Yuto's Diary 8月後半

一番上が新しい書き込みです。

下線の引かれている単語には説明があります〜。



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8月31日(金)
 ここのところなんだかんだと忙しくて、オアシスに行ってるヒマがなかった。
 明日は行きたい。

8月29日(水)
 オアシスに行ったら、久しぶりに大気さんがいなかった。
 仕方なく(って言ったら失礼だな)マスターとこの街のことについて話した。
 前に大気さんが教えてくれた通り、この街はミツルやレイジさんたちによって守られてるって言っても過言じゃないらしい。俺は早めに来て早い時間に帰るからあまり遭遇したことないけど、暴れる酔っ払いとか店同士の争いなんてのもミツルたちがなんとかするらしい。
「ここはあまり警察なんかも来たがらないし、来たとしても投げやりな態度でしか接してくれない人が多いからね。ミツルやレイジにしてみれば、自分達でなんとかしたほうが解決も早いし安全だってことなんだと思うよ」
 彼らにはこの街の絶対的な信頼が寄せられてるんだなってことが、マスターのその言葉でわかった気がした。

 俺と同じ歳なのにミツルがなんであんなに落ち着いてるのか……知りたくなった。きっと、過去に何かあったんじゃないかって思って。
 でもそれはマスターからじゃなくてミツル本人から聞くべきだと思ったから、聞きたいのを我慢して帰ってきた。
 大気さんのことも、ミツルやレイジさんたちのことも、もっと知りたい。
 俺ももっとオアシスに近づきたい。

8月26日(日)
 ミツルに電話する(このあいだちゃんと番号を聞いた)。確認したいことがあったから。
『俺、昨日大気さんに抱きついたりしなかったか?』って。
 今日になってからなんとなーく思い出してしまったんだ。昨日の日記には「抱きついた」としか書いてなかったけど、俺……大気さんにキスしてくれとか言ったような気がして。
 でも『キスしてなかったか?』なんて直接聞けなくて、遠回しに聞いていこうとしたら、
『ああ、抱きついてたね。ついでにキスもせがんでた』
 なんて笑いながら言われてしまった!!
『そ、それで!? ホントにキスしたのか、俺!?』
 ってものすごいデカい声で聞いたら、
『知らな〜い。大気に聞けば?』
 なんて言われて。
 俺が聞けるわけないのわかってて、あんなふうに言ったんだ、あいつ。
 見てろよ、絶対聞いてみせるから!!

 オアシスに行ってきた。
 思った通り、ミツルはいつもの席にいて、俺が大気さんに昨日のことを聞くかどうかニヤニヤしながら見てた。
 だから俺は半分ヤケくそで聞いてしまった。
「俺、昨日大気さんに抱きついたりしちゃいましたか?」って。さすがに「キスしましたか?」とは聞けないよ、好きな人に。
 大気さんはいつものように笑いながら
「うん。ユウト君は酔っぱらうと可愛くなっちゃうんだね」
 なんて、すっげー恥ずかしいことを言ってくれた。
 可愛いなんて、他の奴に言われたって全然嬉しくもなんともないけど、大気さんに言われてちょっと(かなり)嬉しかった。

 キスしたかは、聞けなかった。やっぱりね。

8月25日(土)
 待ちに待った検査結果が来た!
 結果は……シロ。陰性だった!!!!
 見た瞬間号泣してた。隣に住んでる奴には聞こえただろうな、泣いてる声が。でもそんなの気にしてられなかった。それくらい嬉しかった。
 ホントによかった。エイズになってなくてよかった。神様ありがとう!

 オアシスに行って、みんなに検査結果を見せた。
 俺が泣きはらした目で店に入っていったから、陽性だったと思ったらしいみんなは、結果が書かれた紙を見てようやく喜んでくれた。
 マスターがミツルたちと連絡をとってくれたらしくて、すぐにミツルやレイジさんもオアシスに来て俺の『完全快気祝い』をしてくれた。このあいだの『快気祝い』とは違って、素直に喜べて楽しかった。
 オアシスが閉店したあと、ミツルやレイジさんたちと近くの居酒屋へ行った。マスターと大気さんも一緒に。
 酔っぱらってまたべそべそ泣いてた俺を、大気さんはずっと隣に座って介抱してくれた。
 あまり記憶にないんだけど、勢いあまって大気さんに抱きついたりしたような……。

 気のせいってことにしておこう。
 今日はとにかく嬉しい1日だった。

8月24日(金)
 一週間経った。のに、検査の結果が届かない。
 焦って思わず大気さんに電話していた。大気さんのところには結果が届いてるかもしれないと思ったから。
 だけど大気さんのところにもまだ届いていないらしい。
「明日あたり届くよ」
 って言われてようやく落ち着いた。かなり神経過敏になってる気がする、俺。
「オアシスにおいで」
 って大気さんが誘ってくれたけど、とてもそんな気分にはなれなくて「今日は家でおとなしくしてます」と答えてた。

 検査結果、早く来い!


 さっき、突然大気さんが来た!!!!
「差し入れ持ってきたよ」って言って、まだあったかい袋を持ってきてくれた。
 開けてみると、そこに入ってたのは俺が大好きな大気さんの作ったピラフだった。
 サラダとわかめスープまで一緒に作って持ってきてくれて、感動して泣きそうになりながら食った。
 帰るとき、
「きっと大丈夫だよ」
 って俺の頭をぽんぽんと叩いてくれた(大気さんのほうが俺より少し背が高い)。
 その言葉を信じて、今日はゆっくり寝よう。

 大気さん、ありがとう。

8月22日(水)
 大気さんから電話があって、「もしヒマなら映画でも観に行かない?」って誘われた!!
 今日はバイトもなかったし、オアシスに行こうかなと思ってたから、大喜びで「行きます!」と答えてた。
 大気さん、もしかしたら俺がまだ落ち込んでるって気遣ってくれたのかもしれない。
 映画を見たあと大気さんオススメのイタリアレストランに行って、すごくうまいパスタとピザを食った。そのあとに落ち着いたカクテルバーみたいなところにも連れて行ってくれた。
 時間が遅くなってしまってオアシスには寄れなかったけど、十分充実した時間を過ごせた。

 別れ際、大気さんとすっごくキスしたかったけど(酔ってたんだろうな)もちろんできるわけもなく。
 「じゃあまたね」と軽く手を振って、駅へ歩いていく大気さんの背中をずっと見てることしかできなかった。

 早くエイズ検査の結果が出てほしい。大気さんに、あんなに気をつかわせたくない。
 だけど検査の結果が悪かったら……みんな(大気さんも)俺から離れていくんだろうか。

 それは嫌だ。

8月20日(月)
 学校にもバイト先にも復帰。店長が笑顔で俺のことを迎えてくれたのが嬉しかった。
 復帰祝いにと飲みに誘ってくれたけど、エイズ検査の結果が出るまではオアシス以外の場所では飲まないと決めたから、丁重に断らせてもらった。
 オアシスに行きたかったけど、昨日少し飲み過ぎてしまったから今日はやめておいた。
 大気さんには会いたかったけどさ。

8月19日(日)
 久しぶりのオアシス。妙にそわそわしながら行ったら、道でオヤジに声をかけられてしまった。初めてあの街に行ったと思われたらしい。俺と同じくらいそわそわしてるオヤジがちょっと笑えた。
 丁重にお断りして、少し気が紛れたところでオアシスへ行った。行く前に大気さんの携帯に電話して「今日オアシスに行きます」って言っておいたからかもしれないけど、店は常連さんでいっぱいで、みんなで俺の快気祝いをしてくれた。
 本当はエイズ検査の結果が出てないからまだ全快ってわけじゃないんだけど、みんなの気持ちがすごく伝わってきて、嬉しくてまた泣いてしまった。恥ずかしい奴。
 店が終わるまで残ってたら、大気さんが途中まで一緒に帰ろうと誘ってくれて、駅までだったけど一緒に歩けた。それまで大気さんと落ち着いて話せなかったから(ミツルやレイジさんたちがそばにいて離れてくれなかったから)、2人だけで話せてすごく嬉しかった。
 そのときに例の男(大気さんのことを呼び捨てにしてたあいつ!)の話になって、あいつは大気さんの大学の知り合いだって言われた。急ぎで出さないといけないレポートがあって、それを共同でやってるんだって。
 どれくらい仲がいいとか、そういうことは何も言わなかったけど、──だけどもう気にしないことにした。これからは、あいつのことは気にしない。気にしない。
 どっちにしたって、俺が大気さんを好きな気持ちは変わらないし……大気さんに彼女か彼氏がいても諦められないってわかってるから。
 それくらい、大気さんが好きなんだ。

 ここまで本気で人を好きになるのは初めてだ。
 いつか告白できたらいいな。……しばらくは無理っぽいけどさ。

 今日はふわふわした幸せな気分で寝れそうだ。

8月18日(土)
 昨日1日でだいぶ体力も気力も回復したみたいだ。全部大気さんのおかげだと思う。
 本当はオアシスに行って、みんなに「ありがとう」って言いたかったけど、またあいつらに会ったらどうしようかと思って行かれなかった。
 そうしたら、さっき突然大気さんが家に来て、びっくりする(というより、ちょっと怖い)話をしていった。

 ミツルやレイジさんたちが、俺をレイプしたあのマッチョマンたちを探し出して、フクロ(袋叩き)にして二度とあの街に来れないようにしてしまったというのだ!!
 大気さんは、
「彼等はあの街の歩く法律みたいなものでね。曲がったことや理不尽な経営をしてる奴らとかがいたら徹底的にこらしめて、二度とあの街に足を踏み入れられなくするんだ」
 って、かるーく言ってたけど……そういうのって、アリなんだろうか。
 俺は一瞬疑問に思ってしまったけど、
「あの街があれだけ平和なのも、彼等のおかげって言えるんだよ」
 という大気さんの言葉には、確かにそうかもなと頷いた。
 しょせん警察とかは俺らのことを理解しようとも救ってくれようともしないから(中には差別なく接してくれる人もいるんだろうけど、やっぱりホモってだけで特異な目で見られることが多いだろうし)、ああいう場所にはそこをまとめる人たちってのがいないと大変なことになるんだろうから。
 ミツルたちだったらそれくらいの権力持ってそうだもんな。
「だから安心して来てね」って大気さんに笑顔で言われたから、明日は絶対オアシスに行く!

8月17日(金)
 大気さんが俺の家まで迎えに来てくれて、2人でエイズ検査に行った。
 大気さんは俺が1人で心細がってるのをよくわかっててくれて、なんと検査まで一緒に受けてくれた。
 検査のあいだじゅう震えが止まらなくて、ずっと飯を食ってなかったせいもあってふらふらしてた俺を、大気さんはずっと「大丈夫だよ」って勇気づけて支えていてくれた。
 気が緩めば泣いてしまいそうで、俺は頷くことしかできなかった。
 検査の結果は1週間後くらいに出るらしい。長すぎる……。

 大気さんは俺を家まで送ってくれて、もう何日も無断欠勤してるバイト先に連絡までしてくれた。
『体調を崩してしまった』と言った大気さんの言葉を信じてくれたらしい店長は「よくなったら出てきてくれよ」って言ってくれたらしい。辞めさせられても当然なのに。やっぱりあの人もすごく優しい。

 大気さんがおかゆを作ってくれて、ホントは何も食べたくなかったけど大気さんの気持ちが嬉しくて無理して食べた。そのあと急激に眠気が襲ってきて、「眠っていいよ。そばにいるから」って大気さんの言葉に甘えて寝てしまった。すごく久しぶりに、悪夢も見ずに安心して寝れた。

 起きたとき大気さんは俺の布団の横に座っていて、それがなんだか嬉しくて、また泣きそうになる。涙腺壊れまくりだ。
「家から電話があったよ。ユウト君、よく寝てたから僕が出ちゃった」と言われてぎょっとしたけど、大気さんは、自分はバイト先の先輩で、ユウト君が体調を崩して寝てるって聞いて見舞いついでに看病してるって言ったらしい。おふくろに何度も謝られたって言われてちょっと恥ずかしかったけど、心配かけるようなことを言わないでくれた大気さんにまた感謝する。

 まだ、書きたいことはたくさんあるけど、大気さんのおかげで今ならまた寝れそうだから寝る。

8月16日(木)
 大気さんから電話がくる。我慢できなくて出てしまった。
「大丈夫?」って聞かれて、その声が全然変わってなくて、俺はまた泣いてしまった。あんなに大気さんのこと邪険にしてたのに、どうしてこの人はこんなに優しいんだろう。
 正直に「エイズ検査に行くのが怖い」って言ったら、「僕が一緒に行ってあげるよ」って言ってくれた。そこまで甘えていいわけないのに、俺は「お願いします」って言ってた。
 家まで迎えに来てくれるという大気さんの好意を素直に受けることにした。
 早く大気さんに会いたい。1人だと嫌なことをいろいろ考えてしまう。


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