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旅行記その5:はじめてのブルートレイン(2004.1.30〜1.31)

ブルートレインにて(大宮〜秋田)

今度こそブルートレイン

大宮駅で、超満員の高崎線の通勤電車から退散する。

まだ、ホームは通勤客でごった返している。その中で、自分は寝台車内で飲み食いするものを買い揃えてホームに立つ。場違いこの上ない。大宮駅の構内は、発着する列車のブレーキのキーキー音や「今度の宇都宮行きは前5両が・・・」「高崎線の特急は11番線から発車・・・」とかいった構内放送で喧しい。

そのような中、お目当ての「あけぼの」がホームに入ってくる。おそらく、この時間帯に大宮駅を発着する列車の中では一番特別な列車なのに、場内放送とかそんなものは一切無かった。周りの視線を気にしながら、団体列車に乗り込むかのような心境で、「初めてのブルートレイン」に乗り込む。列車はそそくさと大宮駅を出ていった。

列車に乗り込むと、まず予約をとっておいた個室「ソロ」に入る。

最初、「普通寝台と値段の変わらない個室」ということで、「カプセルホテル」みたいな寝るだけの空間をイメージしていたが、室内はそれよりも広く、イメージしていたよりも快適そうだ。着替えはきちんと立って背筋を伸ばして出来る。昼間時間帯も座席として快適に過ごせるスペースがある。もっとも、普通のホテルの部屋と比較してはいけない。

荷物の整理と部屋のチェックにかまけて、気付いたときには列車は北上尾を通過。それでも、たくさんある荷物を収め終えた時、さすがにしみじみと幸せな気分になってきた。寝台を組み立て(床とマットレスをセットし、シーツを引くだけ)テーブルをセットし、BGMをかけ、いい気分で酒の缶を開けた。また飲むのか?

 

個室寝台車

現在の「ブルートレイン」は、昔のそれと比べると結構衰退してしまったが、確実に進化しているものが1点ある。

「個室寝台」である。昔はA寝台の一部しか「個室」はなかったのだが、今では大抵の列車に普通のB寝台と変わらぬ料金で利用できる「B個室寝台」が連結されている。したがって、特別な乗客でなくても「個室」の恩恵に浴すことが出来るようになった。

で、このB個室寝台「ソロ」であるが、自分が乗った車両は、中央に通路があってその両側に個室が上下2段になって配置されているものである。寝るときは、進行方向と並行になって横になる、昔の「個室ではない」A寝台と同じような感じである。

個室は、ちょうど立てるだけの空間が部屋の片隅に確保されており、それ以外は座席・ベッドとで共用するマットと階段とで占められている。寝るときには、折り畳み式の寝台のベースを階段部分に広げて寝台幅を確保するようになっている。感心したのは、内装で感心したのはテーブルや寝台のベース等、個室の各所に「木」が使われていたこと。こういう些細なところで、「温かみ」みたいなものを感じる。

 

室内には、1斗缶を斜めに切ったような変な形のクッションがある。最初見たときは「何でこんなのがあるんだろ?」と思ったが、これは座席として使用する時に「背もたれ」になるものである。確かに、寝台・座席と同じ手触りの生地を使っており、座っているときにこれを背中にあてがうとなかなか具合がいい。その他室内の設備等にほとんど不満はなかった。毛布をシーツで包んだだけの掛け布団も、JRマークが散りばめられたペラペラの浴衣もウェルカムである。あとはコンセントがあれば・・・。

コラム「冷蔵庫もあります!?」

冬期限定のテクニックかもしれないが、食べ物とか飲み物(普通の缶は厳しい。薄めのビンがいい)を窓にくっつけて置いておき、上からカーテンを降ろして(このとき、窓とカーテンには若干のスキマが出来る)放っておくと、冷蔵庫みたいにモノを冷やすことだできる。

  • (写真)窓際冷蔵庫
 

日本海の旅路

23時21分、列車は高崎に到着。わずかな乗客を載せて発車。列車はこれから上越国境を超え、雪の日本海側に向かう。既に水上のあたりで、線路際に雪が積もっているのが確認できた。

長いトンネルを抜けると、今までカタンコトンと響いていた車輪の音がしなくなる。恐らく、線路周辺が雪で埋まっており、雪によって音が吸収されるためであろう。この時点で、時計は深夜0時40分を廻っていた。早く寝ないと翌日の行程に響くと思い、寝床を調える。個室内でさんざっぱら酔っ払って、その割にはきちんと寝台をセットしてシーツを敷いて就寝。

寝台券を予約した後、あれこれ調べた結果、自分がとった寝台が進行方向左手を向いているのが分かった時、「日本海が見える。嬉しい。」と最初思った。しかし、実際に乗ってみて分かったのだが、夜で何も見えなかった。その代わり、進行方向右手から向かってくる、すれ違う列車に睡眠を邪魔されることなく眠ることができた。

窓の外から寒気が伝わる。気がついたら村上(3時21分)だった。外はうっすらと白い雪が暗闇に積もっているのが分かるだけである。停車していた列車が再び動き出すのを確認して、またウツラウツラする。次に目が醒めたのは酒田(5時8分)。駅の構内はこうこうと灯がついており、何人かの乗客が厚着をして列車から改札に向かっていくった。衝撃もなく列車は再び発車。線路が雪で埋まっているいるのをヌクい個室から見届け、もう1回ウツラウツラと舟をこいだ。

 

朝寝だか昼寝だか

目が醒める。

外は、雪交じりの風がピウピウ吹く厳しい天気。それなのにこちらは、暖房の効いた個室で、はだけた浴衣のだらしない格好でくつろいでいる。外の状況に関係なく、列車は目的地に向かってきちんと走っており、こちらはくつろぎ切ってそれに任せていられる。なるほど、これが「ブルートレイン」の良さか、としみじみ心地よく思った。

仁賀保到着(5時56分)。途中何回か目が醒めた割には、けだるさも残っておらず、ぐっすりと眠れたようだ。ここで浴衣から着替え、シーツ等を部屋の片隅にまとめる。足を伸ばして座っていたいため、寝台は完全にはバラさず、その片隅に備え付けのクッションをセットする。

寝台の解体が終わると、買い込んでおいた水を飲む。この「あけぼの」には、食堂車はおろか自販機もなく、車内販売も秋田を過ぎないと乗車してこない。したがって、寝台車で旅行に出る際には、あらかじめ十分な量の食料を用意しておく必要がある。

6時半、ここまで沈黙を守ってきた室内のスピーカが「秋田到着20分前」を大音量で告げる。秋田駅で列車を降り、先頭の機関車をチラと見てみる。ホームからかいま見える機関車の床下には、雪がこびりついていた。秋田駅では4分間の停車であり、売店で買い物をするのもちょっと慌ただしい。

また個室に戻り、上野出発時点で用意しておいた朝食を食べる。能代、大館、・・・と停まる駅ごとにわずかずつ乗客を降ろしていって、列車はさらに北へ向かう。関東の人間には信じられないことに子供の背丈ほど雪が積もっているにも関わらず列車は時刻どおりに走ってゆく。自分は?というと、あいかわらず姿勢を崩してそれをボンヤリ眺めていた。

 

目的の駅で列車を降り、改めて編成全体を見渡す。列車の最後部には、やはり雪がこびりついていた。

今まで封印してきた「ブルートレイン」・・・なんというか、子供でも分かる刺激的な「ブルートレインさいこー!」という感慨ではなく、シミジミと「ブルートレインっていいなぁ」と思えてくるる感じであった。

なんだかこのシミジミ感が「オトナの乗り物」といった感がしなくもない。

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このページに記載されている、列車の発着時刻・乗車券類の運賃は、2004年1月現在のものです。  

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2004.4.4更新
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