エンジンの設計を初め1917年に8Bシリーズを生産した。 アルミのケースブロックにシリンダーをねじ込み2個のシリンダーをウォータージャケットが共用している。またオーバーヘッドカム方式でありながらバルブ構造がむき出しであるのが特色である。
Type : 8cylinder,liquid cooled,Vee, Displacement : 15.5 L
Weight : 245 kg, Maximum Power : 220HP/1,450 rpm

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