今井のお父さんが弁護士をしてるって、今日初めて知った。
中学の時に今井と1番仲のよかった朝倉に電話した。朝倉は今井の家のこと、俺よりずっと知ってるみたいだったし(ちょっと悔しいけど)。
その朝倉の話によると、今井のお母さんは今井を生んですぐに亡くなってしまったらしい。
お父さんも仕事の都合でほとんど家に帰ってこなくて、今井は子供の頃から1人で家にいることが多かったみたいだ。おじいちゃんの家に行くこともほとんどなかったとか。
弁護士は弁護士でも、今井のお父さんは偉い人(議員とか会社社長とか)の弁護を専門にしてるらしくて、そのせいもあってか普通の弁護士よりもずっと忙しいって。
だけど、1人で寂しいだろうに、今井は自分の家に人を上げることはあまりなかったらしい。
朝倉も、今井の家に物を借りに行ったことはあっても、家の中に入れてもらったことはないって言ってた。
……じゃあ、何度か今井の家に入ってる俺は、ちょっとは特別な存在とか……?
いやいや、夢を見るのはやめよう。
でも、自分の幼い子供が1人で家で待ってるってわかってるんだから、なんとかしようって考えてもよさそうなのに──今井のお父さんは何も考えなかったんだろうか。今井と一緒に過ごす時間をとるとか、できなかったんだろうか? なんて考える俺は甘いんだろうか。 |