Takara's Diary…6月後半

←6月前半 7月前半→
一番下が新しい書き込みです。上から順に読んでください。


6月16日（月）
佐野先輩の誤解を解くために、わざわざ昼休みに先輩を探してしまった。
先輩は結城先輩と一緒で（確かクラス違うはずだけど……やっぱり片時も離れたくないんだろうか……って、何考えてるんだ俺）。
結局３人で、人気のないところで一緒にメシを食うことになった。
「何か話があるの？」
妙に楽しそうな佐野先輩の声に、俺は焦って結城先輩を見たんだけど……どうやら佐野先輩からいろいろと間違った話を聞かされているらしい先輩も、『どうなんだ？』みたいな目で俺を見てて。
「先輩たち誤解してるかなと思って……あの、昨日のあいつは、別にそういうんじゃなくて……」
かなり言い訳がましいことを口走った俺に、なんと結城先輩が、
「だけどお前はあいつが好きなんだろ？」
なんて言ってきて！（どうやら結城先輩は、自分たちの関係が俺にバレてるって佐野先輩から聞いたみたいだ）
２人の視線から逃げられなくて、俺は正直に「……はい」って頷いてしまった。あああ……俺って……。
でも２人は別に俺のことをバカにしなかった。
「なんだよ、まだ片思いなのか？　お前って意外に小心者なんだな。お前だったら男でも女でもOKするだろ」
佐野先輩はそんなムチャなことを言ったけど、
「とにかく頑張れよ。俺たちだったらお前も気軽に相談できるだろ」
って言ってくれて。
今井のことを根掘り葉掘り聞かれてかなり恥ずかしかったけど、自分の好きな相手の話をできて嬉しかった。
頼もしい相談相手ができて、本当によかった。

それにしても佐野先輩って、けっこう男前な性格してるんだな。もしかして結城先輩、佐野先輩にしっかり手綱引かれちゃってるんじゃ……。
▲





6月17日（火）
しつこい男は（男にも）嫌われる……よな？

毎日でも今井に電話したくてたまらない。
正直いうと、電話じゃなくて毎日会って話がしたいんだけど。
こんなのは初めてだ。今まで好きになった奴（付き合った奴）には全然そんなことをしたいなんて思わなかったのに。
それくらい、俺があいつを好きだってことなんだろうか？

くっそー、自分の気持ちを自覚してからすっげー苦しいぞ!!
▲






6月18日（水）
男と女の友情は成立しないものなんだろうか。

１年のときから同じクラスで、すっげー仲の良かった小宮山から突然告白された。
あいつ、いつもの調子で話を聞こうとした俺がマヌケに見えるくらい真剣な顔をしてて（あいつのあんな表情、俺は見たことなかったかもしれない）。

「ずっと好きだったの」
……の、『ずっと』っていつからなんだろう。
男とか女とか関係なくふざけあってたときも、恋愛感情を隠してたってことなのか。
……今の俺には男とか女とか関係なくなっちまってるのかもしれないけどさ。

俺は今井のことが好きだし、中途半端な気持ちで付き合うなんてできないからもちろん断ったけど。……これからは前みたいにふざけあうこととかできなくなるのかな。それは少し寂しい気がする。
▲






6月20日（金）
週末のたびに今井に会いたくてたまらなくなる。
今日も電話してみようかと思ったけど、毎週じゃあいつもウザく感じるかも……と思ってやめてみた。
あああ、会いたいのに〜〜。

酒とかクスリとか、ちゃんと止めてるだろうな。
今はそれが一番気になる。
▲






6月21日（土）
午前中は部活、午後は塾で１日が終わった。
「今から大学受験を視野に入れていかないと間に合わなくなるぞ！」
とかなんとか言われて、来年は受験生なんだと改めて確認させられて気が重くなった。
今はそれ以上に気になることがあるってのに……。

今井は塾に行っていないのに、きっと今も頭がいいんだろう。中学のときもテストのときは常に上位だったし。
──あ。
『勉強教えてくれ』って連絡するんだったら自然かもしれない！！
▲






6月22日（日）
今井に電話する。
朝のうちに続けて２回かけたけど出てもらえなくて、昼過ぎにもう１度だけと思ってかけたらやっと出てもらえた。
今井は出たときからだるそうな声をしてたけど、俺が
「これから図書館に行って一緒に勉強しないか？」
って誘ったら、
「…………ごめん。今日はちょっと…………」
って断られてしまった。
かなりショックを受けたけど、
「そうか。じゃ、またの機会になっ」
とかなんとか言って（よく覚えてないけど）電話を切った。
そうだよな、今井にも約束とかあるだろうし、こんな頻繁に誘うのって迷惑だよな。

…………………………。
わかってるけど、悲しい〜〜〜〜！
▲






6月23日（月）
昨日のショックから立ち直れずにローテンションで登校（我ながらバカみたいだけど）。
俺が珍しく塞ぎこんでたせいか、周りが「今日は雨が降るんじゃないか」としきりに騒ぎ立ててた。ったく、そんなに俺はいつもはしゃぎまくってるのかって感じだ（……そうかもしれないけど）。
そうしたら、午後から急に天気が悪くなってきて、ホントに雨なんか降りやがった！！
「おい〜〜、橋本のせいだぞ」
とかなんとか言われたけど、俺のせいじゃねぇよ!!!!

ていうか、泣きたいくらいヘコんでるよ、俺……。
▲






6月25日（水）
最近今井のことばっかり考えててうつうつとしてたせいか、バスケも不調になってる気がする。今日なんか、今までだったら絶対しないようなパスミスとかシュートミスとかディフェンスミスとかしちゃったし……。
俺の調子があんまりにも悪いからか、足立が
「色ボケもいいかんげんにしとかないとレギュラー落ちするぞ」
って、かなりきつい口調で言ってきた。その通りだと思って反論もできなかった。
あいつ、俺のせいで部長にさせられたこと根に持ってるからなぁ……これからもきっと俺に対しては人当たりがきついかもしれないな。

ていうか、もっと部活のこともしっかりやらないとな。もちろん勉強も。
……でも、今井のことも気になって仕方ないんだけどさ。
▲






6月27日（金）
突然今井から電話がくる！
「この間、図書館に行こうって誘ってくれただろ？　……あれ、今度の日曜はどうかと思って」
先週の誘いの埋め合わせ（とはちょっと違うか）の電話だったんだ！
もちろん俺の方に断る理由なんてなくて、
「いいよ、行こうっ！」
なんて、かなり鼻息荒くして言ってしまった。今井に気づかれたかな？（そうだったらマズイよな……）

苦し紛れでも何でも誘ってよかった！　日曜がすっげー楽しみだ!!!!
▲






6月29日（日）
今井と図書館で勉強してきた。なんだかすげー充実した日になった。

どんな服装で行けばいいか迷ったけど、いかにも『おしゃれしてきました！』みたいな格好を選んだらそれだけで今井に俺の本心を知られてしまいそうで怖くて、結局普段着にした。
待ち合わせ場所で待ってると、今井は時間通りに待ち合わせ場所に来てくれた。
Tシャツかカットソーみたいなのに薄手のジャケットを羽織って、下は白のスラックスで、その格好がすっごい可愛く見えて、思わず鼻に手を当てていた、……鼻血、出てなくてよかった。

ファーストフードで軽く昼食を食べて（今井はポテトとドリンクしか頼まなかった。『さっき起きたばっかりで食べられそうにないから』って言ってたけど、少なすぎるよな）、それから図書館に向かった。久しぶりに入ったから独特の空気に気後れしそうだったけど、今井が一緒だったから平常心を保てた。
ちょっと奥まった席に並んで座って、お互いに勉強を教え合うなんて珍しい体験をしてしまった。今井は現代文と古文と英語を俺に、俺は物理と生物を今井に。ていうか俺は大したことは教えられなかったけど、今井はいろんなことをわかりやすく教えてくれた。これで次のテストはばっちり！（……にしたい）

勉強してるとき、
「今井、ここってさ──」
って俺が話しかけると、
「なに？」
机に向かっていた今井がふっと顔を上げて、俺の手元に顔を近づけてきて。
キレイな顔がすっごく近くにあって、緊張しまくりの俺がしどろもどろに
「あ、あの、ここなんだけど……」
って聞くと、
「ああ、ここはね──」
小さく笑いながら教えてくれる今井の顔に、何度キスしたくなったか…………ああ、俺どんどんダメになってる！！

勉強を終えて、さっぱりしたものが食べたいっていう今井に合わせてそば屋で夕飯を食べて、今井を家まで送ってから俺も家に帰ってきた。
家に入った瞬間空気が抜けたみたいにふにゃけちゃって、玄関にへたりこんでたら上の妹に
「どうしたの？　お兄ちゃん。デート失敗だったの？」
とかなんとか生意気なことを言われた。
「もちろん成功したさ！」
って言い捨てて部屋に上がったら、あいつ、
「お兄ちゃん、デート失敗したからカリカリしてるよ。かまわないほうがいいかも〜」
なんておふくろたちに言ってやがった！
くそ、デートは成功したよ！　つか、デートだと思ってるのは俺だけだっつーの!!

……でも、今日は本当に楽しかった。またああして勉強できたらいいなぁ。
▲





読み終わったらブラウザを閉じてください