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旅行記その4:新幹線前夜のひとりたび(2002.11.30〜12.1)

あの日の青森駅

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ファンが詰めかける

午後8時過ぎ、盛岡からの特急「さよならはつかり」が、カメラとフラッシュの列に迎えられて青森駅の3番線に到着した。

直接新幹線が乗り入れて来ないここ青森駅でも、今日ここまで乗ってきた特急「さよならはつかり」のように、この日をもって廃止になる列車がいくつもある。これから1時間程度、そのような廃止される列車の「最終便」が次々とここ青森を出発する。K氏につきあい、それらを見送ることにした。ここまで同じ行程を乗ってきた乗客でも、そうする人が非常に多かった。

青森駅のホームに降りる。ホームは数多くの鉄道ファンでごった返していた。計算上では、この「さよならはつかり」だけでも500人近い人が乗っていたはずであり、それがみんなホームの端に集結して列車の写真を撮っているのだから、それはもう大変な騒ぎだった。

反対側のホームに停まっていた普通列車の客がみんな、「何事だ?」と首をひねってこちらを見ている。なんだかその視線が白く冷たく感じられた。

最終便が次々と

その向かい側。6番線には、やはり今日限りで廃止となる函館行きの快速「海峡」が停まっている。列車はホーム一杯の12両で停まっているが、車両自体は相当酷使されものであり、「ドラえもん海底列車」(映画とのタイアップ企画で、快速「海峡」の車両にドラえもんのイラストか描かれていた)のペイントが色褪せていた。

車内を覗いてみると、座席が取り払われフェリーの普通船室のようになったカーペット車では、寝そべって酒盛りを始めている人もいた。

「さよなら海峡」と描かれた横断幕が出ての記念撮影の後、定刻、青函トンネル専用の機関車に牽かれ、しずしずと出発していった。赤い尾灯が、いつまでも尾を引いて残っていた。

程なく、今度は函館からの快速「海峡」の最終便が到着してきた。乗客はあまりいなかった。

しかし、ホーム上ではお祭り騒ぎはまだ続く。

「ホームの端から下がって下さい」と繰り返される構内放送の中、小さなディーゼル機関車が入ってくる。車庫から駅までの小運転を専用の小さい機関車にやらせ、寝台特急「はくつる」が堂々と入線してくる。この、青森と上野を結ぶ「はくつる」も、新幹線開通のあおりを受けて、この日限りで廃止される。

目の前には、だいぶ傷んだ寝台つくりの客車と、少数の「はくつる」にゆかりありそうな鉄道ファンと、大勢の「はくつる」にあまりゆかりのなさそうな鉄道ファンとが乗客としているだけである。

このような日には、少数のマナーをわきまえない鉄道ファンが、線路に降りたりして周りの客や職員に迷惑をかけてしまうことがある。今日もそんなことが起こりやしないかと心配していた矢先、ホームの端の方では、人が次々と線路に降りてしまっている。しかし駅員や職員は闇雲に制止しない。その無線からは「それでは9時になりましたら立ち入りを規制して下さい」と聞こえてくる。それを確認して、自分もホームの端から線路に降りた。

「お祭り騒ぎ」のクライマックスであった。

そうして、いつの間にか自分も、頭で考えることなく次から次へとコンパクトカメラのシャッターを切っていた。このシーンの写真が多いのは、そのためである。

発車時間が迫ると、職員が「さよならはくつる」の横断幕を掲げ、最後の記念撮影に応じていた。そして定刻、発車ベルが鳴ってドアが閉まり、「はくつる」が上野へ向けて発車していった。

これでおしまいである。自分はこの「はくつる」は1回も利用したことはないので、大した感慨は湧かなかった。しかし、うまく言葉には出来ないけれど、何かを「見届けた」、これで安心して夜も眠れる、といった類の満足感はあった。

ところで、青森駅の駅員はさすがに疲れているようであった。自分のピンと来ないところで盛り上がっている現場で、何が面白いのか分からないまま仕事をするのは、相当しんどい氏ごとに思われた。横断幕の片方を持っていた女性職員とか、はたかから見ているだけで疲れ気味だったようだ。

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宴の後で

お祭り騒ぎが終わった後の青森駅は静まり返っていた。駅の構内にはわずかな乗客(まだ普通列車は残っている)と、やはりわずかな鉄道ファンのみ。

そして、すっかり寂しくなった5番ホームに機関車が入ってくる。その後ろには深緑色に黄色の細帯を締めた、瀟洒な客車が続いてくる。大阪と札幌を結ぶ「トワイライトエクスプレス」に間違いない。青森駅では乗客は乗せないが、機関車交換の都合で青森駅に入ってくるのである。

この「トワイライトエクスプレス」は、日本でも一・二を争う豪華寝台特急。大きな窓越しに見える濃色の車内と暗めの照明が、とっても優雅に見える。これまで私は実車を見たことがなかったのであまり考えたことはなかったが、この時初めて、「こういう優雅な列車に乗ってみたい!」と、思った。

発車ベルも鳴らずに発車。最後に、ここから大阪までの1000kmをたった1両で引っ張る電気機関車を見届け、青森駅を後にする。

その後、冬の寒風吹く市内で酒を飲んだ。おいしかった。

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エピローグ:一気に東京へ

特急「スーパー白鳥」

朝の青森駅。ホームでは新しい特急列車の登場を祝うセレモニーが行われていた。その横に昨日限りで廃止された上野−青森間を結ぶ寝台特急「はくつる」の最終列車が入ってくる。

8時40分頃、新し特急「スーパー白鳥」八戸行きが入ってくる。すぐに発車時間となり、8時58分八戸へ向けて出発。速い速い。途中、野辺地・三沢等の従来停まっていた駅も全て飛ばしてゆく。わずか1時間で八戸に到着。

新幹線「はやて」

新幹線に乗る人、待つ人。八戸駅は混んでいた。改札を通って地上ホームに降りると、もう既に「はやて」が待っている。

今回の東京行き新幹線が発車する反対側のホームには、ちょうど東京からの一番列車が到着する。ホームには、歓迎の太鼓、報道関係者、その他見物に来た市民が多数詰め寄せていた。降りてきた乗客、東京行きに乗る乗客もあわせて、ホームは大賑わいであった。

10時8分、八戸駅11番線から「はやて10号」が発車。第三セクターに移管された、くたびれた在来線を振り切り

、東京の方角だけを目指し、一直線にトンネルに入っていった。

もう、速い速い。何が何だか訳が分からなくなるくらい速い。盛岡−八戸間のほとんどはトンネルであるが、トンネルとトンネルの間の一瞬だけ、地上に出る。その一部には駅(二戸・いわて沼宮内)もあるが、この「はやて10号」はあっという間に通過。

96kmをわずか30分足らずで走り抜き、あれよあれよという間に盛岡に到着。

そのまま乗り続け、東京に到着したのが午後1時8分。青森−東京間は4時間9分、八戸−東京間は3時間しかかからなかった。

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更新日 2003.12.07
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