本文へスキップ

Art of the treble〜sounds’Library (JAPAN)

サン=ピエール=オ=リアン・ドゥ・ビュール聖歌隊MAITRISE SAINT-PIERRE AUX LIENS DE BULLE

サン=ピエール=オ=リアン・ドゥ・ビュール聖歌隊は,周囲をぐるりとフランス領に取り囲まれたスイス南西部の都市,ジュネーブのシンボル,サン=ピエール寺院に所属する聖歌隊です。スイスには4つの公用語がありますが,ジュネーブは地理的にフランス語圏に位置するため,聖歌隊の音色も当然フランス的な柔らかなものです。(by Rise)1999up

CD 

1972
  レクイエム 作品48(ガブリエル・フォーレ)/サン=ピエール=オ=リアン・ドゥ・ビュール聖歌隊 WPCS-4527 1972年録音

1. イントロイトゥスとキリエ(入祭唱とキリエ),
2. オッフェルトリウム(奉献歌),
3. サンクトゥス,
4. ピエ・イエズス,
5. アニュス・デイ,
6. リベラ・メ,
7. イン・パラディズム(天国にて)

伴奏:ベルン交響楽団

フォーレのレクイエムは、爆発的なフォルテがないことや,フォーレの考える死や天国に対する清らかなイメージを強調するため,しばしば高音部に児童声を使って歌われています。この曲の海外団体による録音は,今まで英国の聖歌隊のものしか聴いたことがなかったので,アルトはすべてカウンターテナーの受け持ちでした。が,このCDにより,初めてボーイアルトが加わった全曲を聴くことが出来ました。特に,アルトとテノールの交唱が美しい,2. オッフェルトリウム(奉献歌)では,深さと柔ら味のあるボーイアルトの音色を存分に楽しめます。
 この聖歌隊はフランス語圏に所属するので,当然ラテン系の柔らかな音色を持っています。際立った華やかさはありませんが,そよ風のような心地良さで耳をくすぐられます。その声には空気に溶け入るような透明感がありますが,天に突き通るようなタイプのものではなく,たとえるなら,森の奥にたたずむ,深い蒼の湖のような透明度です。そして,高音域に入ったり,ややフォルテがかかると,湖に光が差し込んで,パーっと底までが透けて別世界が照らし出されるかのような変化を見せます。この聖歌隊のレクイエムは,私が今まで聴いた中でも,とりわけテンポをゆっくりとっていて,またオーケストラの伴奏が良く聞こえるのが特徴的です。オーケストラはちょっとうるさすぎるかなとも思いますが,この曲は,合唱に呼応するように流れる伴奏のメロディーの美しさも絶品なので,その素晴らしさを強調しているという点では効果的です。
 以前,合唱はおろかクラシック音楽にもまったく興味のないという知人と一緒に,どういう訳かフォーレのレクイエムの演奏会に出向く機会があったのですが,演奏の直後に知人言わく,「自分のお葬式にはこれをBGMにしたい!」とのこと。他のレクイエムのような,死の暗さや苦しみの表現を抑え,天国での安らぎや至福を強調して書かれているこの曲独特の美しさが,演奏会での退屈を予想していた知人のハートを捉えたようでした。ですから,宗教曲が苦手な方にも特におすすめします。(by Rise)1999up 
CD 

1969
  CHANTONS NOEL LET'S SING OF CHRISTMAS/ MAITRISE SAINT-PIERRE AUX LIENS DE BULLE LC 0200 1969年録音

1. CLOCHES ET CARILONS,
2. LES ANGES DANS NOS CAMPAGNES,
3. ENTRE LE BEUFE ET L' ANE GRIS,
4. PUER NATUS EST,
5. NOEL NOEL,
6. JEANETON DU VIEUX TESTA MENT,
7. DORS, MON ENFANT,
8. MON JESUS, DOUX JESUS,
9. PETIT JESUS EST NE,
10. PE VE LA MINE,
11. IL EST NE LE DIVIN ENFANT,
12. LA NUIT DE NOEL,
13. DORS MA COLOMBE,
14. DANS UNE ETABLE OBSCURE,
15. MUSETTE,
16. ADESTE FIDELES

フランス語のキャロルが存分に楽しめる1枚。サン・ピエールの演奏はキャロルにしても本当に春風のように優しい。彼らの本拠地にたたずむレマン湖(行ったことはないのだが)の水面を渡る風にそっと息を吹きかけられるような,そんな心地良さったらない。フランス系の優しく清らかな音色にほっぺたは緩みっぱなしになる。芸術性で圧倒するような表現はなく,良い意味で古き良き時代の聖歌隊の域を決して超えない。どこまでも透明でありながら常に聴衆の近くにいる温かみに溢れている。5.「NOEL NOEL」の,鐘の音系の愛らしいソロの他,アルトも含め何人かのソロが楽しめる。ソリストはそれぞれ個性があるが,どれもソフトなのが共通点だ。くせや無理な力みがなく極自然な発声のためとても感じが良い。8.「MON JESUS, DOUX JESUS」は,パリ木が良く歌うちょっぴりおどけた感じがする楽しいチェコのキャロル。パリ木はチェコ語で歌っているがここではフランス語により愛くるしい雰囲気で歌われている。15.「MUSETTE」も大抵ドイツ語で歌われるが(ドイツ語題:ES IST EIN ROS ENTSPRUNGEN),フランス語版があることをこのCDで初めて知った。フランス語の歌詞に置き換えるめ,音符が一音多かったりするところに新鮮さを感じる。どの曲もフランス語の母音の滑らかさ,フランス音楽独特のメロディーの美しさが魅力的だ。 (by Rise)1999up 

sounds’Library
 sounds.library@gmail.com

(お返事は出来ないと思います)